表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/51

エピローグ―記録の終わりに

ページを閉じる音が、酒場の喧噪に紛れて消える。

魔導書は静かに沈黙し、私はしばらく彼の背中を眺めていた。


桶の水に手を突っ込み、泡を散らし、皿を洗う。

それだけの行為。

勇者でも魔王でも救世主でもない、誰の記録にも残らないはずの時間。


けれど――私は記してしまう。


“モブ勇者、皿を洗う”


◇ ◇ ◇


観測局を離れたのは、偶然ではない。

役割を逸脱した因子を前に、ただ黙って消去することに疑問を抱いたから。

彼のような“在り方”が、本当に矛盾なのかどうか。

確かめたかった。


結果、世界は壊れかけ、初期化も崩壊もすり抜け――それでも続いている。

彼が「モブとして生きる」と言ったから。

その一言が、すべての観測記録を覆した。


私はそれを“記録不能”として片付けることもできた。

だが、今は違う。

ページにきちんと残している。


◇ ◇ ◇


「……あなたはおかしい人です」

思わず小さく呟く。


それは観測者としての冷たい感想のはずだった。

なのに、ほんのわずかに唇が緩むのを、自分でも気づいてしまった。


◇ ◇ ◇


魔導書の最後のページを閉じる。

観測者としての役割は、ここで終わり。

ただの少女として、この世界を歩いていく。


皿洗いモブと同じ舞台で。

物語に記されない余白のなかで。


◇ ◇ ◇


――記録終了。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