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IN THE PALM OF DRAGN  作者: 堀江ヒロ
異世界へ
5/33

05




 ケンジたちはきょろきょろと辺りを見渡す。周囲を探索するに当たっても、見当くらいはつけておきたい。


「んんっ?」

 ケンジは視界の端に動くものを見つけ、声を上げた。

「ケンジどうした?」

「あれ」と林の奥を指したが、もうその方向には動くものー人影っぽかったーは見えなかった。


 ーー少し休憩した後、4人は林の中を歩いていた。ケンジが人影を見たという場所の先だ。

 ケンジが指した場所は、確かに折れた草があり、何者かがここを通ったことは確実だった。

 木がうっそうと茂り、林の中は昼間だというのにかなり薄暗い。進むにしたがって、下草はまばらになり細い倒木や腐葉土が足元に広がる。


 ガサガサ、バキッボキッ


 下に落ちている枯葉や枯れ枝を踏む音が響く。

「ホントに人影なんか見たのかよ。こんなところに人がいる訳ないだろ」

 変わらない景色に愚痴がこぼれる。方位磁針で確認しているが、こんな景色が続けば愚痴の一つも出るし、方向感覚も狂いそうだ。

「五月蝿いなぁ。そんなら砂浜のところで待っていれば良かっただろ」


 ーーガサガサッ


 4人の足が止まる。その音は雄司たちが出した音ではない。前方の木々から聞こえたものだった。


「何だろ?」

 声を落として、タケシが尋ねる。

「・・・さあ?」

 ほかの3人にも分からない。

 ーーバキッバキ

 もう一度、聞こえた。それはどうやら、ひときわ大きな大木の後ろから聞こえていた。

 3人をを抑え、雄司がひとり木の裏に回り、ゆっくり傍へ寄る。


「・・・んんんっ」

 雄司はそれを見て叫び声を上げそうになったが、押し殺す。大人として、息子たちを前に醜態をさらせない。

 大きな樹が邪魔をしてのぞきこむまで見えなかったが、そこには異様な姿をしたーー化け物がいた。

 雄司は自分の目を疑ったが、目を擦って再度凝視しても消えない。はっきりと目に映っている。


 化け物の身長は雄司の1.5倍~2倍。豚とカバとイノシシと人間を組み合わせたようなデブな生き物。

 それはファンタジー小説やロールプレイングゲームなどに出てくる人食鬼、オーガーの姿をしている。

 そのオーガーが3匹、地べたに伏している。おそらく寝ているのだろう。先ほどの音は寝返りで立てた音のようだ。

 しかし、何故こんな怪物がここにいるのだろうか。訳が分からない。


「父さ~ん。何かあった~?」

 何も知らないケンジが大声を出して尋ねてくる。大樹の陰でケンジらにはオーガーの姿は見えない。


 おい、バカ息子! 能天気に声を出しているんじゃない!! 心の中で雄司は叫んだ。

 訳が分からないなりに、こいつらに気づかれない方が安全だという事だけは分かる。

 自分のバカ息子を呪いたくなった。

「静かにしろ!」

 音量を下げ、できるだけ低い声でケンジに怒鳴る。

「なんだって~?」

 更に大きな声でケンジが尋ねてくる。

「黙れって言ってるんだ! バカ息子!!」

 思わず、後ろを向いて音量も気にせず怒鳴る。


 全く、もう・・・

 雄司は苛立ちを抑え、目線を化け物へ戻した。


 ーー1匹のオーガーと目が合った。・・・時が止まる。


 やばい・・・!?


 雄司の背中に寒気が走る。


 動けない・・・


 オーガーは寝ぼけ眼で雄司を見据える。

「・・・? ・・・ギャオォォォォ~!!」

 覚醒したオーガーが叫ぶ。その叫びに他の2匹も目を覚ます。


 呪縛が解けたように、雄司の体に自由が戻る。

「逃げろ!!」

 3人に声を送る。

「何だって? 父さん? さっきの叫び声は?」

「いいから、逃げろ!!」

 声より早く、雄司は大樹の裏から顔を出す。


「グオオォォォ~!!」


 二本足で立ち上がったオーガーの声が林の中にこだまし、3人の前にも姿を現す。突然の化け物の出現に面食らう。

「何だ~!? あれは・・・」

「知らん!!」

「とにかく、逃げろぉ!」

 4人は全力で駆け出す。


「もしかして、ケンジが見た人影って、これ?」

「・・・かもしれない」

 ケンジらは無我夢中で走った。ヨットのある砂浜まで。

 オーガーは鈍足ながら、後ろを追ってきている。


「何で、あんなモンがいるんだ?」


 身体は思ったより速く、草をかき分けて走ったというのに世界記録が出るのでは?というほどのスピードだった。

 それは少し大げさだったかもしれないが、火事場の馬鹿力って凄いと実感した。



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