★第22話
お待ったせ致しましたァァ!!
うむぅ、思ったよりもお色気描写が長いというかまた丸々一話そっち系の話になってしまいましたが、大丈夫、伏線的なものは残した。ただのお色気にはなっていない。
8/21 何故とは言いませんが、ある程度描写を軽く致しました。本当に申し訳ない、運営さん……あとハートはいけないよね、うん。それも減らしました。
8/25 何故とは言いませんが、お話をまるまる作り替えました……うん、運営さん二度もお手間をおかけして申し訳ない……。
一応修正前のお話と差異がないように作りましたが、それでも同じでは無いです。そして現在は修正前のお話を前提として執筆しているので、そのせいでどこかに矛盾点が出てきてしまうかもしれないのですが、ご了承ください。(修正前のお話は他サイトにてどうぞ)
───正直言って、久しぶりに普通の寝起きだった。
いや、普通と言うにはまだ遠い。最もいけないのは、夢の最後の方ではそれが夢であると自覚できてしまい、そして目覚めるから、夢の体験がことさらリアルに感じてしまうのだ。
しかしそれでも、今回は違った。
腕の中にある感触。寝相でルリのことを抱きしめてしまったのだろう。
起きたら謝らなければいけないが、今はそれが心地よかった。夢との落差が少なく済んで、本当に良かった。
誰かが隣にいる。そう感じれることが、こんなにも心が軽くなるなんて思いもしなかったから。
なんならいっそ、もう一度寝られるくらいには……流石にそんなことはしないで、俺はゆっくりと目を開いた。
───至近距離に顔があった。
「っ、ルリ?」
「……?」
それは言わずもがな、ルリの顔だ。ただその距離が異常に近いだけで。
だって、いや、鼻先が触れるぐらいなのだ。本当にそのぐらいの距離なのだ。
そんな至近距離に、女の子が居る。驚かない方が無理で、何故俺の反応にルリはそんな『どうしたの?』とでも言わんばかりの表情が出来るのだろう。
ルリの腕も俺に回されている。つまるところ、お互い抱きしめ合っている状態と言えばいいのか。
何が言いたいかといえば、昨夜と、あと夢の内容とが合わさって色々と大変だった。精神的にも、肉体的にも。
「……おは、よう……」
「あぁ、おはよう……じゃなくてだなっ」
「……一応……トウヤから、してきた、から……私、悪く、ない」
いや、悪いとかそういうんじゃなくて、なんで抵抗をしていないのだという話だ。
距離を取るとかあったはずなのに、あろうことかルリは自分から俺に腕を回している。これはもう、何がいけないのか分からなくなってくるレベルだ。実際には全てがいけない訳だが。
何だか違和感があるが、男である俺の方から距離を取る───が、何故かルリは腕を解いてくれない。
「あの、ルリさん?」
「……?」
「いや、放してくれないと、離れられんのだが」
「……嫌?」
「嫌とかではなく……」
当然、ルリに抱きつかれて嫌なんてことは無い。男たるもの、女の子に抱きつかれれば嬉しく思うのは必然だが、それはあくまで嬉しいか嬉しくないかの話。
そして今問われているのは理性の方だ。こう、いけないのだ。何がとは言わないが、こんな至近距離で喋られると体にゾクゾクとした感覚が走ってしまうのでいけない。
「……心配」
「心配? 俺のことが?」
「……ん」
「それまた、どうして」
それでも俺の事を離さないルリは、そんなことをボソリと。
「……トウヤ、夜、うなされてた、よ……?」
言葉通り、心配そうな顔で俺に聞いてくる。
……いや、分かっている。まぁなんだ、俺自身、普段夢を見ている時がどんな風になっているのかは知らないが、つまるところ、現実の俺にとって、夢の、記憶の中の楽しい思い出に浸るのは、毒なんだろう。寝ている俺がそれを理解しているのか定かではないが、うなされていたとは、そういうことなのではないか。
でなければ、朝起きた時に泣いていたりもしない。
「……でも、手握ったら、治まった、から……このままの方が、いいの、かなって……そしたら、抱きしめてきた……」
「それに関しては本当にすまん……でも、ありがとうな。多分それのお陰で目覚めが良かったみたいだ」
「……ん」
つまり、つまりだ。ルリは俺が夜うなされてるのを見て、手を握ったらそれが治まったから、俺が抱きついても抵抗せずにいてくれたという訳で。
