第92節 開幕回避と針、太陽
ブリーフィングルームから風景が変わった。 ステージは高層ビル地帯となった。 高低差の違うビルからいかに上を取るかが勝負になるこのステージ。
「それじゃあまずは・・・みんな左右に避けろ!」
作戦を伝えようとしたその瞬間、みんな散り散りになってその場を離れる。 その後にデカい球体が先程までいた所を抉りながらステージ端まで飛んで行った。 かなり大きかったのであそこで言わなければ大惨事だったのは間違いない。
「な、なんてもんを撃ってくるんだ!」
仲町が驚くのも無理はない。 こんなのを最初に放たれた日には作戦を練る暇もなかった。 そもそもあれは誰が撃ったんだ? そこにも疑問はあるが、終わった事を言ってもしょうがない。 次を気をつければいい。
「一度相手の位置を把握しよう。 あんなのを撃ってくるって事は玉砕覚悟の作戦じゃないのは確かだ。 ここは高低差もあるから上からの奇襲にも気をつけて。」
「「「了解。」」」
そう言って一度散開する。 俺は機動力を生かすためにセミロングスタイルの遠隔機関銃のバーニアと共にビル下を駆け抜ける。 ここまで妨害はない。 一度ビル上に登って
「ピピピピッ ピピピピッ」
標的警告アラート!? その音と共に目の前のビルから窓を突き破って針が飛んでくる。 射角からして上には飛べない! そう思い、使っていなかったバーニアを逆噴射させて急降下を試みる。
「ぐえっ。」
無理やり下にやったため下に対する負荷がかかり、気持ちが悪くなってしまった。しかしなんとかかすりもせずに針を避けることが出来た。 急降下をしたので、そのままもう一度地面に着地する。 気分が悪くなってしまったので、少し着地に失敗してしまったが。
「あのアラートと針の射角だけでよくあそこまで・・・凄い反射神経だね。 さすが学年1位の実力者と言った所ですね。」
ビルの影から出てきたのは先程謝りに来た女生徒だった。
「なるほどね。 君の武器だったのか。 あれどういう仕組み?」
「あれは標的が所定の位置に来ると針を飛ばすというプログラムになっているの。 だけれど設置型だから1回作動すると仕掛け直さないといけないのが弱点かな? この武器の名前は罠針なんだけど、私はホーネットって呼んでます。」
攻撃的な蜂のように刺すからホーネットか。 センスいいなぁ。
俺も自分の武器、そうやって何か相性でも付けてみようかな?
「紹介が遅れました。 私は寅居 笹江と申します。 クラスでは副委員長をやっております。」
やっぱりか。 かなり繊細な武器だからな。 それぐらいじゃないとおかしい。
「なら質問をいいか? 副委員長さん。」
「私のことは寅居でも笹江でもどちらでも呼びやすい方でお呼びください。 津雲さん。」
「あ、そう? じゃ寅居。 最初に俺たちに向かって放たれたあのデカい球体なんだけど。」
「ええ、うちの委員長の武器よ。」
ま、だろうな。 あれに当たればかなりの火力だ。 一撃も喰らいたくはないな。 その前に目の前の敵に遠隔機関銃の標的を合わせる。 もちろん敵としては離れていくがもちろん離す訳にはいけない。 ビルを挟んでいるため確実に追いつける。 しかしここで相手も普通じゃないのがこの戦いだ。
「細かい設定をしなければ設置は一瞬ですの!」
そう言った後すぐに罠針があちらこちらに飛び回る。 鋭さから当たればかなりの痛手になるのは分かっているので全力で避けに入る。 そうしてる間にも寅居には逃げられてしまった。
「本当は常に誰かに見てもらって設置させないようにしたいけれど。」
ミニマップを見るとそれが誰も出来ないことを示唆してした。 全員バラバラになってしまったので、合流するにも難しそうだ。
「他のみんなもそれぞれに戦ってるからな。 ここから1番近いのは・・・仲町か。」
仲町のいる方面に飛んでいく。 すると向こうも都合良く合流したのか敵2人に挟まれている状態になっていた。
「仲町!」
すぐに間に入り、交戦を始める。
