十話
準優勝には北海道チケットを授与と言うだけあって、その大会は決して小さくない。まぁ、大きくも無いが。何でこんな早い時期にSP大会をやるのかと言うと、高3の奴らはもう大学受験に向けての勉強をしているため、下手な時期にやると受験勉強の邪魔になるためだ。だから、高2は少ししかSPの訓練をしていないため不利ではないかと思うがそうではなく、高1の時点でSPの訓練はし終わっているため、あまり大きな差でないのだ。・・・それより・・・。
「なんと、志保 あかりさんと漆原 一さんはどちらとも呪文能力という脅威の力の持ち主!これは凄い!」
オーッというどよめきが上がる。そのほとんどが、すでにSPを持っている高2や高3であった。呪文能力はだいたい、500分の1くらいの確立だった。どよめきが上がるのも当然だろう。・・・それにしても、観客が結構多い。千人くらいだろうか。みんな、暇しているんだろう。
「そして、いわずと知れた学校のアイドル、栞羽 桜さんとゴミ高校生、神置 悠真さん!あの栞羽さんと組んだぐらいですからどれほどにイケメンなのかと思っていましたが、はっきりいって不細工です!なんで栞羽さんはこんな奴と組んだんでしょうか!」
・・・俺は司会にずいぶん嫌われているようだ。そしてあがる悲鳴。
「「「「「「「神置ぇぇぇぇぇぇぇ!!!キサマ、裏切りやがったなぁ!!」」」」」」」
・・・俺は生きてかえれるのだろうか。非常に心配である。
野次を防ぐため、観客席とフィールドにはバリアが張られているはずだが、殺気は防げないようで俺にびしびしと殺気が伝わってきた。少し観客席のほうを見ると、般若と化した異端審議会の連中が、白目をむいて俺のほうをガン見していた。怖ぇ。
「さて、その二人のSPはというと・・・!」
一瞬、沈黙が訪れる。
「栞羽 桜さんは干渉能力、神置 悠真さんは使徒能力!!これは凄い!凄すぎる!流石、チーム名にランク4と入れるわけだぁ!」
ギャーッともワーッともつかぬ歓声が響き渡る。・・・まぁ、それは当然のことだ。干渉能力は10万分の1、使徒能力にいたっては100万分の1である。第一、この学年にランク4以上が四人もいる時点で、かなりおかしいのだ。
「せ、静粛にお願いします!」
司会が叫ぶが、喧騒はやまない。
「やべぇ、使徒を生で見るの初めてだ・・・。」
「干渉ってどんなことできるんだろう・・・?」
「とにかく神置を殺したい。」 エトセトラ・・・
「じゃぁ、レディ・ファイト!」
司会がやけくそになって叫ぶ。
とにかく、試合は始まった。
*
最初の三十秒は隠れたりするだけで、攻撃したりはできないことになっている。
フィールドはでこぼこになっており、基本的な戦い方としてはそこに隠れながら戦うのが定石だ。俺らも一端底に隠れる。あと、言うのを忘れていたがどちらかはフードをかぶりながら戦わなければならない。これはどちらがどっちかをわかりやすくするためで、これは女の方に着装が義務付けられている。俺らのチームは赤のフードで、相手は青のフード・・・
「って危なぁぁぁ!!!」
いきなり、脇を炎の渦が通り抜けてゆく。痛覚は開放されていないため何も感じなかったが、冷や汗がバッと出る。
「君の相手は僕だよ。」
「漆原か・・・!卑怯なだまし討ちなぞ仕掛けてきやがって!」
「おいおい、これは戦いだよ?だまし討ちなんて存在しないね。・・・ってか、神置、いい加減使徒出したら?このままじゃジリ貧になるよ?」
「ハハッ。・・・馬鹿だなぁ。使徒を出さないほど俺は優しくもなんとも無いんだ。」
「は?じゃぁ、どこにいんの?」
「まぁ、お前の後ろらへんに?」
漆原がバッと振り向く。しかしそこには何もおらず、
「残念?」
といって、俺は漆原に組み付いた。その技の名前は・・・
「チ・・・ショ・・・・・裸・締・・め・・か!」
・・・そう。誰も、SPで決着をつけろなんてことはいってない。ならば、体術でもいいはずだ。相手のHPはかなり減っているだろう。電光掲示板を見ると、相手のHPは70のうち21まで減っていた。
「クソォ!・・・炎武神よ、吾の身に纏わりつく蟲を清め祓」
「?!マジか?!」
SPによる攻撃は痛覚が消えるが物理による攻撃は痛覚が開放される。おいおい、裸締めを食らって話せるとか、こいつ・・・!
