第40節 学校対抗戦と各校紹介、話し相手
新しい武装を申請して1週間。 いよいよこの時が来た。
「さぁて! 提案校の曜務学園と主催校の電信高校による今回初のイベント!! 学校交流対抗戦!! いよいよ開始だァ!!!!」
うぉぉぉぉ!!! と全生徒が声を上げる。
そう。ついに来た学校交流対抗戦。 各校の生徒が一同に集まるここは参加校の一つ級頼機械学院、機械開発に徹底している学院である。 今はその体育館から電脳世界に入っている状態だ。
「皆様の行事の進行を致しますは曜務学園放送部 高花 琉矢と。」
「電信高校広告係 葉隠 弧ノ一がお送りします。」
弧ノ一さんと呼ばれる人を見た時は、狸が化けたような恰好だったので、一瞬本物の狸かと思った。
ちなみに俺がいるのはステージ側、つまり提案校サイドとしてこちらにいる訳だ。 ここからの景色はまあ凄い。
今回参加した学校は8校。 その全校生徒が、ここに集まっているので、ざっと推察するだけでも3000人はここの場にいる訳で、まあ俗に言う大観衆というやつなのだ。
「ではまずは主催校である電信高校の生徒会長からの挨拶から行きましょう。」
そう言い渡されると向こうの生徒会長、増本さんがマイクを持つ。
「電信高校生徒会長 増本 名雪よ。 今回は急遽開催されたこの学校対抗戦に参加してもらいありがとうございます。 我々生徒会一同、そして提案校である曜務学園と協力を行い、最後まで楽しんでもらえるよう、全力を尽くす。 最後まで付き合ってもらいたい。 私からは以上だ。」
そう言って最後に微笑むと「おおお!!!」と歓声の声。 電信高校を含め、一部の生徒に支持を受けたようだ。
「続きまして提案校 曜務学園の生徒会長から挨拶をいただきます。」
今度はこちらの生徒会長、志摩川先輩が前に立つ。
「曜務学園生徒会長、志摩川 円香よ。 私たちの提案は交流を深める事に重点を置いているわ。対抗戦だからっていがみ合いは無しで、みんなで楽しくやって貰えることを願っているわ。 これが成功すれば、もっと大規模なイベントも可能性もしてあるから、みんなの力でいいものにしましょう! 私からは以上よ。」
終わると先ほどの増本さんとは対照的に拍手の嵐だった。
「では今回の参加校のご紹介を致しましょう。 まずはこの場を提供していただきました、級頼機械学院!!」
先頭に立っている代表の人が頭を下げる。そして拍手を送られる。
この電脳世界に入るための装置を考えたのがなにを隠そうこの学院のOBなのだ。 まさに指折りの先進高校である。
「続きましては、科学の発展と技術の進歩がなによりの幸福がモットー、浅巻科学発明学園!!」
ここの学校は主に電気を使った製品などを日々良くしようと考える学校なんだそうだ。 もちろんその中には電脳用でつかう戦闘武器も含まれるため参加したんだそうだ。
「どんどん行くぞ!! 電脳世界でもそのフィジカルは衰えない! 「湾健男子高校」(わんけんだんしこうこう)!!」
ここの学校は身体強化が主な主体となっている。 身体強化に関しては曰く電脳世界にいると、身体の強化は出来ないとのことから、どんな人でも最低限の筋力がつくトレーニングの提案がここで行われているのだ。
ただ、ここの学校の生徒、男子校なのに加えて彼らも筋力強化に慎んでいるのでなんというか、圧迫感と威圧感が半端ない。 絶対高校生の身体じゃないぞ?あれ。
「まだまだ行くぞ! 健康管理も機械が行う時代。 でも作るのはいつだって生身の人間「軟瑠付属女子高校」(なんりゅうふぞくじょしこうこう)!!」
こちらは先ほどの男子校とは逆で肉体内部の状態を良くする考えを持つ学校だ。 ここで作られる健康食品や料理などは消費者に届けられる前に厳しい審査の元で規定値を超えたもののみが世に出るという、厳しいからこそしっかりとしている学校である。
ここの女子達なのだが顔だけならレベルが高い。 念を押しておこう。顔「だけ」ならな。 その人がほんとに美しいと思うのは内面を知ってからだ。 顔だけで選ぶようなアホではないのでな。
「さぁてお次は、人で出来ることは機械でも出来る。機械に出来ないのは人特有の繊細な動きのみ。 「矢萩機械研究学校」(やはぎきかいけんきゅうがっこう)!!」
ここではなんとロボットの開発をしている。 とは言っても大きのではなく、車のような人ひとりの許容範囲で動かせる小型のロボットに挑戦している。 しかしまだ電脳世界に入れるという試みまではいけないので、未だ生徒達が汗水垂らして試行錯誤しているんだそうだ。 身体の一部だけ入れることが出来たのは大きな進歩とのこと。
「では最後となりました! これは夢? 現実? その境界線は電脳世界で無くしましょう。「夢在講談県立学院」(ゆめありこうだんけんりつがくいん)!!」
