『見るモノ』 其の六
さて、何でこんな事になったのだろう?
事の始まりは4日前・・・だろうか??
何時ものように公園を抜けて学校に向かう途中、その日は霧が出ていた。
最初は、私は髪や服の事ばかりを気にしていたので、遊歩道を外れ、林の方に行ってしまったのかと思った。
しかし、行けども行けども木、木、木・・・もう公園の中じゃなくて・・・そう、森の中。
でも、少なくとも学校までの道のりに森なんて無い。
そういえば、光の輪のようなモノをくぐった気がする。
まさか、それで異世界に!?って考えが浮かぶくらいにはその手の小説は読んでいたけど・・・
・・・森を彷徨って4日(多分)そろそろ、認めざるを得なくなった。
こんな森は、私の世界には無い。
時折さす木漏れ日が照らす森はとても神秘的で美しい。
出口が分からない事を除けば、ずっと居たいくらいだ。
危険な動物??は居ない(と思う。)し、この森で出会ったこの子が居る事も幸運だったと言えるだろう。
《ちか?おなかすいたの??》
「ううん?まだ大丈夫よ。」
「それよりも、この森の出口は何処かしら?」
《うんがよければ、であえるよ。》
言ってる事は良く分からないけど、お腹がすいたと言えば、ご飯(と言ってもキノコとか山菜)が出てくる。
姿を全く見せない恥ずかしがり屋の子。
・・・どうやら『妖精』らしい。
この子が居なければ、とっくに倒れていただろう。心が折れていただろう。
私はてくてくと森を歩く。
正直方向感覚なんて無い。
ただ、同じ所には来ないように、時々目印は置いてきた。
まあ、小石を重ねるだけだけど。
《あ、ニンゲンよ。ニンゲンがいるわ。》
《ひさしぶりのニンゲンよ。わたしといっしょにうたいましょう》
《ひさしぶりのニンゲンだわ。わたしといっしょにおどりましょう。》
この子以外の妖精は、時折姿を見せる。
姿を見せては、くるくると回りながら歌を歌い出す。
《らららら〜わになっておどりましょ〜う〜♪》
《みんなでいっしょにおどりましょ〜♪》
くるくるくる・・・くるくるくる・・・
その輪は私の近くを回った後、何処かに消えていった。
妖精と言えば、陽気でいたずらが好きなイメージがあるけど、陽気な方が目立って、いたずらされた試しはない。
・・・今の所だけど。
それにしても、一体何処に出口はあるのだろう?
向こうではもう、捜索願いとか出ているんだろうなぁ?
あ、そういえば、時間の概念って一緒かしら?
小説とかによくあるパターンだと、時間の流れが違くて・・・帰ったら浦島状態とか・・・嫌すぎる。
「ねえ?出口、何処にあるの?」
私はあの子に問いかける。
《うんがよければ、であえるよ。》
あの子の答えは同じ。
運がよければ会える?出口と??出口が移動するのかしら??
流石妖精の世界ね。
わたしはまた歩き出す。
てくてくてく、てくてくてく・・・
・・・
・・・
・・・
(む?見つけたぞ。加瀬千佳だな?)
今度は喋る猫が現れた。
もう、驚きはしない。すっかり慣れっこっだ。
(時間は・・・まだ1時間たっていないようだ。)
(私が此所に来てから・・・多分1時間以上は経っている筈だが・・・)
「猫さん?さっきから何の話??私の事を知っている様だけど??」
(ああ、すまない。ちょっと確認をしていただけだ。)
(私は、かのん。加瀬千佳。お前を元の世界に戻す為に此所に来た。)
私を元の世界に帰すために来た?
あの子の言っていた”うんがよければあえる”って言うのはこの猫の事なのかしら?
「ねぇ。うんがよければあえるってこの猫さんの事なの?」
《・・・ちがう。》
「え?違うの!?だって、この猫さんは、私を元の世界に帰すって、私の名前も知ってるし・・・」
《このねこさんは、やみのにおいがする。》
(・・・妖精か。如何にも私は夜魅の様なモノだが、加瀬千佳を救いに来たのは事実だ。)
どちらの言い分が正しいのだろう?分からない。分からないけど、あの子はここまで助けてくれた。
「猫さん。すみません。私は、この子と出口を探します。」
(それならば、私の持っている帰還の符を使ってからでもいいだろう?)
(それが駄目だったなら、私も一緒に出口を探そう。)
猫さんは食い下がる。
まあ、確かに・・・試すだけなら良いかもしれないけど・・・
なんでこの猫さんは、私を連れ戻すのだろう??
此所は妖精の国。居心地の良い国。
・・・違う。私は出口を探しているんだ。
なんだろう?この国にいた方が良い気になってきている。
(飲み込まれ始めているのか!?)
飲み込まれる?何の事?
《ちか。でぐちにはうんがよければであえる。》
《でも、でられるかはちかしだい。》
《ちかがわたしたちとおなじになれば、じゆうにでられるよ。》
《ちか。ようせいになろう?》
わたしがようせいになるの?
《そうだよ。ちか。ようせいになろう?》
ようせいになるの?
《そうだよ。ようせいになるの。》
ようせいに・・・なる・・・の?
《そうだよ。ようせいになって、ずっとこのくにでくらそう?》
このくにでくらす?
ここはようせいのくに。すごしやすいいいくに。うたいたくなったらうたい、おどりたくなったらおどる。
とっても、とーーーってもたのしいくに。
(まずいっ)
にゃーーーっと猫さんが私に飛びかかる。
ごつんっ
猫さんの頭と私の頭がごっつんこ。
・・・あれ?私の身長ってこんなに小さかったかしら?
違う!私は!!元の世界に帰るんだ!!
何故かこの国で暮らそうって思考になっていた。
おかしい。ここは・・・何かがおかしい。
(正気に戻ったか?)
(お前は危うく妖精にされるところだったんだぞ?)
(妖精になったら、もうこの国からは自由に出られない。)
「え・・・それじゃあ、身長が縮んだのも・・・」
(そうだ、妖精になり掛かっている。一刻も早く、元の世界に戻らなければならない。)
(元の世界に戻りさえすれば、身長も戻る。)
「ね、猫さん、早くその戻れる符ってヤツを使ってください!」
(うむ。)
《させない・・・ちかはここでくらすの。》
《わたしといっしょに・・・ず〜っとくらすの・・・》
「ずっとは無理よ。私は人間だもの。あなただって出口を探してくれていたんでしょう?私を元の世界に戻す手伝いをしてくれていたんでしょう?」
(いや・・・たぶんそれは・・・)
《ねこのせい。でぐちからわざととうざけて、ちかをようせいにしてしまおうとおもったのに。》
あの子は豹変する。
そして、森も豹変する。
神秘的で美しかった森は、不気味な魔の森へと変貌する。
きっと、これが本当のこの世界。
「猫さん早く!」
(うむ。帰還!)
・・・
・・・
・・・
何も起こらない。
(む?香奈のチカラが及ばないだと!?)
(コチラからだけでは駄目と言うことか。)
(加瀬千佳!兎に角逃げるぞ!)
「え、ええぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
私は走る猫さんを追いかけて、その場から逃げ出した。
・・・
・・・
・・・
《ぜったいににがさない・・・ちか・・・》
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基本的に1週間に1回の更新になります。
次回更新は 6月26日の14時30分頃になります。




