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第5話 観測されない領域
ログ上、異常は存在する。
だが――中身がない。
「該当区間、内部データ取得不可です」
オペレーターの報告。
マアトは画面を確認する。
転送開始。
中間座標。
復帰。
構造は正常。
だが、中間のみ情報欠落。
「座標は存在してる?」
「はい。参照は可能です。ただし、内容がありません」
異常確定。
「破損ではないわね」
エンジニアが即答する。
「破損ならログ全体に影響が出ます。これは限定的です」
局所的欠落。
マアトは思考を整理する。
記録はある。
だが取得できていない。
「……観測できていない、か」
結論に近い言葉が口をつく。
「観測外領域の可能性は」
短い沈黙。
否定は出ない。
「設計上は存在しません」
エンジニアの回答。
だが現象は発生している。
矛盾。
マアトは判断を先に進める。
「該当プレイヤーの抽出できる?」
「可能ですが、時間を要します」
「他に手はないわ。全件対象」
「了解」
処理開始。
対象は複数。
増加傾向。
マアトはログに視線を戻す。
まだ確証はない。
だが、感覚が告げていた。
――これは、通常の不具合ではない。
第5話までお読みいただきありがとうございます。
見えていないはずのものが、
少しずつ観測され始めます。
その違和感が何を意味するのか、
引き続き追っていただければ嬉しいです。




