第104話:テンプレすぎる、野望。
今日は少し魔獣の世界の話が入ります。この小説の次回作がこの話でもちょこちょこ出てくる「宝井舜介=ガウェイン」のお話になる予定なんですが。
でも今は漢、呂布を書く!
[星暦1554年10月9日。聖都アヴァロン。]
「お兄ちゃん⋯⋯。お兄ちゃん⋯⋯。起きてください。」
まだ夜も明けきらぬ時間にトムはリコに起こされる。
「どうしたリコ⋯⋯。ってまだ夜中じゃないか。」
トムは眠い目をこすって目覚まし時計に目をやった。
「もうすぐ朝ですよう。お兄ちゃんにお電話です。ルークさんのパートナーの方みたいですけど。」
トムが回線を開くと目の前に妖艶な美女が現れる。
「トムさんね。わたしは貂蝉。呂奉先にくなぐ者よ。この間、あなたについて来てもらった土人(カナン人)の村のことなんだけど⋯⋯。実は昨日、魔獣の群れに襲われてしまってね⋯⋯。」
トムは起こされたばかりで思考力が鈍っていたのだが、ようやく話がつながる。
「なんだって?」
それで、貂蝉の依頼とはその救出のためにルークを助けて欲しいというものであった。その理由は、ルークはアーサーシステムとリンク出来ないため、あらゆる情報に関して不足しているからであった。
「しょうがねえな。リコ、凜⋯⋯じゃなくてマーリンに連絡してくれ。」
この時間でも、人間ではないマーリンは睡眠を必要としていないので起きているだろうと踏んだからである。
「おや、トムの方から連絡してくるとは珍しいですね。」
最初は驚いたマーリンであったが、説明を聞くと同行を承諾した。
「では、ゼルの能力を拝借するとしますか。」
マーリンが杖を振ると、二人の足元に転送陣ゲートが開き、次の瞬間、二人はその村まで来ていた。
そこにはすでにルークと「ムラオサ」がいた。
「これはこれはトム様。お忙しい中恐縮です。」
ムラオサの案内で村に入ると、そこはまるで竜巻でも通過したかのような跡になっていた。家は破壊され、あたりに色々なものが撒き散らされていた。
無残なことに、何人もの大人たちが殺されており、死体があちらこちらに散らばっていた。
子供達の一部はムラオサがと拠点する建物の地下に匿われて無事であった。
トムを見つけると子供たちが群がる。保護者がいなくなった不安な気持ちを表したり、親とはぐれた悲しみを表す。トムは一人一人を抱きしめてやる。
そんな状況を目にしながらマーリンの心はすでに違う方に飛んでいるようであった。
「やはり北国、もうすきかり寒いですね。」
ぼやくマーリンにルークは
「馴れだ。」
それだけ言うと事情を説明した。先日倒した魔獣の「報復」のために村を襲ってきたのだ。
魔獣たちにしてみれば、「奴隷兼非常用蛋白源」を易々と手放すわけがなかった。いつもの鎮守府であれば、これをエサに魔獣の殲滅作戦でも練るはずなのだが、同じく選挙大戦での決勝トーナメントのため、対策自体が手薄になっていたのだ。
「魔獣はそこまで承知した上で、カナン人を奪還したんだろうか?」
トムの疑問に、マーリンは飄々とした口ぶりで答えた。
「まあ、魔獣はランダムに生み出されますからね。時にはかなり賢い個体が現れてもおかしくはないですね。」
北極圏に封印された魔獣を生み出す「母体」は三体あり、そこから「漏れ出る」形に魔獣たちは生み出されるのである。
この高原は強固な岩盤の上に位置しており、この下には、魔獣たちが「氷河期」を生き延びるために作った「地下宮殿」が迷路のように続いているのだ。その内部図は国王のキングアーサーシステムによって把握されており、それにアクセスする権限を持つものは限られているのだ。
ただ、魔獣退治専門の鎮守府にすらその全容は明らかにされてはいない。「迷宮」深部に住まう高位の魔獣は人間との接触をなるべく避けており、外界に出て悪さをするのは大抵は知能も能力も低い低級の魔獣だからである。内部に入って戦ったところで、戦った本人がRPGのようにレベルアップするわけではないので、無用な戦いは避けさせているのだ。
