35話
王城の一室、本日行われるお茶会の舞台となる豪奢な談話室だ。
バルコニーからは王城の庭が一望できて、生茂る木々や色とりどりの薔薇の花壇、水がきらめく噴水などが目に美しい。豊かな景色が広がるのだった。
侍従やメイドにより完璧に設えられた空間は美しく、また、飾られた花々により、新鮮で爽やかな花特有の甘い香りに満ちていた。
朝食後に仮眠をとって少しだけ元気になったスチュワート侯爵に連れられて、メイリーンはその部屋にゆっくりとした所作で入っていった。
メイリーンは社交デビューしてわずかな間ではあるものの、これまでに王城のパーティーや侯爵家主催のお茶会に出席したことで、目が肥えたと思っていた。
それなのに、これまた映画のようなキラキラとした豪華で美しい空間に足を踏み入れて驚いていた。
そして、すぐさまふんわりと装花の良い香りに包まれたことで、これが現実なのだと実感する。
えええええ。なんて華やかなの…。マリーアントワネットの映画にでも出てきそう。華やかなのにまとまりや品があって、なんて美しい空間なの。かなりお金かかってる!贅沢!!
はあ〜。こういうところに来るなら、シャーリーたちがやけにわたしの支度に気合いを入れたのもわかる。すごい気迫だったし、なんか細かいところまで話し合ってて、びっくりしちゃった。
朝食後に何人も連れて来て、髪やらドレスやら、なんか念入りというか、彼女たちの熱気がすごくて、わたしとシロちゃんがギョッとして引いて、つい顔を見合わせちゃったもんね。
まあ、シロちゃんのふわふわの毛とか、爪がドレスに当たってもいけないから、すぐに引き離されちゃったんだけど。
あー。シロちゃんを撫でながらでいいなら、お茶会も少しは気楽なんだけどなあ。
メイリーンが好き勝手なことを考えている時、別室で国王ヨハン、3名の王子、宰相ディーンが集まっていた。
身分の高い人が、先に談話室にいるわけにはいかないので、簡単な打ち合わせも兼ねて、別室にいるのだ。
「うむ。集まったか。これから、我らと、スチュワート侯爵、そしてその娘であるメイリーンとお茶会を楽しもうと思う。
かの娘は才能のある娘と聞いている。そなたらの為になると思うゆえ、これから共に学ぶ機会を作ろうと思う。今日はそのための顔合わせだから、相手の性格やらをよく知るようにするのだ。いいな。」
「「わかりました。」」
3人の王子たちはすぐに返事をした。素直な様子に国王ヨハンは満足げである。
侍従が宰相にスチュワート侯爵らの来訪を伝えた。
「陛下、スチュワート侯爵とメイリーンが到着したそうです。」
「あまり事前の説明があるよりも、会ってみると良いだろう。では、向かおう。」
そう言って、すぐ近くの談話室へと向かった。
侍従やメイドたちがほとんど音を立てないようにしながらも無駄のないスマートな所作で扉を開けたり、お茶の準備を運ぶなど、それぞれにプロの仕事をしていた。
そんな中、国王ヨハン一行は泰然とした様子で歩いていった。
そして、談話室の扉が開かれる。
先行した侍従が先触れをしていたのだろう。スチュワート侯爵とその娘が、壁際で礼をとっていた。
「待たせたな。頭を上げてほしい。今日は気楽な席ゆえ、なるべくは寛いでほしい。」
「お招きいただき恐悦至極にございます。陛下並びに皆様におかれましてはご健勝のこと、」
「ごほん。アンドレ、堅苦しいのは要らぬと申したのだ。せめて、いつもの態度まで軟化させてくれ。」
「…失礼いたしました。陛下、王子閣下、ディーン様、我が娘のメイリーンともども、お招きいただきありがとうございます。本日はよろしくお願いいたします。」
「うむ。こちらこそよろしく。では、座ろうか。」
国王ヨハンが苦笑しているが、父親であるスチュワート侯爵はその美しい顔立ちを崩さず、真面目な表情をしていた。
我が父の働く姿はかなり生真面目なようだった。
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