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すれ違い⑥

その熱い感情が、胸の当たりを中心に段々と体中に広がっていった。ゆっくりと、じんわりと広がっていく。とても穏やかで、とても心地の良い暖かさ。いつしかその感情は、頭の方へと広がっていく。その時だった。その熱い感情が何の感情なのかがわかった。

『愛してる』

2人の中で同時に溢れてきた感情だった。そして次々と『恋しい』『愛おしい』という感情が代わる代わる溢れ出てきた。とめどなく溢れてくる想い。好きという頭で考えた愛してるではなく、心から溢れてくる愛してるの想い。本当の愛してるという想いは、頭で考えたり、言葉で説明できるものではなく、無意識の領域から自然と溢れ出てくるものなのだと、2人は初めて理解した。これが本当に愛してるっていう感情なのだと。同じ時に同じ感情に気づいた2人だったが、さっきと変わらずに世界は静止したままだった。しかし、お互いの想いは溢れるばかりだ。翔は大きくなる想いに比例して、無意識にさらに鈴を強く抱き締めていた。鈴もそれに答えるように、翔を抱き締め返した。2人は無言で愛を伝え合い、愛を感じあっていた。とても長く感じた。時間にするとほんの数分だと思うのだが、2人の感覚では1時間も2時間も抱き合ったままでいるように感じた。

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