夢で起きることを現実的に出来ないか? それをモットーに研究を重ねる学校らしい。 人の考えていることの脳波を読み取り、それを出来るだけ具現化するんだそうだ。 彼らの電脳世界における戦闘用武器はかなり特殊なんだそうだ。
「以上8校の説明を致しました! 今回は参加していただき、誠にありがとうございます! さてここからの行事なのですが、皆さんが電脳世界での交流を深めるために学校関係無しの電脳世界4vs4のフリーバトルが行われます! あの学校の生徒と組みたい、戦いたい、なんでもOKです! それだけ交流や親睦を深めてもらうのが目的! 先輩後輩お構い無しのフリーバトルで楽しんでもらいましょう!!」
「わぁーーー!!」という歓声とともに電脳世界からフェードアウトする。俺たち生徒達。 その後はみんな気になった相手と話をしたいと、散り散りになっていく。 一度電脳世界から出たもののその後スグに電脳世界に戻ったので、歩いたり、走ったり、飛んだりで話したい相手と距離を詰める。 もちろん生徒会も例外に漏れず、気になる人の所へ言ったかと思えば、1人に集まって引っ張りだこというのもあった。
と、そんな感じで自由になったので、せっかくなので俺も舞台を降りてふらっとしてみる。 すると、
「君、なかなかに面白い武器だね。 良かったら話をさせてくれないかな?」
そう声を掛けられた。 武器関係で声を掛けられるのは「ミステリアスウェポン」の人達から数えて2回目だ。
暗い青色のボサボサ頭だが制服はピシッとしている。 よく見るとバッジなんかもつけていた。 身長は自分とさほど変わらなかったが、靴の底が厚かったため、ちょっと小さいくらいかなと思ったほどだ。
「申し遅れたね。 僕は夢在学園の青木 天宗みんなからは縮めて青天なんて呼ばれてるんだ。」
「俺は津雲 飛空 やっぱりこの武器は珍しがられるものなのか?」
「君自身が選んだ武器じゃないのかい?」
「俺らの学校では最初に支給される武器はその人の「適正」で選ばれるんだ。 だから直接的に選んではないんだ。」
「へぇ。 適正による武器支給かぁ。 それは身体的にあったものを支給されるってことだよね? 相棒的存在なんだね。」
「でもやっぱり武器は選んで使うのが一番じゃない?」
別の方向から声がしたので見てみると、金髪でサイドテール、少々スカートの短さが気になる女子がそこにはいた。
「でもそのシステムを搭載すれば、最初の武器は絶対に勝てない武器にはならないって事になるわね。 私はその適正を審査する方に興味を持ったわ。 あ、私は浅巻科学発明学園が2年の黒山 麻華よ。 よろしくね。」
浅巻科学発明学園か、ならその装置の方が気になるか。 ちなみに青木 (本人が青天でいいといったので次からはそう呼ぶ)も2年なんだそうだ。
「でもやっぱり武器は馴染みある方がいいんじゃないかな? ほら君もさっき言ったじゃないか。 絶対に勝てない武器にはならないって、あれってそういう意味だろ?」
「でも少なからず実装はされてるから現実化、もとい複製化は出来るわ。」
「夢の実現の第一歩。 素晴らしいよ!」
「科学的に証明できるものはどんどんやってみる。 それがうちの学校の校訓なの。」
などと少々蚊帳の外状態にされてしまったため、その場を立ち去る。 2人には改めて話を聞こうと思う。
別のところで試合が始まったらしくみなそれぞれの籾モニターに観戦の目を向けている。 そんななかこれまた一つの人だかりがあったが、モニターはない。なんだろうと見に行くと、1人の女子を中心に講義の様なものが開かれてるみたいだ。
彼女の手に持っているのはなにかの機械のパーツの様なものだった。 話を遠くから聞いていると、どうやらあれは義手や義足のようで、これを人間の欠損した部分につけて、普通の人間同様の生活が出来るのだそうだ。
しかし俺が驚いているのはそこではなくて、先程も言ったがここは電脳世界、つまり生身の人間しか入れないと思っていたのでああやってパーツそのものを電脳世界に実現させる事が俺は凄いなと思った。
「でも義手や義足を電脳世界に実現させるメリットが・・・・いやあるか。そうすることが出来れば、身体を無くした子でも電脳世界で普通の子達のように身体を動かすことができる。 だけど、それだと普通の義手や義足を作ったんじゃ不可能だ。 なにか特殊な技法が・・・・」
そう独り言のようにブツブツと言っていると例の義手を持った女子がこちらを凝視していて、目が合った。 な、なんだ?
「・・た。 随分と話が分かりそうね!」
そう言ってこちらにその女子が近づいてきた。 なんかでもすっげー目をランランと輝かせて。
あの、面倒なのはごめんよ?
 




