第93節 応援とスコール、対策法
学年最強の飛空対うちのクラスの委員長&副委員長を交えた4人の対決。しばし動きを見ていたが、やはり飛空にとっての強敵は副委員長のようだな。 委員長の火力だけの力では到底勝てまいよ。
そう思っていたのだが意外や意外、考えてやったのかやってないのか。 飛空を苦しめている。 飛空だって化け物じゃない。 人間らしい部分はいくつもある。 それを考えれば意外と対処出来るのかもな。
「おーおー うちの委員長、ようやるであんなデカいの。」
「確かにあそこまで大きくすると次に撃つまでのインターバルが馬鹿にならないってのに。」
そう隣から聞こえてくるは同じクラスの嵐山と伊奈川だ。 別クラスでありながら飛空と味波と同じ寮部屋なだけあって仲がいい。 しかし彼らもさすがにクラス代表を応援するのか。
「と言うよりもいいの? 飛空、あのデカい球体にやられちゃったけど。」
「おいおい、飛空を勝手にやられた事にするなや雪定。」
「そうそう。 よく見てみなよ。」
そう言われたのでモニターを見てみると、 球体が無くなったところに飛空はおらず、それどころか委員長とかなり距離が空いていた。
「ま、あんなの飛空にとって避けるのは朝飯前やな。」
「でも飛空を苦しめたのは確かだけどね。考えてやれば学級委員長として納得なんだけどねぇ。」
「・・・ねぇ、君たちは飛空とうちの学級委員長、どっちを応援してるんだい?」
そう質問したくなってしまった。 合同練習とは言え、学級委員長と一友人、どちらをとってもおかしくはないが、彼らの言葉を見てる限りはどちらを応援してるのか分からない。
「確かに学級委員長は応援せんといかんし。」
「飛空は今は他クラスだから応援するのはあんまりよくはないよね。」
そう2人が言った後「でも」と付け足されて
「「応援してるのは飛空 (かな) (やな)」」
そうユニゾンして答えてくれた。
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「バーニアが・・・あって・・・ほんとに・・・・良かった・・・。」
心からそう思う。 しかし先程の気温上昇のせいで体調があまり優れないのは確かだ。 バーチャル世界とはいえ、痛みがあるということがここの場面でようやく辛いと分かった瞬間でもある。
「・・・とりあえず・・・まずは・・・この・・・体温を下げなければ・・・しばらくは・・・バーニアを・・・駆使して・・・移動し続けなきゃ・・・!?」
そう考えていた時に頭上から大量の水が降ってきた。 重い体に更にスコールばりの水、ここまでくると追い討ちかと思ったが、このスコールは知っている。何故って
「大丈夫? 飛空君。」
文香が上から心配そうな声を掛けてくる。 そうこのスコールは文香の武器「レイニーインバブル」の水だからである。 でもさすがに雨が重たい。
雨が終わるとようやく立ち上がれるようになり、近くに文香が来る。
「えっと、余計だったかな?」
「・・・いや、おかげ様で体がちゃんと動かせるようになったよ。」
上がっていた体温が下がり、水分も取れたので、頭がスッキリしてきた。 服が濡れているのは時間が経てば勝手に乾いてくれるので気にはしない。
「でもあの人工太陽の対策法は見えた! これがあれば怖くはないな!」
「・・・飛空君、それ空元気?」
うん今のは空元気かも。 しかし対策が分かって笑いたいのは確かだ。
「ところでみんなは? それなりに戦ってるとは思うんだけど。」
「海呂君は今移動を含めて交戦中。 仲町君は副委員長と交戦中よ。」
副委員長とか。 彼女とはもう1回戦っていきたい所ではあるからな。 しかし今はあいつとリベンジマッチをしたいところだ。 何も出来ずに撤退はさすがにプライドが許さないんでね。
「まだ奴は近くにいるかな? 正直自ら近づきには行きたくはないんだよな。」
「さっき戦っていた人の事?」
「ああ、あのフレアランチャーは最初に撃ってきた時のあれはタメ攻撃だったんだ。 だから分からなかったけれどあの武器は熱を放出しながら残るからそれのせいで気温が上がってまともに立ってられなくなるんだ。」
「だから私の「レイニーインバブル」が必要なのね。」
そういう事だ。 なのでこのスコールを使って熱を冷やせばそれなりに戦えるかもしれない。
「でも今は固まってるのはまずいからとにかく一対一で戦っていこう。」
「分かったわ。」
とにかくまずはこの高層ビル地帯による死角からの戦いになるだろう。
どこまで相手の死角を狙ってダメージを与えれるかという心理戦になる。
「海呂、今どんな状態だ?」
『こっちはちょっと難しい所だね。 1人だと対応しきれないんだよね。 だから助けてくれないかな?』
「OK。 ちょっと耐えててくれ。」
相手に今は会いたくはない所だったがそうは問屋が卸さないか。
「ここから先には行かせないぞ!」
その意気やよし!やってやろうじゃないか!