やはり三年と二年と言う体力の差がモロに出たのか、首と俺の腕の隙間を腕力で空け、スペルを言おうとする漆原。残念ながらそれは間に合わないように見えたが、
「うべし、聖浄・・・。」
おそらく漆原の出せる最強の技が俺を襲う。勿論俺は漆原に密着していたためよけることができず死亡し、しかし漆原も俺の裸締めにより気絶したためHPが尽きたようで死亡した。・・・まぁ、死亡したとはいってもその場にとどまれるけど。
「いや漆原、俺の裸締めを避けてスペルを言うとは流石だね。」
「・・いや、そっちもまさか裸締めをかけてくるとはおもわなかったなぁ。」
ちなみに今、俺らは痛覚が解放されているため助けに行きたくても行けない。
「というか、神置。言っておくけどさぁ。」
「何?」
「俺らのチーム、前年度三位だったじゃんかぁ。」
「ああ、そうみたいだなぁ。」
「そのとき、俺は出場しただけで一切何もしてないからな。」
「・・・は?つまり、あいつは一人で二人と戦って、三位を取ったと言うことか?」
「うん。あかりはね、多分僕の十倍くらい強いと思うよ。」
「・・・・・・・・・は?」
すると青のフード、志保が何かつぶやいた。全く聞こえなかったが、なんとなく唇の動きで何の技を出すか読めた。
「・・・古の碑文よ、今現実と化す。 流星。」
夜空がきらりと光った。
「危ない、避けろ
爆発音がした。
「・・アレこそがあかりの最強の技、流星。・・・死亡したのは確実だね。・・・いや、よくあかりにアレを出させたね。よほどあかりを追い詰めないとあの技はでないはずなのに・・・。」
志保は、大歓声の中、観客に手を振りながら颯爽とこちらへ向かってきた。
「よかった、一・・・。相手も中々強かったんだけど、まぁ勝ったよ。」
「ああ、流石だ、あかり。」
そういい、肩をたたきあう二人。俺はそーっとその場を離れた。
そして、合図に指をぱちんと鳴らす。その音はやけに会場に響いて、
「地獄の焔、インフェルノ。」
肩を叩き合っていた二人は一瞬にして燃え尽きた。
「ギャァァァァァァァァァァァl!!!!!」
漆原はのたうちまわっている。まぁ、それもそうだろう。なんせ、栞羽のインフェルノを痛覚開放状態でまともに受けたのだから!
「え・・・。なんで・・・・・・?」
志保が言う。いつのまにか、会場全体がシーンとしていた。
「まぁ、これが戦術って奴?・・・おーい、栞羽、出てきて良いぞ。」
すると、栞羽がでこぼこから出てきた。
「!!!???いつのまに、そんなところに!っていうか、あなたさっき私が倒したじゃない!ほら、あそこに倒れていた・・・・・・・・・・・・あれ?なんで、あなたがあそこに倒れているのにあなたがここにいるの・・・?」
ヒステリックに志保がわめく。
「は?栞羽は戦闘開始から今までずっとでこぼこに身をひそめていたけど・・・。」
「そんなわけ無いでしょ!じゃぁ、あそこに倒れている私が倒した敵は・・・。」
「電光掲示板を見てみろよ。」
観客と漆原、志保が一気に電光掲示板を見る。そこには、
青チーム スペルズ
志保 あかり HP 0 (DEAD)
漆原 一 HP 0 (DEAD)
赤チーム ランク4
栞羽 桜 HP 103
神置 悠真 HP 0 (DEAD)
ロウキュピテス(使徒)HP 8500
「「あ・・・・・・。」
志保と漆原がようやく判ったみたいな顔をする。
「そうだ。お前らはなぁ、栞羽を狙っているつもりだったのかもしれないが、実際に狙っていたのは俺の使徒、ロウキュピテス。そしてそれゆえ、お前らがロウキュピテスを倒し、俺とロウキュピテスは死んでも(ロウキュピテスは死んでないけど)、栞羽は生き残っているため、戦闘は続行しているんだ。そしてお前、志保は勝ったと勘違いし、栞羽の攻撃を受けて死亡したんだ。・・・ちなみに、ロウキュピテスの動きにあわせて栞羽が干渉能力を使っていた。だからお前らは、あのフードをかぶっているやつは栞羽だと勘違いしていたんだ。あと、もっと言っておくと、ロウキュピテスは使徒だから、HPが最初は一万程度あったらしいぞ。」
「んな、馬鹿な・・・。」
「私達が、よりによって一年坊主に、初回で負けるなんて・・・。」
やっと、司会者のほうも衝撃から立ち直ったらしく、
「勝者は、ランク4の神置 悠真さんと栞羽 桜さんです!おめでとうございます!」
と、いった。
「やったね、神置くん!」
そういい、栞羽は朗らかな笑みを見せた。




