第一八話:「出来る訳無いじゃないですか」
ものの数分とかからずに、残りの群狼を殲滅し終えた僕は、改めて彼女に向き直る、
「それで、どうしてあなたはここにいたんですか?」
声をかけると、僕の戦いぶりに呆然としていた彼女は、我に返って、
「だ、だって、群狼の群れに囲まれて危なそうだったから、助けてあげたら私の事尊敬するかな〜、なんて事は考えてないんだからね!」
墓穴を掘っていた。
「結果、僕にはあなたの助けは要らなかった訳ですけど」
「そ、そう言えばそうよ! 何でアンタ、そんなに強いのよ?」
「まぁ、一応Aランクの冒険者ですし?」
さっきなったばかりだけど。
「エ、A!? じゃあ何でアンタ、そんな血だらけなのよ? Aランクなら、群狼ぐらい余裕でしょうに」
「いや、これ全部返り血ですし」
「ウッソ……」
何やら驚いているようだが、いつまでも返り血まみれは気持ち悪いので、洗い流す事にする。
少し大きめの火球を生み出すと、空いている場所に叩き込み、窪みを作る。
出来た窪みに水球を何発か撃ち出して、水たまりを作る。
屈んで、水を手ですくって顔にかける。
あらかた流し終えると、タオルを取り出して顔を拭く。
身体や髪は、町に帰ってからにする。
さすがに、ここで露天風呂と洒落込むような感性は、持ち合わせていない。
こんな、周りが狼の死体だらけの場所に、風情も何もあったもんじゃないと思う。
それに、僕には野外露出みたいな変態チックな趣味は無いしね。
人の目も気になるし。(滅多に無いと思うけど)
顔を洗い終えて、ふと彼女を見ると、また何やら驚いた表情をしていた。
「どうかしましたか?」
と僕が尋ねると、
「どうしたも何も無いわよ!」
という答えが返ってきた。
「あなた、近接戦闘職じゃないの?」
「一応それがメインではありますね」
「じゃあ何で魔法が使えるのよ? しかも二属性って……」
「そんなに驚く事ですか? 僕の見た限りじゃ、あなたは三属性使ってるじゃないですか」
「確かに私は三属性使えるけど、私が言ってるのはそう言う事じゃないの!」
「? どういう事ですか?」
話が全く見えない。
「あぁー、もう! だから、あなたの戦い方はおかしいって言ってんの!」
「どういう風にですか?」
「だ・か・ら! ちゃんと説明してあげるからよく聞きなさい! 良い?」
そう言って僕に念を押すと、彼女は一息置いて語り始めた。
「確かに、ソロとして最前線で活躍する冒険者の殆どは、さっきのあなたみたいな近接戦闘職系か、私みたいな高位の魔術師で占められる。そして、理論上最も効率がいいのは、今のあなたみたいな、魔法も使える近接戦闘職とされているわ」
「何もおかしい事無いじゃないですか」
「だから言ったでしょ。理論上だって」
ここに至ってようやく、僕にしては遅すぎるくらいにようやく、僕は彼女の言いたい事に気がついた。
「現実にそんな戦い方をする、ううん、出来る冒険者なんていない。少なくとも、私は知らなかった」
今の今までは、と彼女は付け加えた。
「普通はどちらかに偏る物なの。どちらに偏るかは本人の努力や才能次第だけど、両方を均等に、しかも戦闘に使えるレベルなんて、歴史に刻まれてもおかしくないわ」
僕は黙ってそれを聞く。
「しかも、あなたの場合、『戦闘で使える』なんてレベルの話じゃない。片方だけで、充分どころか十二分以上に通用する実力よ。一体何をしたらそうなるの?」
神様に気に入られたら、とは言えない。
「とにかく、あなたは常識外れどころの騒ぎじゃないのよ。しかも二属性だなんて———」
そこでピタリと言葉を止めると、彼女は僕の方をじっと見つめて、
「———まさかあなた、『三属性以上使える』なんて事は無いわよね?」
と聞いてきた。
「ま、まさか。出来る訳無いじゃないですか」
「本当に?」
ずずずっ、と迫ってくる。
「本当ですってば」
僕は目を逸らす。
「嘘つけっ!」
ブオン、という風を切る音と共に、彼女の持っていた杖が、僕の顔面目掛け振り下ろされた。
「ッ!」
ギリギリで首を振って躱すと、そのまま飛び退って間合いをとる。
この世界に来てから今までで、一番殺意がこもった攻撃だった。
顔を上げて彼女を見ると、彼女は俯いてブツブツと呟いていた。
「フ、フフ。……良いわよ。あなたがそこまで言うなら、私にも考えがあるわよ」
僕が首を傾げるより早く、彼女は行動を開始した。
それは———、
「私を弟子にして下さい、お願いします!!」
———土下座だった。
「———え?」
ようやく、主人公のハーレムメンバーが一人入ったという感じですかね。いや〜、長かった。
無計画ですが、これからも出て来る予定ですので、よろしくお願いします。