それは、感謝してもしきれない。俺にとって、あの絶望感を何度も味わうのは、とても酷いものなのだから。
「……でも、うなされてるの、いつもの事、なんでしょ……? これからも、また……うなされる?」
「それはまぁ、仕方ないことだからな」
「…………元の世界の、こと?」
流石に鋭い。いや、俺が勇者であり、うなされている理由を考えれば、選択肢はいくつかに絞れるか。
それが今回、最初から当たってしまっていただけだ。
「そんなところだ。簡単に言うと、家族に会えないのが寂しいんだけども……逆に言えば、たったそれだけの事だ」
それが俺にとって、夜栄刀哉にとって何よりも重要なだけであって。
そしてその言葉は、どうやらルリにとってどこか思うところがあったらしい。昨日の反応から察すれば、こちらも予想は出来なくもないが。
「……家族……親?」
「……そんなところだ」
会えなくて辛いのは妹だと、そう訂正することは出来なかった。しかし、俺の言葉に間が空いてしまったのも事実。微かにルリには疑問を残したことだろう。
「ともかく、いつもの事だからこそ平気だ。もう、慣れた」
だがそれも、俺が自ら話題を変えることで、より一層触れてほしくないことだと理解してくれたはずだ。
「……ゴメン、なさい。無神経だった……」
「気にするな、気遣ってくれるだけで有難い」
少なくとも、ルリのお陰で今朝が良かったのは疑いようもない。誰かに泣いている姿を見られるのもみっともないので、そういう意味でも。
───そんなやり取りを、未だに至近距離で続けていた訳だが。再びそれに気づけば、否応もなく視線を逸らしたくなった。
「それでだなルリさん、もしかして未だにこうしているのは、さっきの話からするに、俺が心配だからなんでしょうか?」
「……ん。もう、平気……?」
「平気だ。だから離してくれると助かる」
「…………そう」
ようやく解放された俺はベッドから起き上がって、気づかれないように呼吸を整える。少しだけ鼓動は早まっているが、これは仕方ない。
ルリのような可愛い女の子に寝起きで抱きつかれていれば、それも向こうも嫌では無いと思ってくれているなら、男としてそういう反応をしてしまうのは仕方なくはないだろうか。
それが心配から来ているとわかっていても。
何より、昨日の件以降ルリのことを少なからず意識している所がある。あんなことで意識してしまう俺もどうかと思うが、俺に対し無防備なルリにも要因はあるだろう。そうに違いない。
ルリもまた、ゆっくりと体を起こした。
「……」
その全体像というか、体全体を見て、改めて小さいなという感想を抱くと、先程まで抱きつかれていたことに対しそこはかとない罪悪感と背徳が……意識意識と言っているが、ここは精神を落ち着かせるために紳士の呪文を唱えてみよう。
───YESロリータ、NOタッチ、と。
ルリに対してそういう思いを抱くのは、高校生として危険だ。人間として危険だ。と、自身にわからせようと思ったのだが、どうも上手くいかない。
呪文のチョイスがダメだったのだろうか。
これが本当に滅茶苦茶幼い年齢の子だったら流石にこうはならなかったと思うが、ルリは思考能力や知識自体は幼くはない。かといってませているという雰囲気はなく、しかしそういう方面の知識はあるなど、そのギャップのせいで俺の認識が狂ってるんだろう。
ルリは幼い容姿だけれども、れっきとした女の子だと……厄介な認識である。
「……なに、見てるの?」
と、少しだけ視線を留めていた俺に気がついたルリが、恥ずかしそうに聞いてくる。
確かに、少しデリカシーに欠けていたかもしれない。
「悪い、まだ寝ぼけてただけだから気にするな」
「……そう」
「それより、時間的にもちょうどいい、そろそろ外に出るか。飯もとらなきゃいけないし」
「……ん」
何にせよ、これから先に対して安心と不安が出てきたと言ってもいいだろう。
前者は、ルリと一緒に寝ていれば、精神的には安定させられること。それのお陰で、幾らか余裕もできるだろう。
一方で後者は……これから先、一緒に寝る可能性が出てきてしまったこと。
結局のところ、俺がルリと寝た場合今回のようになる可能性は十分にあって、そして俺の予想では、ルリは拒否しないのだろうと。
その結果、別の意味で精神が不安定になってしまうかもしれないと考えれば……それはもう不安だ。