「おそらく、連れ帰られても、(高位者が住む)あまり深い階層ではないはずですからね。相手は三下程度でしょう。サッサと済ませましょうか。」
いつものメンドくさがりのマーリンの変容ぶりにトムは驚いていた。
(珍しいな、怠け者のマーリンのくせに)
それが顔に現れていたのか、マーリンはくすりと笑うと、
「実は、この魔物たちがここにいるのと私の民ゴメル人の間には深い因縁がありましてね。これは内緒ですよ。⋯⋯そして、凜ではなく私を呼び出したことが正解だったこともね。」
そう言った。
「この地域だと、恐らく『風の一族』の仕業でしょう。下っ端と小競り合いするのもいいですが、どうせなら手っ取り早く『長』と話しをつけてしまいましょう。⋯⋯では、参りましょうか。」
再びマーリンが杖を振ると、すでに洞窟の中であった。ただ、地表からほど近い深さなのだろう。ところどころ、地表からの光が漏れ混んでおり、水晶のように岩肌に現れた鉱物に反射して幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「リーナが好きそうなところだな。」
トムの感想にマーリンは再びくすりと笑う。
「そうですね。ただ、それほどロマンチックなものではありませんよ。」
すると、遠くに光輝いて見えたものが近づいてくる。それは、「水晶」などではなく、魔物たちの眼だったのだ。トムは『救世偃月鎌』をルークは『方天画戟』を構えた。
「何⋯⋯者だ?」
先頭に立つ魔物が口を開く。人間とは口の形が全く違うため、人語を語ると苦しそうに聞こえる言い方だ。
「私はこの惑星の管理者。『偉大にて深淵なる』マーリンです。ハスター卿はご在宅か?」
マーリンが厳かな口調で尋ねる。
「お⋯⋯頭に何⋯⋯用か?」
いらだった波長がこもった言葉である。マーリンは飄々とした口調で続ける。
「それはあなたには関わりのないことです。あなた方はプライベートに踏み込まれたいと望まないでしょう?だから呼び出しているだけです。」
魔獣たちの中に怒気が孕まれていくのを二人は感じていた。
「人間⋯⋯のくせに。」
魔獣たちの群れが三人をめがけてその牙をむいた。
「仕方ありませんね。」
そう言ってマーリンは振り返った。
「『角さん』、『助さん』、やっておしまいなさい。」
「誰が『助さん』だ。」
トムが自分に群がる魔獣たちを薙ぎ払う。
「『角さん』? 俺を『張角』のようなぺてん師と一緒にするな。」
ルークも憮然とした表情で方天画戟を突き出し、魔獣を串刺しにする。ちなみに張角とは「太平天国の乱」の中心人物である。
ものの五分も立たないうちに半数の魔獣たちが討ち減らされ、魔獣たちの足が恐怖に止まる。
「『角さん』『助さん』もういいでしょう。」
マーリンが二人を止めると先ほどの魔獣に近づく。魔獣はジリジリと後退する。
「『メタトロン』」。
マーリンが唱えると、彼の背後に四枚の翼が顕現する。マーリンがいつも被っている「皮」を脱いだのだ。
一斉に魔獣たちがひざまづく。「風の一族」の高位の魔獣は「天使」に似た姿の者が多いためだ。
「おい、最初からそれをやれよ。」
トムが苦情を言うと、マーリンは笑った。
「いいえ、『手下』のあなた方の強さを見せたからこそのご威光なのですよ。あなた方二人を配下に置く私はさらに強いことになりますからね。」
すると、奥の暗闇に光が現れる。それは禍々しい空気をまといながら真っ直ぐにこちらに近づいて来た。黄色の長い衣に頭まですっぽりと身を覆い、その顔は暗闇よりなお暗かった。
「『風の一族』の長、ハスター卿です。『黄衣卿』とも呼ばれています。」
二人に紹介すると、カナン人の一件を話し、村人を返してくれるように頼んだ。
「久しいの、無我よ。そのような些細な件でお主が出張ってくるとはな。まあ良い。今回は便宜を図ってやろう。そのかわり、この度の惑星の危機、我々の安全も保証してもらおうか。」
