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九話

HR終わりに華に呼び出され、廊下に出る俺。

前を歩く華についていくが、ある華の言葉の部分が気になっていた。

(あの華が、俺に「すいません」と言った?)

俺は幼稚園時代から華を知っているが、すいませんと言われたことは二度しかない。そしてその全てが、変な仕事を押し付けられたときだった。

(ってことは、今回も・・・。)

なるべく人がいないところ、廊下の角に行く俺ら。そこには、

「あ、華ちゃん!ごめんね迷惑かけて・・・。」

栞羽 桜がいた。

「では、私の方から栞羽さんの言葉を述べさせていただきます。えー、つまり栞羽さんは、明日行われるSKC大会に出たいそうなのです。目的は準優勝の時にもらえる、「北海道五泊六日のペアチケット」。実をいうと、栞羽さんの祖父母が来週銀婚式になるそうで、栞羽さんとしてはなにかプレゼントをしてあげたいところなんだそうです。祖父母は北海道に一回行ってみたいと言っていたので、北海道のペアチケットをなんとかしてあげたい所。しかし、栞羽さんの貯金はそれを買うお金などありません。・・・ですが、北海道ペアチケットを手に入れられる方法がひとつだけあるのです。・・・それが、このSKC大会に出て、準優勝するということなのです。」

ぶっちゃけ何を言っているのかは全く以って不明だが、これだけは分かった。

「・・・優しいんだな、栞羽。」

小遣い目当てに祖父母の家に行く俺とは大違いだ。

「で?俺は何のようで呼び出されたんだ?栞羽の応援団でも作ればいいのか?」

ぶっちゃけ、そんなん作ろうと思えば五秒で1000人程度の栞羽応援団作れるぞ。

「ああ、なんでこんなに理解が遅いんでしょうか・・・。」

「ごめんな、理解が遅くて。」

「開き直るのは男として感心できない態度ですね。」

「まぁ、そんなことはどうでも良いんだ。で、俺はどうすれば?」

「はぁ・・・。つまり、あなたが栞羽さんとタッグを組み、SKC大会に出ればいいのですよ。」

そういい、華は栞羽の方をむく。

「ほら、栞羽さんもちゃんと頼みなさい。」

「神置くん、お願いします!あなただけが頼りなんです・・・。」

「勿論良いに決まってるよ。」

即答。一秒のタイムラグもはさまずに。・・・だって考えてみろよ。学校一の美少女に、「あなただけが頼りなんです!」と言われたんだぜ?・・・即答肯定、当たり前だろ?しかも、俺は校長に頼まれた仕事もパートナーは栞羽でいいため、こなせる。一石二鳥じゃねぇか!

・・・え、でもさ、

「俺を選んでくれたのは光栄だけど、俺以外に候補はいなかったわけ?」

「栞羽さんは、あまり男の知り合いが多くないんですよ。・・・同性でも良いのなら、他に候補もあったんですけどね。」

「ふーん。じゃぁ、明日、SKC大会の会場で待ってるからな。」

「いや、ちょっと待ってください。」

華に呼び止められる。

「なんだ?」

「いや、商品が北海道チケットだけである以上、あなたはこの大会でなにも手に入らないはずです。・・・あなたは、商品としてなにがほしいのですか?私にできることなら、何でもしますが。」

「何でも、だと・・・!」

何でも。たった三文字と侮る事なかれ。その三文字の中には、男達の夢とロマンが詰まっているのだ。・・・具体的に言うと、R20みたいなことでも何でもの範疇にふくまれる。・・・でも、まぁ、

「いらないよ。何にも。」

その商品であるなんかも、栞羽が自分のために使うのではなく祖父母にプレゼントするために欲しいと言っているのだ。たとえると、風船をえだにひっかけて泣いている男の子に近寄った女の子が、近くにいた俺みたいなジェントルメンに「すみません。あの風船を取ってもらえませんか。」と言っているのと同じ。そんなことと引き換えに対価を要求する奴などいないはずだ。

「・・・そうですか。意外と神置くんは優しいのですね。」

「ありがとう、神置くん。優しいね。・・・明日はがんばって勝とうね!」

そんな満面の笑みを浮かべた栞羽は本当に可愛く、「君の笑顔がおれにとっての対価さ。」というところだった。

・・・あれ?俺、なんか忘れているような・・・。まぁ、いっか!


