失敗、したかも
傲慢な物言いと、そしてその怪人物こそが、一番の“敵”だといった自己紹介にマリンが、
「わざわざ敵のボス本人が動くなんて、予想外ですわ。そんなに人手不足なのですね」
「ええそうです、と言いたい所ですが……実際の戦力を様子見したかった、というのもあります。どうも、私にとって危険な人物がいるように感じるのですよね。もっとも、貴方方と最初に出会ったあの村に張った罠すら見抜けず、しかも簡単に誘導されてしまうとは思いませんでした。おかげで容易に一網打尽にできましたがね」
そう肩をすくめるその怪人物。
確かに先手を打たれ、しかも仲間の中に裏切り者がいるという状況になったのは事実だ。
そしてほかの人達よりも防御の能力が異様に高いのも……彼が、“あれ”だからなのだろう。
そこでマリンが周りを見回して、
「まだあの“蛇の果実”を埋め込まれた者たちはここにきてはいないようね。……集まってくる前にあいつを倒さないと」
そういった呟きを漏らすマリンにここでようやく僕は近づいた。
魔法の攻撃の邪魔をしてはよくないと思ったので少し離れていたけれど、そこで僕に気づいたらしいマリンが、
「いきなり懐に潜り込むとは……なんて危険なことをするの?」
「いえ、何か手掛かりでもえられればと。母さんを石にしたのはあいつですから」
「……子供にしては行動力がありすぎるわね」
マリンがぽつりとそうこぼした。
僕はぎくりとしたが今はそれどころではないので、それ以上聞かれない。
それにこれ以上何かを聞かれても嫌だったので僕はそれを予防するように、
「ですが、どんなものでも跳ね返せるとはいえ、強い力でたたけば何とかなるのでは」
「……どんなに防御が固くとも強い力で殴ればなんとかなるか? あと必要なのは“魔力”と“根性”といった所? ……それしかないか」
マリンがそう呟き、クラリスも頷く。
アリサはそこで、
「いい、全力出していい? 私の一番強い魔法! 使っていい?」
「今がその機会よ。……そちらの二人も、いいかしら」
マリンが僕達にも聞くので頷く。
でも僕の使える最高魔法は……どのあたりを設定したらいいのだろう?
とりあえずそこそこ強い魔法を一発撃ちこんで、もう一度、といった形にすればいいと考える。
そこで呪文を唱えて、
「「“雷花の槍”」」
「“紅蓮の涙”」
「“氷の矢”」
「“大地の針山”」
といった形になる。
マリンとクラリスは雷系、そしてアリサは炎、リリルは氷の攻撃、そして僕はその怪人物が逃げられないように大地系の技を使う。
それらに対してまだその怪人物は余裕のように見える。
この程度の連続攻撃はどうとでもなると思っているのか?
いくつもの球になった雷が降り注ぎ、炎がまるで花を描くように郁恵にもまれた状態で降り注ぐ。
そして地面からは鋭い岩がせり出す。
「なんだこの程度……」
怪人物がそれらをすべて、紙でも振り払うかのように粉々に消し去る。
だがすぐにぎょっとしたようにそれを見た。
その視線の先には大量の大きな氷の槍が宙に浮かんでいて、リリルが一言呟く。
「失敗、したかも」
焦ったような怪人物が、防御しようとしている光景が、僕の目に映ったのだった。