魔獣たちも惑星に迫りくる危機を知っていた。「風の一族」の中には宇宙空間を移動できる者たちもいるからだろう。
「ええ、些細な案件な割に見返りは随分と大きくきましたね。わかりました。そちらはどうかお任せのほどを。」
交渉を終えると魔獣たちは再び洞窟の奥へと消えて行った。
「では、私たちも彼らを迎えに行きましょう。」
マーリンが杖を振ると再び三人は地表へと戻っていた。そこにはすでに巨大な翼竜の群れがおり、彼らはその手にカナン人の村人たちをぶら下げていた。彼らは次次に地面にカナン人を置き去ると再び上空へと舞い上がり、彼方へと去って行ったのである。
子供達が親を迎えに現れる。親も子供たちを抱きしめ、再会を喜びあった。その姿に、その場面の自分の力が関与していたことに、トムは強い喜びと満足感を味わっていた。ルークはあくびとともに大きく伸びをするとトムの肩に手を置いた。
「どうだ、トム。これが人を治めるということだ。災害救助もいいがな。でも、政の世界ではこの数万倍の民を笑顔にできるのだ。たまらんだろう?これが俺が覇道を志した理由よ。俺はこいつらと同じ、力のない民族の子として生まれた。地を耕す民と、羊や牛を追う民はいつも境界線を争っておったからな。俺は世界を変えてみたかったのよ。
お前はどうなのだ?お前には強さがある。その力を持って汝は何をなすや?迷うておる場合ではないのだ。今、力を発揮してこそ、お前が次に進むことができる道の高みを決めるのだ。」
[星暦1554年10月12日。聖都アヴァロン。]
今度はホームに太宰府を迎えての試合だ。アヴァロンには太宰府の大勢のファンも含めて大挙して人々が押し寄せる。これによる経済効果も選挙大戦コンクラーベの一つの目的でもあるのだ。
そして、フェニキアやヌーゼリアル、果てはアマレクからも観客が訪れる。フェニキアを通じては国交のない他の惑星系の人々も来るのである。そして、それはスフィアが製造する兵器「天使」の見本市でもある。だからこそ騎士団だけでなく生産に携わるギルドも本気で参加しているのである。
「⋯⋯ぬるいな。」
ルークは呟いた。アヴァロンの地上港である。周りには報道陣が群がる。ただ、手にカメラを持つ者はいない。みな、義眼ラティーナ デバイスで動画も静止画も処理されるからだ。
「命がかかった案件を争うのに命をかけぬとは矛盾も甚だしいな。」
自分の駆け抜けて来た時代はどうだったろうか?
明日の食べ物、来年蒔くための種。家畜のための水場。
だれのエゴが優先するのか。それは生きのびるための権利をかけた戦いだった。自分が負ければ民は飢え、敵を殺さねば家族を殺され、奪わねば明日、生贄にされるのは我が身であった。
弱者であることは死を意味し、強者であることは敵の数を増やすことである。
なのに、ここではただの娯楽にすぎない。
だからこそ、あのカナン人の暮らしが却って生き生きとして見えるのかもしれない。
[星暦1554年10月13日。聖都アヴァロン。]
「トム?」
トムは驚いたように自分を呼んだ声の方を向いた。その声の主はリックであった。
「なんだぼうっとして?考え事か?」
「ああ。」
トムは生返事だけすると目の前にあるコーヒーのカップに手をやった。
「リック、お前は執政官になったら何がしたいんだ?」
リックはふふんと鼻で笑うと腰に手をやり、胸をはった。
「そりゃ、まずハーレムを作る、かな。⋯⋯というのがここに来た時の最初の目標な。」
あまりに「厨二」な答えを即答したのでトムは唖然とした顔をする。
最近、女性からも沢山のファンレターも貰えるようになったリックは、マメに返事をしたためているらしい。確かに、この男ならやりかねないな。トムはそう思った。
「いや、俺はそういう『お約束な』答えを聞きたかったわけじゃない。」
トムの苦情にリックはやれやれ、といった顔をする。
