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見出された運命の先に  作者: イミティ
第3章 迷宮国家ヴァルンバ
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第26話

 今回短めですまぬです!




 「───ヤ、トウヤ」


 どうやら幾らか放心してしまっていたらしい。ルリが何度も俺を呼びかけてきたので俺は意識を取り戻し、しかし直ぐに視線を戻す。


 もしかしたら俺達と同じ日本人かもしれない───これは俺にとっては大きな情報だ。

 同郷の仲間が居る。それが心強いとかそういう意味ではなく……もっと、()()()()()()で。


 「……日本人、って……トウヤの、元の世界、の?」

 

 先の俺の呟きを拾ったルリの質問に、一度冷静さを取り戻して静かに頷きを返す。


 「……あぁ、俺の、俺達が元いた世界の人間だ。見ての通り、勇者はこの世界の人間とは少し顔の系統が違うだろ?」

 「……でも、黒髪じゃ、ない……」

 「確かにそこは気になる。けど、魔法や魔道具(マジックアイテム)を使えば髪の色ぐらいなら変えることも出来なくはないんじゃないか?」


 ざっと思い浮かべて、その場合は光属性の魔法が該当するだろう。光という存在の法則はこの世界でも地球でもそう変わることは無いはずだから、対象とする部分の光の反射率を変化させることが出来れば、色を任意のものに変化させることも可能なはずだ。


 しかし、常時そんな魔法を使っているのは普通に考えて無理だ。少なくとも俺には無理だろう。

 彼らが超一流の魔法使いならば有り得なくは無いかもしれないが、現実的な部分で言うなら常に携帯できる魔道具の線が濃厚だろうか。


 黒髪黒目はこの世界では目立つ。そう考えて髪色を変えたということなら理由としても説明がつくし、魔道具についても俺と同じように国から提供を受けたのならば有り得る。


 「本当なら[鑑定]で確認をしたいが……それをするには少し遠いな」

 「……話、かけない?」

 「そうしたいのも山々なんだが……」


 俺だって本当であれば、彼らの戦闘が終わり次第話をしたい。俺が日本人であることを明かし、彼らの状況を詳細に聞き、それを拓磨達と共有したいのだ。

 しかしながら、そうは出来ない事情がある。クリス、ひいてはルサイア神聖国側としては俺が勇者であることを他人に知られて欲しくはないようだし、そのクリスには外出を認めてもらった恩がある。


 それに、俺は国と国の関係について把握をしている訳では無い。このヴァルンバとルサイア神聖国がどういった関係なのかは知らないし、下手に行動してクリスの迷惑になりたくは無い。


 一応ルリが居るので、兄妹であるということを強調しこの世界の人間だと主張すれば、誤魔化せるかもしれない。

 先程は断言に近い形では言ったが、この世界に日系人系統の顔の人が居ないという可能性はない訳では無いので、そういった部分でももしかしたら信憑性を出してくれるだろう。


 だが……誤魔化せない可能性もある。

 黒髪黒目がこの世界では珍しいからこそルリと兄妹という話がある程度通じるが、日本人にとっては珍しくもない。


 俺とルリが兄妹と言うにはあまり似ていないというのは見ればわかるし、何より俺が向こう側なら、そんな誤魔化しをしようとしている相手には探りを入れるだろう。


 「万が一を考えるとやめといた方がいいと思う」

 「……トウヤの、好きに、すればいい、のに……」

 「クリスには迷惑をかけられないからな」

 「…………トウヤは、クリスの、こと……好き、なの?」


 どうやら俺が自分の考えよりもクリスの考えを優先したことが、誤解を与えてしまったらしい。少し不機嫌になったルリは、俺の袖をギュッと握る。


 その分かりやすい嫉妬に似た感情に、俺は思わず苦笑いを零してしまった。

 さっきまで驚愕していたのに、それがスっと抜けたような感覚。

 

 そうだな、クリスのことは人間として好んでいるのは確かだ。いや、歳下の子を相手にそんな言い方はあんまりなので、柔らかく言えば……確かに好きだ。


 『嫌いではない』という消極的な表現ではなく、『好きである』という積極的な言葉。しかしそれは、当然ルリが心配しているような意味を含んでなどいない。


 「そういう訳じゃない」

 「……ホント?」

 

 上目遣いで聞いてくるルリの目を見返しながら、本当だと頷く。


 クリスは確かに高校生である俺から見ても同年代以上に聡明なため、何となく年齢を多少引き上げて見てしまう面があるが、それでもまだ容姿やふとした瞬間の表情などは幼い。

 その時点で疑わないで欲しいものなのだが……ルリ自身が幼い容姿であることを考慮すると、そうも言えないだろう。


 そもそも最初にその前提を崩してしまったのは俺であるので、何も言えない。

 そういうことも口にはしないでおく。

 

 それよりも、とにかく現時点での彼らとの接触は避けるべきと判断した。


 「あの分だと迷宮は初めてという感じでもない。オークとも戦い慣れてるし、何度か来てるんだろう。確信がある訳じゃないが、また会える可能性は十分あるからな……だから今日は大人しく引き返す」

 「……トウヤが、そう言う、なら」


 俺がそう言えば、ルリ自身はどちらでも良かったはずなのに、どこか渋々といった様子を見せて了承する。

 クリスのことに関して完全に納得した様子ではないが、一先ずは飲み込んでくれた様子。


 俺が誰を好意的に見るかという部分がルリに結構重要視されているようだが、それは俺に対し近い距離感での感情を持ってくれているからなのだろう。


 例えば、俺もルリが誰かのことを好きになったりしたら、多少は嫉妬するかもしれないし、気にもする。

 つまるところ、それは今、俺達が非常に近い距離で過ごしているからで。


 「取り敢えずは、戻るぞ」


 その誤解を忘れさせるという意味も込めて、俺はルリのその小さい手を握って、引く。

 俺としてはもう慣れたが、ルリはそれで機嫌を直してくれたようだ。むすっとした顔は普段の大人しい表情に戻っていて、そこに微かに赤みが差している。


 嬉しいのか、恥ずかしいのか、照れているのか。恐らくは全部なのだろうその感情が視えてきたので、良かったと安心して来た道を引き返していく。


 あの日本人らしき三人に関しては、取り敢えず一度クリスに話をして、それからにしよう。こうして普通に迷宮の中に居るということは、この国としてもそこまで完全に隠蔽しようとしている訳では無い様子。

 その手の技術は地球で学ぶことなどなかったが、完全に隠蔽しようとしている訳では無いなら、探りを入れるぐらい俺にもできるだろう。


 個人的にルリは某空白さんの妹の方な感じの声で脳内再生してます。多分これが一番具体的な声の詳細の説明だと思います。


 はい、今回短めで申し訳なかったのですが、中々次と繋げられなくて……それに加えて明日と明後日の土日は用事が入っておりますので、もしかしたらいつも通りの投稿とはいかないかもしれないです。


 

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