★第21話
ルリは年齢不詳ロリ、ルリは年齢不詳ロリ、ルリは年齢不詳ロリ……よし、なら平気。
文字数少し多くなったので一日休んだのは許してくらさい。
8/21 何故とは言いませんが、描写を軽くしました。
何度見ても、ルリが恥ずかしがっているというか、気まずさを感じているというか、そういうのは確かで、やはりどうしても脳裏を過る『本当は男女が同じベッドで寝る行為の難易度の高さを理解していない』という可能性は低そうだ。
無知な少女であれば説明してどうにかということが出来るが、理解した上で了承された俺は、どうするのが正解なのだろうか。
多分どうもしないのが正解なんだろうが、そうだとしても、こんなシチュエーションは初めてなわけで。
「……本当に良かったのか?」
結局部屋に着いてから捻り出せたのは、そんなありきたりすぎる再確認の言葉だけだった。
予想通り、王城の一室とは比べ物にならないほど質素で狭い部屋に、ドンとベッドだけが置かれている。しかし、これでもやはり俺がイメージするファンタジーの宿屋よりは随分と良質で、この世界の文明、技術水準が予想より高いことを認識できる。
ベッドのサイズとしてはシングルベッドとほぼ同じというか、つまりシングルベッドだ。ということは、二人で寝ることになった場合には、ルリが超絶小柄であることを考慮しても、肩がくっつく。お互いに横向きになって少しでも横幅を減らさなければあちこち当たるだろうし、そうしても少し動けば触れるだろう。
そんな内装を見て、改めて俺はルリに問う。本当に良いのかと。
「……良い。私が、自分で、言ったこと、だから……」
「確認しておくが、男と一緒のベッドで寝ることの意味、分かってるんだよな?」
「……」
躊躇いがちに、コクリと、頷きが返ってきた。
別に、必ずしもそういうことがある訳じゃないのは当たり前だが、それでも男女が同じベッドで眠るなんて言うのは、そういう事実があったり、互いにそういう思いがあったり、という状況が大半だ。それこそ、身内でもない限り。
それをルリも理解している。つまりそのぐらいの関係性があって初めてすることなのだと、分かっている。
その上でということは……無理でもしているのだろうか。しかし俺にはそうは見えない。
俺が中々頷かないのを見て、手、ではなく、ルリは俺の袖を握ってきた。
クイッと引くような、あざとい行為はしない。上目遣いに見ることすらない。
ただ瞳は伏せたまま、ボソッと。
「……嫌?」
それだけ、聞いてくる。
それはまるで、拗ねる子供のようにも見え、寂しそうにも見えて、うっと言葉に詰まる。
『私と一緒に寝るのは嫌?』と、小学生レベルの容姿の少女に、口数の少ない少女に、俺は聞かれているのだ。
……いや、嫌、ではない。というか本来であれば俺が渋ることでもないのだろう。
全てを理解した上で、ルリは良いと言っている。俺がそれに了承しないと、確かにルリと一緒に寝ることを嫌だと思っていると捉えられてもおかしくないし、違うならばなぜ拒否するのかとなる。
もしくは、俺がルリにそういう思いを抱いている、とも誤解されてしまうかもしれない。
これから旅をする相手なのだから、 そんなことを思わせながら一緒に居るというのも、それこそ気遣いが出来ていない気がして、ならどうすれば解決するかと言われれば……。
「嫌じゃない……分かった、一緒に寝ればいいんだろ? それでいいか?」
最後は俺が折れるしかなかった。ルリが無理をして俺と一緒に寝ようとしているなら止めさせられるのだが、そうでない以上───意図的にそうしようとしているのならば、止めさせる口実がないため、もう仕方ない。
ルリが、少しだけ安心したように、袖から手を離しながら頷く。
「……良かった」
拒絶されなくて良かった、ということだろう。しかし、俺にとっては決して良いことでもない。
了承したということは、同じベッドで寝るということだ。この、横になれば確実に体がくっつくような一人用のベッドに、二人で仲良く入るわけだ。それだけで俺としては色々考えることがあるわけで。
「あー……まだ寝るには早いし、夕飯でも食いに行くか」
「……ん」
少しでも気を紛らわすために、先延ばしなだけだとわかりながら、俺はルリにもっともらしいことを告げていた。
時刻はまだ夕方。ここからどんどん暗くなっていき、時間帯が遅くなればなるほど、男女間の空気はおかしくなる。
せめて夕飯を食べて、ルリが早々に眠りこけてしまえば、その時はある意味俺はゆっくりと眠れるかもしれない。
一緒のタイミングに寝るよりは、そちらの方が遥かに楽だろう。
◆◇◆
宿屋に隣接する食堂にて、如何にも定食というような定食を食べ終える頃には、周囲も暗く、夜と言ってもいい時間帯になっていた。
食堂には人が溢れていて、まだまだこれからと言わんばかりに酒を飲んでいる人間も多いのだが、当然俺達はそこに混ざるわけもない。
再び部屋へと戻れば、食堂の喧騒は過去のものとなり、より一層の静けさが何となく気まずくなるような。
───俺はここからどうすればいいんだろうか。
部屋にはベッド以外には木製の丸テーブルと椅子が一組あるだけで、そこがまたファンタジーの宿屋という感じなのだがそれはともかく、寝るにしろ寝ないにしろ、凄く気まずいわけで。
珍しく自分でも思考が停止していることに驚きつつ、数秒沈黙を保っていれば、ルリが先に動き出した。
反射的に、その肩を掴んでいた。
「……何?」
「……」