まだ外に出て二日目。正直に言えば、問題は多くありそうだった。
◆◇◆
とはいえ、そのやり取りも寝起きのもの。一度外に出れば、思考はスッキリと切り替えられる。
朝食は朝からやっている出店などで焼き串的なもの───何の肉かは知らないが、使われているのは多分鶏肉だろう───を食べて、俺達は再び馬車乗り場まで来ていたのだが、そこには昨日の御者の人が、申し訳なさそうな顔で待っていた。
「おはようございます。あの、どうかしました?」
「あぁ、昨日のお二人さん!」
そして俺達の姿はしっかり覚えていたのか、黒髪黒目だからこの世界だと覚えやすいのか、俺たちを見つけた御者さんは最初はスマイルを浮かべて、すぐに申し訳なさそうな顔に戻した。
「実は、これから通る道にどうも結構な数の盗賊が出没してるみたいで……昨日も商人が一人襲われたらしく、護衛として雇われてた冒険者一人が逃げ帰ってきたとか」
「なるほど……それで、馬車を出したくても危険だから出せない、ということですか」
「そうなんです。昨日から盗賊討伐の依頼がギルドに貼り出されてるんですが、結構大きい盗賊の組織みたいで、安全が確保されるのはいつになるか……なので、お二人には悪いんですが、目処が立つまではここで足止めということに……」
うむぅ……俺はルリと顔を見合わせた。見計らったかのような厄介事だ。偶然なのだろうが、実は俺達に合わせたんじゃないのかと疑いたくなるぐらいにピッタリなタイミングである。
やっぱり盗賊とか居るんだという思いの反面、困ったのも事実。精神的にあまりゆっくりはしていたくないし、俺としてはレベルアップが最優先なので、足止めは避けたいところだ。
「……どう、する?」
「どうするか……結構大きいって言ってましたけど、人数とか分かってるんですか?」
「それもまだ詳細は……でも、10人とか15人程度なら大きいとは言わないので、最低でもそれ以上は居るんじゃないかと思います」
それまた難しいな……盗賊と言うと盗みを働く悪人や、金のない人間もそういう盗みに手を染めそうだが、果たして練度がどんなものなのか。
俺の戦力の比較対象は、ルサイア騎士団の騎士の方々が主だ。確実にあそこの騎士団は連携はもちろん、純粋な実力も高いだろうし、俺ならばそんな相手でも3人、いや、今なら4人同時にでも、殺すつもりで挑めば勝てると思われる。
盗賊が王都の正規騎士団よりも練度が高いなんてことがあったらそれはそれで大問題のはずで、彼らよりは、盗賊は練度が低いと見れる。
盗賊同士の連携がどの程度かは知らないが、少なくとも数人に囲まれたぐらいじゃ傷を負うことはないだろう。
……しかし、俺一人ならば危険を承知で進んでいたかもしれないが、今はルリが居るから、問題はそこか。
「なぁ、分かるならでいいんだが、ルリは王都にいた騎士団の騎士達を相手にして、勝てるか?」
「……? そのぐらい、なら……余裕」
小声でボソリと聞けば、ルリは不思議そうな顔をして返してきた……いや、王都の騎士って、強いんだよな? にも関わらず『そのぐらい』と見た目幼女のルリに称されてしまうのは、他人である俺からしても可哀想に思えてしまう。
だがともかく、ルリの戦力の目安はできた。驚きは、無くはないが、きっと魔法がとても上手いんだろう。そうに違いない。少なくとも嘘は見えないので、ルリ自身はそう認識しているようだ。
それなら俺が心配するのは野暮だ。ルリにならばと話せば、ルリは特に考える素振りも見せず、頷いてくれた。俺の選択に従う、ということなのだろう。
「───ここから歩いて行こうとしたら、次の街まではどれくらいかかりますかね?」
御者の人に言えば、少し驚いた顔をしたあと、特に忠告するようなことも無く、俺達にその距離を教えてくれた。
旅に危険は付き物。軽んじるわけじゃないし、自分が死なないと思っている訳でもないが、それでも城を出る時に、いや、蒼太が死んでしまったあの時に、先に進む覚悟は決めたつもりだ。
その覚悟の元でなら、危険を乗り越えようとするのもまた悪くは無いだろう。
結局のところ危険が迫るのも、早いか遅いかだけの違いなのだから。
それと本来なら23話があったのですが、それはこちらに組み入れました(最後の馬車盗賊云々の部分は、本来23話にあったお話)
なので、この後は第2章の幕間となります。




