デートの終わり
駅に着いて電車を降りる時も、駅の改札を出ても、ずっとお喋りが尽きることはなかった。2人の家は駅を出ると反対方向になるので、改札口の前でそのまま話し続けていた。『お喋りをやめてしまったら、この幸せな時間が終わってしまう』と感じていたのかもしれない。お喋りをしている間は、この時間が永遠に続く、そんな気がしていた。話が尽きてしまったら、いくら一緒にいたいと思っていても、『帰ろうか?』という空気が流れ出てしまう。
しかし、現実的にお喋りが永遠に続くことはなかった。そしていつしか話が尽きてしまった。
「今‥‥何時だろう」
と翔が口を開いた。
「今ね‥‥もう22時だ‥‥」
「あ、もうそんな時間なんだね‥‥そろそろ‥‥帰らないとだね」
「うん‥‥」
「とりあえず、リンちゃんの家に向かって、歩こうか?」
「えっ?カッくんの家と逆方向だよ?遠回りになっちゃうよ‥‥悪いよ‥‥」
「ううん、大丈夫だよ。それに暗いから心配だし‥‥送らせてほしい」
「うん‥‥じゃあ‥‥お言葉に甘えて‥‥」
2人は歩き出した。少し駅を離れると、ずっと閑静な住宅街が続く。2人の住んでいる街はいわゆるベッドタウンだ。日曜日の22時過ぎとなると、もう街は静まり返っている。靴が地面に擦れる音が、住宅街に微かに響いている。
先程までとは違い、お喋りを辞めた2人は静かに寄り添いながら歩いた。時折、顔を見合わせて、目を合わせて、軽くはにかんだような穏やかな笑顔をしながら、2人は鈴の家を目指した。
2人でいると、時間が過ぎる感覚は早く、その分家へ近づく感覚も早い。鈴は1人で歩いているととても長く感じるいつものこの道が、とても短い距離に感じていた。