「ごめん。 僕がとちったばかりに・・・」
「そんな事で謝らないでくれ。 今はこの現状を打破する事だけ考えるんだ。」
余計な事を言わせないために一喝する。 相手はグレネードランチャーとガトリング砲とこちらを寄せ付けない構築のようだ。
「こっちはそんなに遠距離としては弱いな。」
「なら近づければいいんだね。」
そう仲町が言うと、彼の手にはレーザーを纏った小刀のようなものが出てきた。鮎の持っているレーザーブレードとは形状が違っていた。
「この「レーザーダガー」は射程こと狭いけれど、レーザーと刃の力で大抵のものは切ることが出来る。」
そう言って仲町は急前進し、グレネードを切り、ガトリング砲持ちの所までダガーを滅茶苦茶に振り回して近付く。 ガトリング砲持ちはダガーに掠ったのだろう、少し怯んでいた。 そこを逃さないとばかりにダガー乱舞を仲町は繰り出した。
「まだ俺が残ってるぞ!」
グレネードランチャー持ちが仲町を襲おうと武器を構えるがそこをすかさず片手散弾銃をお見舞いする。
「ま、近づかれた後の対処が出来なければこうもなるよな。 とりあえず距離をおいて・・・・・・!?」
最初に感じたあの感覚が今もう一度起こった。 その感覚があった方角をみると、開幕のような大きさではなかったが、あの球体が先程よりも早い速度でとこちらに向かってきていた。
「くそっ! またか! 仲町! 迂回しながら迂回先で合流しよう。」
「了解。他のみんなはどうする?」
「合流するのは後回しで、もしみんながピンチならそっちに駆けつけてやってくれないか?」
「分かった。 じゃあ後でね。」
本来はこれで良かったのかもしれない。 あの場所で撃ったとなるとこっちの動向が分かっているはず。 それならそう遠くには居ないはずだ。 最初のを抜けばだが。
あちこちを注意深く見て、そこにいたであろう形跡を辿る。 この辺りだけ少し暖かい。 ここに誰かいたのだろうか。 そう言えばあの武器を直接触れた訳では無いが、離れる瞬間に肌に感じた蒸し暑いような感覚。 考えるにあの球体から出ていたのだろう。
「となるとあの球体は熱を持ってる事になるよな? 原理はなんだ?」
「原理は太陽と同じだよ!」
そう言って上から大声で登場して、武器を構えていた。 そこにいたのか。 ならここは一度距離を取って
「逃がす訳ねぇだろ! ボケが!」
そう言うと彼の持っていた武器から「ポス ポス」となにかが放たれる音がした。 なかなかの速さだったが軌道が一直線なので、避けるのは容易だった。 しかし驚いたのはその後だった。 その放たれたなにかは地面に当たってもしばらくは残っているのだ。 しかも熱を放出しながら。
「はん! なにをしようとしても無駄だぜ? このフレアランチャーは誰にも負けねぇんだよ! そしてこれをこうするとぉ!」
そう言ってフレアランチャーの引き金を長時間引いている。 すると銃口部分にある球体がどんどん大きくなっていく。 もちろんそれに合わせて熱を放出しているため近くにいると、正直息苦しくなってくる。
「こんだけ近づいてきてくれてありがとうよ! おかげでお前にキツいのをお見舞い出来そうだぜ!」
さてこの現状、どうやって切り抜けるか。 動けないことは無いが、空気を吸うだけで喉が焼けるくらいの暑さの空気が入ってくる。 しかし動かなければあの大きな球体に当たってしまう。 しかしこの体の重さはなんだ? そう思って地面に落ちたフレアランチャーの小さい球体を見てハッと答えが出てきた。
これは当てる為に撃ったのではなく、障害物になると共に熱を放出しているため周りの気温が上がり、人体にとって負荷のかかる気温にしているのだ。 つまり今の状態は砂漠と同じ、そしてここは高層ビル地帯な為、コンクリートからの熱も相まって水分をかなり持っていかれているのだ。
「ははははははは! なにも出来ずに動くことすら出来ずにやられちまえ!」
そう言って目の前のフレアランチャーは銃口から離れた。