「だから、『最初は』、と言ったろう?⋯⋯俺は多分、だれかに認めてもらいたいだけだのだと思うよ。大事な存在になりたいんだよ。誰かにとっての一番にな。」
「ふーん、で、それが誰よ?」
「さあ。それを探すのが今の俺の目標だから。」
あ、そう。そう軽く流したトムだったが、ふと自分は誰にとってそういう存在になりたいのだろう、そう考えてみた。
「なんの話?」
急に凜が会話に割り込む。
「なあ、凜が目指すのは『王道』それとも『覇道』?」
トムが尋ねた。「王道」とは君主の「徳」、つまり人間性による統治、対して「覇道」は君主の「力」、つまり武力を含む権力による支配である。凜は少し考えてから
「どっちもだね。つまり『覇道』は見た目、『王道』は中身でしょ?女の子が相手だったら、こっちの見た目に興味がなければ中身にだって見向きもされないよ。人間、そう割り切れたもんじゃないって。」
凜の答えにトムは笑いを噴出した。
「つまり力づくで俺の良さを教えてやる、って感じか。イケメン限定だな、そりゃ。」
「いやいや、現実の男でそんなやついたらイケメンでも引くわ。」
リックも鼻白む。
「ねえ、なんの話?三行で説明して。」
アンたちもコーヒーの香りにつられてやって来た。凜は変な要約をする。
「いや、『壁ドン』で女の子が釣れるかどうか、って話。」
(覇道と『壁ドン』が一緒かよ?)
トムはあきれたがアンは大まじめに答える。
「やっぱり男子の『見た目』が大切なんだと思う。……最初はね。でも凜くんがやってくれたら⋯⋯そのまんま唇をアタシがいただいちゃうの!どう?それこそ恋の『王道』って感じじゃない?」
「ほら⋯⋯ね。現実でなければ案外女子もくいつくだろ?現実じゃなきゃね。」
苦笑する凜にトムは苦言を呈した。
「いや、凜の妙なたとえのせいで、かえって意味が不明になりつつあるんだが。」
しかしリックは人類の破滅という「現実」を目にするならかえって「壁ドン」でもいいんじゃないか、そう言おうと思ったが。言わなかった。自分もまだその危機を現実だとどうしても思えないからだ。
[星暦1554年10月13日。聖都アヴァロン。選挙大戦決勝トーナメント第一戦。聖槍騎士団対大宰府。]
さて今回、どうしても勝たねばならない太宰府は、先回の「流し」に近いメンバーを改め、ベストメンバーで臨んで来たのだ。
聖槍は地上戦を落とし、空戦も大将戦までもつれこむ。奇しくも大将はトムとルークである。
二人は礼を交わすと静かに向かい合う。トムの中には未だに迷いがある。しかし、この戦いにおいて彼に迷いはなかった。接して見ればわかる、偉人と呼ばれた男の器の大きさ。全てを喰らい尽くし、のみ尽くさんとする貪婪な猛獣の、そして野山を焼き尽くす炎のそれである。
(なんと俺の小さなことか⋯⋯)
心の中でつぶやく。これまでトムを支配していたのは子供の頃に味わったいじめへの恐怖、自尊心を打ち砕かれた恨み。自分を妬む親族たちへの蔑み。ルーク、いや呂奉先という男がかかえていたものに比べてあまりにちっぽけではないかと。
「そんなに変わらないと思いますよ。」
リコがささやいた。
「小さな者を、弱い者を守ってあげたい、その気持ちは変わりません。そして、かつて圧倒的に弱者であったお兄ちゃんだからこそ、わかることもあります。小さき者、弱き者の痛みと苦しみと悲しみが。お兄ちゃんは彼らを守る英雄でなくてもいいんですよ。みんなに『寄り添う』存在であれば。」
トムは「救世偃月鎌」を構えた。
(「寄り添う」……か。)
「いい面構えになったな、トムよ。」
ルークも方天画戟を掲げた。
「どうも。」
トムは自分から出た言葉に驚く。これまでなら「見下された」、と感じて反発したかもしれない。素直に礼の言葉が出たことに。
(全力でぶつかってやろう。それがルークさんに対する最大の敬意の表し方なのだから。)
「出でよ、ホルスの子ら。イムセティ、ケベフセヌエフ、 ドゥアムテフ、ハピ!」
トムの周りに4体のガーゴイルが現れる。ルークはにやりとする。
