表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新星機動のアサルトフレーム―タケミカヅチ・クロニクル―  作者: 河原 机宏
第1章 白いアサルトフレーム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/88

水中からの脅威

 <タケミカヅチ>にはアマツ部隊用に開発されたマシンガンを持たせてある。アサルトライフルよりも連射性に優れていて遠距離攻撃力が上昇している。

 

 照準が敵をロックオンし引き金を引くとD(ディバイン)粒子の無数の弾丸が発射され、一瞬で<グール>のDフィールドを破壊し機体を蜂の巣にしてしまう。


「凄い威力だ。これがアマツ部隊用に開発された武器の威力なのか……」


 サルベージャーが手に入れられる武器とは段違いの性能だ。これだけでも戦闘を専門的に行う軍とサルベージャーの戦力の差が分かる。

 僕はその戦闘専門の世界に足を踏み入れたんだ。


 左翼の<ツクヨミ>はサブマシンガンとニードルバレットで向かって左側にいる敵機を撃破していく。

 右翼の<スサノオ>が装備しているレールガンは電磁力で加速させた実弾を発射するライフルだ。マシンガン系と違って連射効率は落ちるが一発の威力が高く一撃で<グール>を仕留めていく。

 それにレールガンは水中でも威力が損なわれない。今回の<スサノオ>の装備からしてデューイさんは状況次第では海中で戦うつもりのようだ。


『敵機コックピット内に生体反応無し。無人機ですねぇ。――それとセンサー範囲内にも生体反応はありませんでした。恐らく生存者はいないものかと……』


 ルーンが声のトーンを低くして残酷な状況の報告をする。この港町には沢山の船があったので多くの人が住んでいたはずだ。

 それが――。


『ルーンは<タケミカヅチ>の援護をしつつ生体センサーで生存者がいないか都度確認してくれ。私は陸上の敵があらかた片付いたら海に入る。さっき対空ミサイルをお見舞いしてくれた奴の正体を突き止めなければならないからな』


『了解です』


 <グール>は<ゴブリン>などに比べれば性能は高いかもしれないがアマツシリーズの敵ではなかった。

 戦闘は一方的な展開で進み敵機は残り数体にまで減っていた。だがどうもおかしい。今回は腑に落ちない点があり気持ち悪い感じがする。


 この<グール>の集団は何処から来たのか。さっきの対空ミサイルを放ってきたのはどんな相手なのか。

 この疑問を明らかにする為にはデューイさんの言うように海中に入るしかない。


 そんなことを考えていると<グール>の動きがおかしい事に気が付く。積極的に攻撃をしてこずに街の中心部の辺りをうろうろしている。

 

「敵の動きが変じゃないですか? まるで僕たちを誘っているように見えます」


『そういや最初はキャノンやミサイルを容赦なく撃っていたくせにさっきから積極的に攻撃してこねーな。怖じ気づいたんじゃないのか?』


『相手は無人機だ。恐怖心など持ち合わせてはいない。――ちょっと待て!』


 デューイさんが何かに気が付いたのかモニターでチェックすると『オキノミ』のマップデータを送ってきた。

 このマップによると街の中心部には海に続く大きな川が流れていて<グール>はさっきからこの周辺を動き回っている。

 この動きはもしかして――!


『全機河川から離れろ! 敵の増援が出てくるぞ!!』


 デューイさんが大声で命令を出し僕たちが川から距離を取った直後、大量のミサイルが河川から発射されてさっきまで僕たちがいたエリアに着弾すると大爆発を起こした。


「――対地ミサイル!? 何て数だ!」


 一瞬で河川の周囲は焼け野原となり燃え上がる。その炎の中に次々と川から異形の人型が出てきた。

 普通の人型とは異なり全体的に丸みを帯びたずんぐりむっくりしたフォルムの青黒い色の重装甲のA(アサルト)F(フレーム)だ。

 ヘルメットのような頭部も丸い形でメインカメラも黄色い丸形のものだった。そんな全体的に丸みがある中で両腕の先端だけは鋭い五本爪で凶暴さが目立つ。


『あれは……データ照合……解析終了。型式番号MT―023<アーヴァンク>、水陸両用の量産型AFです。それが二十機以上いますねぇ。さっきまでレーダーには反応がなかったのにどうやってここまで入ってきたんでしょうか?』


 <ツクヨミ>は電子戦に特化していてレーダーなどの索敵能力は<タケミカヅチ>よりもずっと高い。

 その性能であればこれだけの敵の反応を逃すことは無いはずだ。そうなると考えられるのは――。


「<アーヴァンク>は多分僕たちが『オキノミ』に到着する前から川の中に潜伏していたんだと思います。その間ご丁寧に動力を停止させてレーダーに映らないようにしていたんでしょう」


『だから突然現れたように見えたってことかよ。けど、あの機体も無人なんだろ? そんなのがこんな戦術を自分で出来るもんなのか?』


 バルトの言う通りだ。無人機がエンジンを停止させて待ち伏せするなんて芸当できるのだろうか? 

 でも水中で動いていたら<ツクヨミ>の索敵に引っかかっていたのも事実だ。

 議論しているとデューイさんが一つの結論に至った。


『無人機のAIだけならばリアクターを止めて待ち伏せする等という戦術は不可能なはずだ。――だが、ここにAI化した人間がいたのなら話は別だ。そいつが命令を出していたのなら柔軟な作戦も可能だろう』

 

『ってことはこの近くにジェノバみたいなAI人間がいるってことかよ!』


 各種センサーで探してみるがAI化した人間が動かしているAFもまた生体反応がないのでどの機体に潜伏しているのか分からない。

 そいつを倒せれば敵部隊の連携を崩して戦いが楽になると思うのだがそれも難しいみたいだ。

 そう思っていた矢先、<アーヴァンク>の集団の中に一機だけ違う機体がいた。

 あれってもしかして――。


『どうやらこいつらを統率している奴が判明したようだな。型式番号MT―024<ディープワン>――水陸両用の高性能AFだ。<アーヴァンク>よりも性能は段違いに高い。まさかこうして最前線に姿を現すとはな。あれの中身は目立ちたがり屋らしい』


 案外あっさりと敵の指揮官の位置が判明したのでデューイさんは呆れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