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第4話 再現しない条件

 同一現象の再現に失敗。


 運営チーム内で共有された結論は、それだけだった。


 転送時、ごく短時間だけ別座標へ遷移する異常。

 複数報告あり。


 ログは残る。

 だが、再現しない。


「再現率は?」


 マアトの問いに、オペレーターが即答する。


「極めて低いです。同条件でも発生しません」


「共通点は」


「断定不可。候補は複数ありますが、決定打なし」


 マアトは一瞬だけ思考を巡らせる。


 情報は揃っている。

 だが、繋がらない。


「演出の可能性は」


 エンジニアが首を振る。


「否定します。不安定すぎる」


 即断。


 つまり――想定外挙動。


「負荷状況」


「平常範囲内です」


 切り分け完了。


 どれも原因ではない。


「……転送処理中の座標干渉か」


 マアトの仮説に、エンジニアが応じる。


「可能性はあります。ただし、その場合は復帰できません」


 現象と矛盾する。


 成立しない。


 マアトは仮説を切り捨てる。


「ログを再精査。対象範囲は拡張」


「了解」


 指示は短く、即時反映される。


「報告数は増加傾向です」


 オペレーターの補足。


 緩やかだが、確実。


 マアトは一度だけ頷いた。


 結論は出ていない。


 だが判断は明確だった。


 ――見過ごせる規模ではない。

第4話までお読みいただきありがとうございます。


異常は確認されつつも、

その正体はまだ掴めていません。


断片的な情報が積み重なり、

違和感は少しずつ形を変えていきます。

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