「力任せで通じる相手かどうかは先日身をもって知ったはずだが。」
しかし、トムは4体のガーゴイルとともに突進する。ルークは自分に取りつこうとしたガーゴイルを払おうとした一瞬の隙をトムにつかれる。ワンテンポ対応が遅れれば腹部にトムの斬撃を入れられるところであった。
「なるほど、召喚技と分身技の合わせ技か。」
しかし、自分も攻撃を繰り出しながら複数の召喚獣を操るのはやはりトムの脳にもC3領域が出来上がっていることの証拠なのだ。
(向こうの「インプ」はこちらより一枚落ちるが、操る人間はこちらが一枚落ちる。互角……のはずだ。)
リックは呼吸を整える。
「その意気や好し!衡山朱雀!出でよ難訓!」
ルークも受けて立つのだろう。身にまとった甲冑が赤みを帯びる。攻撃特化型のフォームである。また、彼の傍に虎の牙を持つ牛が現われる。古代中国の伝説の凶獣、「難訓」(窮奇とも呼ばれる)である。
ルークは「難訓」に跨ると方天画戟を掲げ突進してくる。デスサイズは形状的に直線攻撃を受けるのは弱いのだ。
「散開。」
トムと4体のガーゴイルはは強力な直撃を躱すと背後から襲いかかる。しかし、一体のガーゴイルが屠られる。
(お兄ちゃん!?)
「慌てるな、リコ。まだ三体ある。もう一度くるぞ。」
今度は鎌の柄で戟の打突を躱すと、果敢に斬りかかる。しかし、その一撃をルークに柄で防がれ、返す一撃でまた一体ガーゴイルを落とされる。
「馬上戦はさすがに向こうが上か。しかしこちらがつきあってやる必要はない。雪嵐!」
今度は突進する難訓が脚をとられて、上のルークを振り落とす。
「絶技!竜巻 F1!」
トムの周囲を囲むように細い竜巻が次々と立ち上がる。
(これでは「盤古」は間に合わぬか……、)
「絶技!「大魔王蚩尤!」
ルークの甲冑がまがまがしいほどの黒に染まる。空気が震え、獣のような咆哮があがる。変身技を組み込んだ最終奥義である。その腕が振るう方天画戟は稲妻のように疾い。
鈍い音がして画戟が竜巻に止められる。無数の細い竜巻は合体してその強さをましていく。
「F6!」
巨大化した竜巻がルークを飲み込む。その竜巻にトムは刃を送り込む。
「ぬうううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。」
ルークの断末魔とも雄たけびとも聞こえる叫びが闘技場に轟いた。
トムは竜巻の制御に集中する。もはやC3を駆使しても竜巻の制御でいっぱいなほどの威力なのだ。
(俺は、俺は決して負けぬ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
竜巻の表面に稲光がきらめき、その中から黒い腕が現れる。
(くそ!最大でこれか?抑えきれないか)
アヌビスは本来「智天使」であるため、競技では力を天使なみに封印しているのだ。
そして、ついに黒い怪物と化したルークが技を破り、方天画戟をまったく動けないトムにつきたてる。
そこで、終了のブザーがなった。AIによるダメージ判定がなされる。
「勝者!ルーク・フォンダ人位。空戦、セットカウント3-2、第二ゲーム大宰府。」
(くそ、負けたか。あと少しだったのに。)
「惜しかったな。今回は天運が俺に味方したにすぎんよ。」
拳を握りしめ、唇をかむトムはルークと握手をかわして踵をかえす。するとどさっとという音がして振り返るとルークが膝をついていたのである。
「トム、気にするな。先回の貯金がある。なんとか一つはとろう。それに、勝負に負けたが、完敗というわけじゃない。地球最強戦士の一人ををあれだけ苦しめたんだ。トム、もっと胸を張って良い。」
「ああ。」
凜に言われて、トムは気を取り直す。そう、後ろを振り返っている場合でも立場でもない。前進しかないのである。それが、誰かを守るということなのだ。
次回、対大宰府戦決着します。
第105話:「魔女っ娘すぎる、ロボ戦。」は3/30投稿予定。お楽しみに!