結論から先に言うと。

校長から頼まれていたこと、俺は完璧に忘れていた。

         *

「ってことだ、ロウキュピテス。」

「・・・なるほど。ゆーまは女の笑顔に弱いんだね。」

「嫌な捕らえ方だな!」

まぁ、そんなことより。

「あした、マジで頼むぞ、ロウキュピテス。絶対に準優勝取るからな。」

「わかったって・・・。でも、私戦えるかなぁ・・・。」

「だいじょーぶ、俺が(異端審議会から貰いうけた暗器で)しっかり(相手を殺す)サポートしてやるからな。」

大丈夫。俺らは、男子のほうをきちんとヤればいいんだ。

「それにしても、栞羽って言う人、大丈夫かなぁ・・・。」

「大丈夫だろ。干渉能力で、LDも100だって。やべぇよなぁ。」

「いや、そっちじゃなくて。数ある男子の中から、なんでゆーまを選んだのかなぁ。顔もいいわけじゃない、成績もいいわけじゃない、性格もいいわけじゃないゆーまを。」

どうやら、俺は使徒にすら馬鹿にされているようだ。

「知らん。・・・あ、栞羽はまともな人間だぞ。可愛いし、性格良いし、スタイル良いし、成績良いし。」

「なるほど。ゆーまの対極に位置する人間なんだね。」

俺は俺が可哀そうだった。

そんな雑談をしながら、夜が更けていく。

         *

 くだらない初出の授業が終わった。

「ははははぁぁぁぁ!!!!残念だな、貴様ら。もうこれで俺の授業は終わる我が教えをもっと聞きたいというのはわかっているが、そこは我慢せよ。この、学校と言う管理された社会から、飛び立つのはまだ早い。では、さらば!!」

「・・・なぁ、いつも思うんだが、初出ってドラッグ決めてるよな?」

「自宅で大麻栽培しているらしいぞ。」

そう初出の悪口を思う存分言いながら、俺は帰宅する。

「じゃぁ、今日の帰りの話題は、ロリータコンプレックスはなぜ社会に認められないか、で。」

「ねぇ、ゆーま。」

「まぁ、ロリコンは認められなくて当然だろ。」

「なんでだよ。」

「ねぇ、ゆーまったら。」

「いや、もちろんある程度のロリコンは許されるべきだ。12歳からの少女を恋愛対象に見るのは、許容されてしかるべきだと・・・。」

「ゆーま。ねぇ、SKC大会のこと忘れてない?」

「いや、十二歳だと少し若すぎやしねぇか?せめて許容範囲は13歳くらいだと・・・・・・あ。」

今、4時。大会開始時刻、四時十分。俺は駆けた。

「おい、神置、お前どこ行くんだ!」

「まさかロリコンの話をしていたから、その胸に隠されたロリコンの魂に火がつき、幼女をハンティングしに行こうとしているのか?!」

「幼女ハンター神置か・・・。もうこれあいつの名前でよくね?」

後ろの馬鹿どもが何か騒いでいるが、知ったこっちゃねぇ!俺は今、栞羽の軽蔑を得るか得ないかの瀬戸際なんだ!!

「嗚呼、神置は幼女を求め、今も走る。」

・・・あいつら、明日あったら殺してやる。

そんな思いを胸に抱き、俺は走った。そして、

「やべ、まにあったぁ!!!」

そう開催している俺の横で、ロウキュピテスと栞羽が自己紹介してる。栞羽の方を見ていると、栞羽はこちらへトテトテと来て、

「ねぇこれを見て。」

と、パンフレットを広げた。パンフレットが小さいので、二人で見ようとすると体同士がやけに密着する。栞羽の頬が俺の頬に当たり、俺の心臓のビートはガンガンいってやがる。

「初戦から、3年のチームとだよ。・・・しかも、このチーム前年度の三位だって・・・。」

「大丈夫だって。栞羽、自分の実力を信じろよ。俺はこの、男のほうを倒す。」

「・・・わかったよ。ありがとう、神置くん。・・・ちょっと、手を出して。」

「?ああ、別にいいけど・・・。」

するとそこに栞羽の手がやさしく当たった。

「これで大丈夫。勝てるよ。ロウちゃんもやる?」

「うん!」

そういい、ハイタッチをする二人。

「大丈夫、俺らは勝てるって。・・・ロウキュピテス、頼むぞ。」

「うん、大丈夫。」

「それでは、第三試合、第三学年選手、チーム名スペルズの志保 あかりさんと漆原 一さん、第二学年選手、チーム名ランク4の栞羽 桜さんと神置 悠真さんの試合を行いたいと思います。」

スピーカーが、そう告げる。俺らのチーム名はランク4。その名のとおり、ランク4以上がいますよ、というご親切にもSPのランクを教えてあげている名前だ。

「よし、いくぞ!俺たちは、強い!」

「「オーッ!」」

某バスケ漫画の真似をして、試合が、始まった。


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