相手はガトリング砲持ち、距離は詰めた方が有利取れるな。 ならまずは遠隔機関銃を使って敵を近くに寄せてから・・・っとさすがに知ってるか。 ならこのレールガンを浴びせてやる!
「ズドンッ!」
レールガンから重苦しく鈍い音が聞こえる。
「うっ・・・ぐっ・・・やっぱり反動がデカイな・・・。」
何回かレールガンを使ってからというもの少しでも反動が軽くなるように筋トレは多少たりともしていたが、まだまだ足りないようだ。 しかし相手もレールガンの弾速に間に合わず直撃。弱っていたのかそのまま倒れて量子化する。
「さてと次は・・・ !! この熱気は・・・!」
正体はすぐに分かった。 あいつのフレアランチャーだ。 だけど、タネが分かれば避けるのは容易い為そのまま退避を
「ピピピピッ ピピピピッ」
ここで標的警告アラート!? という事は・・・ アラートのした右方向、そこに無数の針が飛んでくるのが見えた。 一度に大量に放出されていて、進行方向に長く飛んできていた。
「くっ!」
進んでいた方向から急停止してその反動を利用してバク転をする。しかし
「はん! 馬鹿めが!」
進めなかったという事はフレアランチャーがこの後飛んでくると言うこと、そして俺はこの時点で1秒間急に動くことが出来ない。 バーニアを出す時間もなくなってしまった。 これでは・・・そう思った時、目の前で大量の水が降り、巨大なフレアランチャーの弾がみるみる小さくなっていった。
「なんだ! この雨は! 重くて動けねぇじゃねぇか!」
どうやら相手の委員長もこのスコールを食らって動けないようだ。 そんな状況を見て俺は空中に飛んでいた文香とグッドサインを送り返した。
そこからは委員長と副委員長の無意識コンビネーションに翻弄されながらもなんとか勝利を掴むことが出来た。
「くっそー! あそこまで追い込んだんだぞ! なんで勝てねぇんだよ!」
向こうの学級委員長はかなり悔しがっているが、俺には彼が負けた理由は知っている。 彼は1人で俺に勝てると思っているのだ。 そして追い込んだのも自分1人でやった事だと思っている。 その考えの時点で俺には勝てない。同じように単騎で強かった了平だって、頼れる仲間がいたからこそ俺と一騎打ちが出来たのだ。 仲間を信じきれていない。 もとい1人で突っ走るような奴に俺は負けない。
「やはりその強さは嘘偽りは無いのですね。 さすがですわ。」
「お褒めにお預かり光栄だよ。寅居。」
「え、えっと、寅居さん!」
仲町の声に俺は驚いてしまった。 どうした?どうした?
「ぼ、僕は、仲町 秋羅と言うものですけれど! あの、あなたの、武器についてちょっと話したいことが!」
「あら? あの武器がなにか?」
「はい! えっとですね。 あの武器、罠針は基本的には設置型です。 ですが使う場所が限られていると思いますが! 無いなら作ってしまえばいいのではないかと! 僕は考えたのですが!」
「あら。 確かに設置をするのは手元の装置からですので、もしかしたら持ち運びも?」
「はい! 媒体があれば可能なのではないかと!」
「確かに設置と言うだけで基本的には放置していましたから、そういう事が出来るのならば戦略が広がりますわね。」
「そうです! 更に言えば、ターゲットがロックオン距離にいれば発射されるものなので! 横だけでなく上下でも可能です!」
「そうですわね。 あの時あなたが教えてくれたように設置したら見事に翻弄することが出来ましたわ。 もし宜しければもっと詳しくお話しませんこと?」
「ほ、ほ、本当ですか!? ぼ、僕で良ければ! 是非!」
なんか知らん間にカップルが出来てしまった。 良かったなと励ましたいところだがあのトラップを考えたのがあいつだと発覚したのでその意味合いも兼ねてチャラにした。 実践で教えるなよな。




