ここで待つように
火柱が上がる、それが目で見て確認でき、音すらも聞こえた。
村がすでに見えていたからこの程度は見えて当然なのかもしれない。
悲鳴のようなものが微かに聞こえる。
馬車の速度が加速した。
村に急いで向かうらしい。
揺れは大きくなっているが、ふる落とされるほどの物ではない。
やがて、静まり返った村の入り口にやって来た。
母が小さく呟く。
「……ここ、そこそこ人が住んでいたはずだけれど……それに今の時間は畑に出たりして野菜の様子を見たりするはず。だから誰かがここに歩いていてもおかしくないけれど……戦闘になっていそうなのに誰も出てこないのはおかしいわ」
そう呟くのを聞きながら僕も不安をあおられる。
今までとは違う、危険な状況が目の前に迫っているのではないのか?
穏やかなぬるま湯のような日常の中でしかまだ……倒せるような“敵”としか遭遇していない。
いわば日常生活で“動物”と遭遇した戦ってしまう程度の物だ。
初めての経験と予感に僕が不安を覚えているとそこで母が、
「タクヤとリリルはここで少し待っていなさい。私と、夫で様子を見に行ってきます」
その言葉に僕は妙な胸騒ぎを覚える。
何か起こってしまうのではないか、と。
そんな僕の頭を撫でてから母は、
「大丈夫よ、私達は強いから。私達とマリンさんで様子を見てくる、それですぐに戻ってくるから安心していないさい。ただ……もしも私達が30分たっても戻って来なかったら、すぐにここから離れるように。そして村に戻って、都市なり町なりに連絡を取るように」
僕にそう言っていく。
マリンの方も、アリサにそう言い聞かせている。
でもいつもと違うこの言葉は、母たちなりに異常を感じ取っているのかもしれない。
そう僕は思いつつ、その時は大人しく従うことにした。
理由は今朝の母たちの様子やマリンもいるし、そもそも杞憂であるかもしれない、そう考えたかったからだ。
もしかしたらそう思いたかったのかもしれない。
なんとなく感じていた得体のしれない恐怖を僕は、後になって考えてみると思い当たる。
僕達は今危険な状況にいる。
そして、それらを見送るとアリサが、
「相変わらず子供扱いで嫌になるわ。こう見えても、私だって戦えるし。タクヤもそうでしょう?」
「それはそうですが、でもマリンさん達の方が“経験”も積んでいますし……」
「それでも私達は十分な戦力になると思うのよね」
嘆くようにアリサが僕達に愚痴り始める。
まだ子供だからか、と思うようなもっと自分を認めてというようなそんな話を聞きながら僕は、やけにリリルが熱心に話を聞いていると気づく。
珍しいと思っているとそこでリリルが目を輝かせながら、
「アリサにお願いがあります。ぜひ、私に魔法を教えてください。私だって戦えたり色々出来る能力が欲しいのです!」
「ま、まあ同い年のよしみだし、少しくらいなら教えてあげてもいいわ」
「ありがとうございます!」
そう言った話をして、即席でちょっとは戦えるような魔法を、リリルはアリサから教えてもらうことになったのだった。




