二つの道
りなは一瞬、躊躇したがすぐに気を取り直してインターホンを取りに向かった。
「はい。」
『……話せていなかった……今……』
「別に入って来て。」
インターフォン越しでいまいち全部は聞こえなかったが、誰か部屋に入ってくるらしい。
りなの雰囲気がインターフォンに出てから変わったところを見て、私も緊張感が高まった。
「トットットットットッ」
廊下からこちらに歩いてくる音が聞こえてくる。
足音から様々な事を推察する。
一人で来ているようだが、足取りは重く感じる。
「リナ、ごめん、どうしても……」
扉を開けて現れたのはアーイシャだった。
お互いの存在に驚き、一瞬空気が止まった。
アーイシャは途中で返事を止め、私の事をまんまるな目で見て、私はアーイシャが依然と全く違ったしおらしい雰囲気に目を見張った。
「アーイシャ、別にいいよ、もう気にしてないし。」
りなは圧力をかける様にアーイシャに話しかけた。
「それよりもりな、どうしてここに……」
「なに、アーイシャ。」
「どうしてここに……」
「アーイシャ。ここには私達二人しかいないよね。」
みゆは先ほどまでの勢いを取り戻したかのように話しかけた。
私の心が沈んでいくことを感じた。
二対一になるこの局面で私が何を言っても無駄だろう、今は耐えようと心に決めた。
「アーイシャ。」
「なに?」
「……あのさ……らしくないんじゃない。」
「は?」
りなはアーイシャを睨みつけた。その目は憎しみよりも悲しみをたたえているように思えた。
「怒らせたよね、ごめん。」
「別に怒ってないけど、いきなりどうしたのかと思ってさ。」
「いきなりじゃないよ。ずっと思っていたけど言えなくて。」
「……」
「この子を見えない振りするなんて、そんな事らしくないよ。」
アーイシャの言葉に驚いたのは私だけでなかった。




