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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第一章
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第七話:「だ、大丈夫ですか?」

 ギルドを出ると、外はもう夕暮れだった。

 いつの間にそんなに時間が経ったのかと思ったが、細かい事は気にしないでおく。

 さて、今夜はどうするか。

 野宿でも良いのだが、やはり元日本人としては布団が恋しい。

 だが、報酬があるとは言え、手持ちが寂しいのもまた事実である。

 仕方ない。背に腹は代えられないが、ここは涙を呑んで———、宿に泊まるとしよう。

 ……日本人だもの、しょうがないよね。

 という訳で、一旦ギルドに引き返す。

 (安い)宿の場所を教えてもらうためである。



 ==================



「そういう事でしたら、大通りを出て少し行った所に、良い宿がありますよ。見た目はちょっとあれですが、内装や料理はきちっとしてますし」


 受付の彼女はそう教えてくれた。

 お礼を言ってギルドを出ると、教えてもらった宿屋を捜す。

 近くまで行けばすぐに分かると言われたのだが……、あった。

 あったのだが、酷い。相当に酷い。

 何が酷いって、その外装だ。

 建物は老朽化して、今にも崩れそうな程だ。寝ている間に倒壊したらどうするんだ。

 おまけに看板は剥がれかけ、名前が読めないくらいに汚れている。

 野宿の方がマシなんじゃないかと思えてきた。

 あの人のセンスは大丈夫なんだろうか。

 まぁ、ここは腹を括ろう。

 僕は覚悟を決めて、扉を叩く。

 ……返事が無い、ただの廃墟のようだ。

 人の気配が感じられない。本当に宿屋かと疑うレベルだ。


 さて、別の宿を探すか。

 そう判断し、踵を返す。

 と。

 ドン、と、僕の身体が何かに当たった。少しよろける。


「ん?」

「きゃっ」


 こんな所に壁なんてあっただろうかと考えるが、それが当たった感覚は、僕の胸辺りまでしかなかった。

 第一、壁ならこんな可愛い悲鳴を上げたりしない。

 そう思って視線を下げると、


「うぅ〜、痛いです〜」


 一〇歳くらいの女の子がこけていた。


「だ、大丈夫ですか?」


 僕は反射的に声をかけた。


「ふぇ? ひゃ、ひゃい! 大丈夫でしゅ!」


 ……さすがに噛み過ぎだ。

 手を差し伸べると、女の子はその小さな手でおずおずと握ってきた。


「あ、ありがとうございます。えへへ……」


 少し照れながら、僕の手を支えに立ち上がり、服に付いた土を払う。

 はにかんだ時のえくぼがとてもチャーミングだ。


「それで、どうしてあなたは私の家の前にいたんですか?」

「あぁそれは……」


 純粋な瞳をこちらに向けてくる。

 これは嘘をつけないな。いや、つく必要も無いんだけどね。


「この辺に宿屋があると聞いて……。って、『()』?」

「はい、そうですよ? ———もしかして、お客さんですか!?」


 女の子がキラキラと目を輝かせ始める。

 あ、これはまずい流れだ。

 確かにさっきも今も、純粋な目である事に変わりはない。

 変わりはないのだが……、先程とは、純粋のベクトルが違うと言うか……。

 何と言うかこう、商売人の目なのだ。獲物(お客)を見つけた時の、肉食獣(店員)のような。


「ならぜひっ! 私の所に泊まると良いのですっ!」

「いや、でも……」


 そう僕が否定しようとすると、途端にショボンとする。


「そうですか……」


 これはずるい。

 そんな事をされたら、断るに断れんじゃないか。


「あ、いや、じゃあ……、泊まろうかな、なんて———」

「ホントですかっ!」


 僕が肯定すると、途端にテンションが上がる。

 犬みたいだな、本当に。


「そうと決まれば早速行きましょー。善は急げですー」

「あ、ちょっと……」


 僕が何かを言う前に、彼女は僕の手を引いて歩き出す。


 今確信した。

 この娘は、僕が歩んできた異世界人生の中でも、トップクラスの商売人だ。

 何故なら、この娘は自分の武器を分かっている。

 利用出来るものは何でも利用し、最大限の利益を引き出す。

 幼いながらに、この娘は既に、商人として完成の域にある。

 そう思う、夕暮れの僕だった。

戦闘シーン書きたいなぁ……。

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