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宣戦布告(2)






 一体あの講師は何がしたいの!?

 私は人目をはばからず、大騒ぎしたい気持ちを必死に抑えて廊下を歩いていた。


 あの入学式の日から一週間、私は初めて錬金術の講義を受けた。

 まことに残念ながら、先生はおじいちゃん先生ではなく、あの講師の男で。

 うん? それも正確じゃないか。

 メインはおじいちゃん先生だったけど助手や実習になるとあの講師の男にバトンタッチするらしい。

 ゲームでは実習もおじいちゃん先生だったので残念なことこの上ない。

 ゲームと同じで感じの良い、おちゃめなおじいちゃんだったのに。


「(それは残念、ほんとーに残念なんだけど、それ以上にさぁ!)」


 あの講師の男、私と関わりたくなさそうだったよね?!

 だってのに、その態度を一変、めちゃくちゃ絡んでくるんですけど!


 こ れ は 宣 戦 布 告 か 、 貴 様?


 と、一気に臨戦態勢に入りたかったが、場所は教室。

 おじいちゃん先生や他の受講者がいる場所。

 もうね、必死に表情を繕ってましたよ。

 だってのに、あの男。

 おかまいなしに絡んできてさ。

 ストレスが溜まることこの上なし。

 だいぶオブラートに包んでやり返したけど、腹の虫がおさまらないのだけれど!


「<腹が立つ! あれで講義内容がお粗末なら、鼻で笑ってやるのにぃ!>」

「<初心者にはやさしい講義内容だったもんなー>」


 そう、さらに腹立つことに初心者には凄くわかりやすい講義ないようだったのだ。

 座学は基本的におじいちゃん先生がするのだが、初回ということであの男が講義をした。

 シュティン先生に教わっている私はすでに知っている内容だったが、初心者にとっては満点の講義だったと思う。

 あれなら錬金術を嫌いになることは無いだろうし、錬金術を難しすぎると遠ざけることもないだろう。

 講師としての実力は高い……ということだ。

 全くもって認めたくないけど!


「<むしろシュティン先生は講師に向いてないって思ってしまった>」

「<はっ! あの野郎が先生向きなわけねーだろうが>」

「<相変わらず先生たちに対しては雑ねぇ>」


 それでもタンネルブルクさん達に対するように攻撃的ではないだけましだけどさ。

 あ、というか一番攻撃的なのがルビーン達に対してってのもどうかと思うけど。


 と、言うよそ事はともかくとして。


「<シュティン先生は完全に研究者タイプだからね。しかも本人が人間嫌いっぽいし>」

「<たいていのやつに無関心なだけじゃね?>」

「<そうともいうかな>」


 どちらかと言えば人嫌いな気もするけど、その対象に対して攻撃的にならない所、無関心ともいえるか。


「<それはともかく、あの男に講師としての実力がなければ完全に無視するのにぃ。現状それもできないなんて悲劇だ>」

「<あの調子だと今後も絡んできそうだしな>」


 お前がキレルのが先かもな? なんて軽く言われて頭痛がしてきた気がする。

 一応これでも令嬢の猫をかぶっているのだ。

 最低限家名を落とさないように。

 変人令嬢の悪名を負わないように。

 いや、もう遅いとか言わないで。

 社交界に出てないだけだから。

 ちょーと社交をさぼっていただけだから。

 友達もいないけど、それだけだから。

 家名に傷をつけるほどじゃないから。

 ……多分! 大丈夫!


「<言い返すのは簡単なんだけどさぁ。それで気やすい関係とか周囲に思われるのが嫌>」

「<ポンポンと軽口は叩くが処罰する様子は見られない……ってなるとなー>」

「<周囲からは気やすい仲、下手すれば懇意だと思われるわけ……やだなぁ>」


 根本的に関わり合いになりたくないのだ、あの講師とは。

 性格が合わない予感がする。

 多分だけど、あの講師、かなり性格がおよろしくない。

 あのエルフ達や『ヒロイン』、物語の聖女さま勇者さまとは別方向で本当の意味で性格が悪い。

 方向性的には私達と同じだけど、私よりも愉快犯的な要素が強い、気がする。

 あのタイプは気を付けないととんでもない方に舵を切りかねない。

 

「<ないとは思うけど、自分の命を軽視するタイプなら最悪なんだけど>」

「<あー、オマエの一番嫌いなタイプな>」


 そうそう、昔の君とかね。

 なんて事は口出さないけど、まぁ通じてそうだ。


「<自分の楽しみのためなら命なんて、なタイプかもしれない。だとすれば今のうちに離れたい。もう切実に>」

「<確定してからじゃおせーしな>」

「<そういう事>」


 私の嫌いなタイプだと分かった時にはすでに遅し、なんて展開は心底勘弁してほしい。

 そうならないためにもそうそうに距離を開けたいのだが。


「<そもそも、何故私に絡んでくるのかな?>」

「<何かが琴線に触れたんじゃね?>」

「<凄い迷惑!>」

「<オレに言われてもなー>」


 ほかに愚痴れる人がいないの!


 なんてむなしいことを公言できるはずもなく。

 私はクロイツの言葉をさらーと流して話を続ける。

 この程度いつものことだから彼もいちいち話を止めたりしないので楽だ。


「<できるだけ距離を取りつつ、相手の興味を引くことをこれ以上しない? なんか消極的過ぎて嫌だ>」

「<オマエらしくはねーな>」

「<だよね。じゃあこのまんま徹底抗戦?>」

「<懇意だと言われるの覚悟でか?>」

「<方法によるとは思うけど……>」


 ある程度は覚悟しないとだめだろうなぁ。

 あー全く。

 なんで一番楽しみな錬金術の講義でここまで悩まないといけないのか。

 そう考えると講師の男に対して腹が立ってくる。

 これを原動力に徹底的にやり込めてやる。


「<私に絡んだ事を後悔させてやる。私は体のいい娯楽じゃないんだから!>」

「<徹底的にやり込めてればそうなるんじゃね?>」


 そうなればいいなぁ。


「<今の所、まずしなきゃいけないのは、こうなった事をお兄様たちに知られないことだけどね!>」


 これから殿下達も一緒にランチだから余計に、ね。

 これはこれでどうしてこうなった、なんだけどねぇ。




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