1.少女は生きるため計画的に村から出奔する
あらすじ:
辺境領の村に住む家族に疎まれた少女ユリアは、3歳のときに唐突にいくつか脳力開花した。その数年後に辺境領周辺一帯に蝗害の飢饉が起きた。家族により口減らしで殺害されることを察知した少女は森に逃げ込んだ。少女は森の小屋で辺境領の有力者である狩人と出会いパートナーとなった。1年ほどの間、少女は森で狩りをしながら厳しい教育を受けて脳力をさらにアップする。少女は、やがて、森を出て村や町を巡り持ち前の脳力で人々が抱える問題を解決しながら辺境領の領都に進出する。少女は、領都で専門的な教育を受けて脳力を向上させ、領内の種々の問題を解決して民を富ませる。その後、少女は、王国の都を目指して王国中を巡り、町や村で貴族や悪徳商人の策謀を暴きつつ王都に到達する。少女の、その後の活躍や如何に。
この物語は、少女が有力な人との幸運な出会いを重ね、脳力を生かして異世界で成り上がっていくお話です。(「脳力」は、能力よりも脳の作用に限った用語としてあえて選択しています。)
時代や場所や文明・文化レベルは中世欧州風。魔物や魔獣は少しいます。魔法は少しあります。戦いも少しあります。ざまあは少しあるかもしれません。
そのような設定でお楽しみいただければ幸いです。
――― 場面は飢饉の最中の辺境領の村
その日、ユリアは、家で一切の食事を与えられないまま納屋に押し込められていた。ユリアは、家族から疎まれているとはいえ、ここまでひどい扱いを受けたことがなかった。ユリアは、特に抵抗せずに家族の者のなすがままを受け入れて納屋で静かにしていた。
ユリアは、音をたてないように慎重に納屋の壁に耳を当て、ひっそりと耳を澄まして家族の話声を拾った。彼らは、この蝗害による飢饉でいよいよ食べるものがなくなって、手っ取り早く口減らし手段をとるべきだと相談していた。どうやら、不気味で得体が知れず家族として半人前の働きもないユリアを殺して、深夜になるのを待って森の奥深くに捨てることにしたようだ。
ユリアは、自分の置かれた危機的状況に、予てからの計画を実行に移すときが来たことを悟り、即座に音をたてないようにそっと扉の鍵を外して納屋から抜け出した。そして、暗がりで足元がおぼつかない中、月明りを頼りに家から見えない方角に向かって腰をかがめて走り出した。
ユリアは、家から十分離れた位置まで来ると、方向を変えて生活魔法の照明で足元を照らし森の方へ走った。途中、犬を連れた追っ手を巻く匂い消しのため、小川に入って少し進んでは陸に上がる、いわゆる止め足の攪乱罠を数か所に仕掛けた。
ユリアは、小川内を最初とは逆方向に進み、途中の橋の下から山菜取り道具に偽装した背負子を引っ張り出した。それは家族から取り上げられないように隠して置いたものだった。ユリアは、これを背負って橋から離れたところで陸に上がり、草地を進んだ。少し行ったところでいつもの山菜取りの森の道に入った。
ユリアは、自分に対する両親や兄弟たちの扱いが凶行に変わる気配が見えたら、人知れず森に逃げる計画を立てていた。背負子の中身は、森の中で生きるために必要なものを厳選して詰め込んだものだった。実際は、背負子を持つのは、ユリアが収納魔法持ちであることを悟られないための偽装でもあった。
その背負子を実際に使用する時期はユリアの予想より早まった。今年の飢饉という状況と、領主家の貴族を含む蝗害視察団に対してユリアが無礼打ちされても文句の言えない突出した行動をとったのが、家族に凶行を決断させる加速要因となったようだ。
サンガルス村の教会のスピノザ神父は、思いもしなかった状況の速い展開に、蝗害視察団団長のエドアルドから依頼された、ユリアを頼むという仕事を全うすることができなかったことを悔やんだ。
神父は、エドアルド宛に手紙を書き、ユリアが出奔したこと、はっきりした理由は不明なこと、足跡が追えず捜索のしようがないこと、および謝罪文などを綴って早馬便で送った。
((ふぅー。ついに時が来てしまったけど、計画通りにやるしかないね。))
少女は家族からも村からも逃げ出しましたね。これからどうするんでしょうね。あっ、次回は時間がちょっと2日ほど戻って有力者との出会いで自分を印象付けます。成り上がる道筋や最終到達点のビジョンができているんでしょうかね。それではまたお会いしましょう。