当然困惑した様子のルリがこちらを見るのだが、ここに来てからというもの、ルリに先に動かれると色々と変な方向に事が運ばれているような気がするのだ。
それを思い無意識的にルリの行動を阻止していたのだが、残念、その後の行動を特に考えておらず、これでは俺はただ変なことをしただけになってしまう。
急ぎなにか紡がなくてはと焦る一方で、時間切れの鐘が音を鳴らす。
「……寝る時は壁側と通路側、どっちにするんだ?」
結局、何を馬鹿なことをと思うようなことを俺は聞いていた。仕方ないでは無いか、俺が何か言わないとルリが先に口を開きそうだったのだから。
その結果特に思考した訳でもない、本当に思ったことをそのまま聞いてしまった訳だが、正直アホらしいと自分でも思っている。
ルリも困惑していたが、質問にはしっかりと答えてくれた。
「……トウヤ、は?」
「俺はどっちでも。ルリに合わせる」
「……じゃあ、壁側」
ベッドは壁にくっつくようにしてなっている。ベッドで眠る時の位置を聞いたのだが、ルリは壁側を所望した。
あぁそうと頷いたはいいものの、やはりルリから手を離せずにいた。
「……どう、したの?」
「いや、女の子と同じベッドっていうのは……そう、緊張するから、どうしたらいいのか困惑してるんだ」
『抵抗』という言葉はあまり良くないと判断して『緊張』に置き換えたが、咄嗟についた言い訳は、ルリを納得させるに足るものだったようだ。
「……そう……私、に、緊張、するの……」
何となくその言い回しはルリ的には良かったらしい。女の子として意識されたことが嬉しいのか、はたまた俺もそういうことに緊張することがわかって嬉しいのかは知らないが、ルリはベッドへと足を進める。
「……私、は、気にしない、から……普通に、していい……」
そう言っていそいそとベッドに上り、ポンポンと。
自身の横を叩いた。
「いやほら、寝相とか気にするとな」
「……? 寝相、ぐらい……気にしない……よ?」
「ルリに触るかもしれんし」
「……寝相だから、それは、仕方ない……」
と、苦し紛れの言い訳も空振りに終わる。ルリさん、それは強かすぎます。
この時点で俺の思考は再び『俺はここからどうすればいいんだろうか』とループをしかけたが、それを寸前で押しとどめ、仕方ない、本当に仕方ないと自分を言い聞かせつつルリの促しに従った。これ以上はそれこそ渋れない。
ベッドをギシギシと軋ませつつ乗れば、ルリはすぐ隣だ。
「ルリは平気なのか?」
「……何、が?」
「いや、恥ずかしくないのかと」
今この状況、シチュエーションは、俺としてはとても恥ずかしい。赤面こそしないが、過去を探してみても中々見つからないぐらいには恥ずかしがっている。
一番の要因としてはやはり同じベッドというのが挙げられる。というかそれが全ての元凶だ。同じ部屋というだけでもヤバいのに、同じベッドとなればもう……にも関わらず、ルリは積極的だ。
男に色々勘違いを起こさせてもいいぐらいに。いや、ルリに勘違いを起こしたらその時点でアウトなのだが、ルリ自身は俺と隣同士で寝て気にならないのかと。
「……」
返事は返ってこないが、ルリは視線を逸らした。
つまり───そういうことなのだろう。平気なわけが無いと。
「……そう言えば明かり、消していいか?」
「………ん」
思い出したように言って、俺は一度ベッドから降り、部屋の中央で光る照明に触れることで、明かりを消した。
部屋は暗闇に包まれ、慣れぬ瞳は真っ黒に塗りつぶされた光景しか見せず、仕方なく何も見えない中手探りでベッドまで戻る。
一応ベッドまでの距離は短いので特に意識することも無く辿り着けるし、ベッドに足を引っ掛けて思わずルリの方に、なんてことも無い。
暗闇の中ベッドに横になって、さっさと寝てしまおうと俺は瞳を閉じた。こちらの世界に来てからは進んで寝たいとは思わなかったが、ことここに至っては起きている方が悪影響だ。
自分の意思で寝ないのと、状況的にどうしても寝れない場合では翌日への影響も違う。そうなってくると睡眠不足の症状も出てくるかもしれないのだ。
無理にでも寝よう。無理してでも寝よう。というかぶっちゃけルリが居るのが心臓に悪い。
「…………」
「……っ」
そうやって寝ようとしていれば、ふと、背中に手がつけられる。
正確に言えば、背中の服を掴まれた。そうしてルリが、俺の背中に体を近づけている。
密着しているわけじゃない。ただ、くっついていると表現しても問題ない距離だ。それもルリの方から意図的に。
本当に何を考えているのか。俺をからかっている訳じゃないだろう。もちろん誘っているなんていうことも無いはずだし、その可能性を信じたら俺は最低な人間になってしまう訳で。
寒いのだろうか。一応その可能性はある。この世界には時期毎の明確な四季はなく、基本的には土地によって天候が大きく変わるらしいのだが、この辺りは秋に近い気候だ。
全体的に涼しく、夜も少し冷え込む。俺は平気だが、ルリはもしかしたら薄い毛布一枚では寒かったのかもしれない。
その可能性を信じて、俺はあえて何も言わなかった。何も言わず、寝ることに専念した。
幸いにして、ルリの方はそう長くはもたなかったようだ。昼間寝たのにも関わらず、既に意識を夢の中へと落としている様子。
だからそうなれば、こちらもその背後の温かさを意識の外における。兎にも角にも、さっさと寝てルリを意識しているような思考を振り払いたい。
これから先、ルリと気まずい雰囲気になりたくもないのだし。




