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俺たちの冒険はこれからだ!(五三周目)  作者: 厨二×武力=はた迷惑
第一章
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第九話:「やらかしてると思うけどね」

 部屋の中は、それほど酷くはなかった。

 勿論、外装と比べてと言う話で、実際は平均的だと思うが、僕は充分満足だ。

 部屋に入ってすぐの位置にベッドがあったので、とりあえず寝転がり、しばらくボーッとしていた。

 異世界に来た日や後数日は、若干のホームシックに陥る事がある。今回も多分そうだ。

 ベッドは、お世辞にも寝やすいとは言い難かったが、寝返りを打てるだけのスペースはあった。

 フゥ、と息を吐くと、勢いをつけて体を起こす。

 拳で空中を叩いてひびを入れると、その中に手を突っ込む。

 そこから水を取り出して、一気にあおる。


「あ、無くなった」


 どうやら、今のが前の世界で補給した最後の水だったらしい。

 空になった水筒に向かって念じると、大きな火の手が上がる。

 それを適当に放り投げると、床に落ちる前に燃え尽きて無くなる。

 明日、どこかで水を補給するか、と考える。

 水魔法を使うという手もあるにはあるが、あれは量の調節が難しく、使い勝手が悪い。

 魔法は戦闘に使うに限る。

 それを考えた所で、おなかがグゥ、と鳴る。

 もうそんな時間かと外を見ると、既に日は落ちていた。

 食べ物、と念じながら、ひびの中を探ると、何かを掴んだ。

 取り出したのは、先程の猪の肉。

 これでいいか、と思いながら、それにかぶりつく。

 ……うん、まぁ、食えない事も無い。

 ちょっと硬いのと、獣臭いのが気になるが、そこはまぁ許容範囲内だ。

 僕は食べ物の味など分からないので、食べられれば何でもいいタイプの人間だ。

 加えて僕は小食なので、その一切れで満腹になる。

 ご飯が欲しいなと思う。



 食事を終えた僕は、再びベッドに寝転がり、今日あった事について整理する。

 出だしとしては上々だろう。

 ちょっと目立ってしまった感もあるが、これから大人しくしてれば問題無いだろう。(多分無理だが)

 あとは、また知らないうちに何かやらかしていないかを祈るだけだ。


「十中八九、やらかしてると思うけどね」


 異世界では、それが常なのだ。

 瞼を閉じると、一気に眠気が襲ってくる。

 いくら異世界に行くのに慣れていても、それはあくまで『慣れ』だ。『適応』では無い。

 そして、『適応』していない以上、それ相応の疲労はある。

 酒場の話し声が心地よい眠気を誘う。

 いつの間にか、僕は眠りに落ちていた。



 =============



 ———遡る事数時間前。


 とある一つのパーティが、依頼を受けていた。

 CランクとDランクの混成で、それなりにバランスは整っていた。

 彼らが受けたのは、大猪(ビッグボアー)の討伐。

 彼らの実力なら、苦戦はするが、倒せない程強いと言う訳でもない。

 彼らの内の一人が口を開く。


「にしても、こんな町の近くに魔物が発生するとはな」


 それに続くように、他のメンバーも次々と口を開く。


「異常……と言う程ではないけれど、確かにちょっと変わってるわね」

「最近は、他の町や国でも同じようなことが起きてるらしいぜ」

「噂によると、近々魔族の侵攻があるらしいですよ。その影響で、魔物の活動も活発化してるとか」

「おいおいマジかよ。勘弁してくれってんだ」


 その後も何言か話し合っていたが、不意に一人が異変に気付く。


「おいおいどうなってんだ? 一向に獲物が出てこねえじゃねえか」

「確かにそうね。かれこれ半刻は歩き続けてる。ヤツの生活圏内に引っかかってもおかしくはないのだけれど」

「ガセネタ掴まされたんじゃねえか?」

「いや、それは無いだろう。その証拠に……、見ろ」


 一人が、ある一点を指差す。

 そこには、よく目を凝らさないと分からない程度だが、獣の足跡が残されていた。


「これで、少なくとも情報がガセだという事は無くなった」

「じゃあ何で見つかんねえんだよ」

「分からん。とにかく、もう少し辺りを探索してみよう」


 その言葉に、彼らは渋々従った。

 暫くして、一人があるものを見つけた。


「おい、皆。ちょっと来てくれ」


 その言葉に、パーティメンバーは彼の元に集まる。

 そして、彼が示すものを見て、一同は一様に困惑する。


「何だ、これは?」

「焼け焦げた獣の毛皮みたいですけど……」


 それは、木の枝に掛けられた大猪の毛皮だった。

 それを見て、リーダー格らしき男は考える。


(どういう事だ。俺たちの他にも同じ依頼を受けた奴らが? いや、それは無いだろう。なら何だ? 考えられるとすれば、別の依頼を受けたヤツが、偶然遭遇し撃退したという事になるが……)


 男は、更に思考の深みにはまる。


(この辺りである依頼と言えば、せいぜい薬草採取程度だ。そのレベルのヤツが、大猪を相手にでき、まして倒す事などあり得ない。しかしこれは、相当強力な火魔法。となれば、扱えるのは、かなり高位に位置する魔術師という事になる。だが———)


「……ーダー、リーダー、リーダー!」


 呼びかける声にハッとなり、意識が現実に向く。


「どうします、リーダー?」

「一応、その毛皮は持ち帰ってギルドに報告だ。後の指示は、ギルドで仰ぐ」


 了解、と、一同は声を揃えて返事をする。

 それを聞きながら、男は再び黙考する。


(いずれにしろ、重要な事には違いあるまい。場合によっては……。いや、これはまだ早いか)


 そう考えながら、男達は町に向かって歩き出した。

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