チャプター2 それでもボクは殺ってない (非)日常編二日目①
《ピンポン、パンポーン! 朝8時を迎えました。みーんな、朝だよ~!
オマエラ、今日も一日元気にコロシアイましょう! ぐふふ……!
あっ、そうそう! 今日はちょっぴりお知らせしたい事があるからサッサと食堂に来なさいよねぇ、ウププ!》
ユキワリ・キョウヘイ「んっ……? 今日、か」
と、ベッドから起きるなり、ぼくはいつもの服に着替える。
昨日、「ゲシュタルトはオマエラが驚く事を明日見せる」と言っていた。明日、つまり今日である。ゲシュタルトがなにを考えているかは分からないが、ぼく達をこの船の中に監禁して、さらには前回【超逸材のイラストレーター】倉中りぼんをあんな無残な方法で殺している。なにもかもが驚きと予想外の連続の中で、ゲシュタルトは次は何をしようと考えているんだろう?
これはわくわくじゃなく、単なる恐怖だ。相手がなにをするかが分からない、そう言う類の恐怖である。
ユキワリ・キョウヘイ「しっかし、呼ばれている以上は行かなくちゃ仕方ないよな。行かないと、変なことになりそうだ……」
と、ぼくはそう言いながら部屋を出る。部屋を出ると、1人の見掛けぬ男が居た。
そこに居たのは青い羽織着を上へと着ており、首元には銀色の枷を付けていた。そして長い2本の耳とエプロン付きカチューシャと赤い瞳が特徴の彼は、こちらを見るとにこりと笑っていた。
???「あれっ? きょうへいくんぴょん。おはよう、ぴょん」
ユキワリ・キョウヘイ「えっと……誰ですか?」
少なくともぼくは見た事がない人物である。誰だろうと頭を悩ませているぼくだったが、信じたくはないが1つだけ心当たりがあった。彼の頭にある兎耳カチューシャに対して。
ナカヨシダ・サユリ「にゃにゃっ?! おはようだにゃ、杏平ちゃん! それはともかく、さっさと早く行かないといけないにゃ! あのゲシュタルトが、食堂でなにかを言うみたいだにゃ。それはとっても重要な事に違いにゃい! だから遅れず、2人とも行くにゃ!」
ユキワリ・キョウヘイ「いや、この人……」
と慌てていると、兎耳カチューシャを付けた彼は心外だと言っていた。
???「わがはい、だよ? わがいはい、鈴木シーサーだぴょん」
と、彼はなんてことがない。ほんの些細な事だとばかりに、そう告げていた。
☆
ミツルギ・ヒイロ「完全に別人じゃないか!? 中吉田さん!」
と、全員で食堂へと入り、変わらぬ姿となってしまった鈴木シーサーが皆の前に現れた。
黒い髪、それ以外は完全に前の鈴木シーサーさんの姿とはかけ離れていた。
頭には白いエプロン付きの兎耳カチューシャ。青い羽織着をかけており、中には黒いタンクトップを着ており、服の下からは見事なまでに鍛え上げられた筋肉があった。
???「だから、わがはいは鈴木シーサー。本人ぴょんよ?」
【超逸材の漁師 鈴木シーサー(兎耳着用)】
きょとんと、首を傾けて赤い瞳にうるうると涙をにじませており、男らしい身体つきをしているのにも関わらずちょっぴりキュンと誘惑されそうな愛らしさがあった。語尾の「~ぴょん」も何故か許せてしまう。おかしい、他の人だと多分うざいと思うだろうに。
スズキ・シーサー「あれ? みんな、どうしたぴょん? わがはい、今までみんなといっしょにすごしてきたぴょんね? わがはいたち、友達ぴょんよね?」
カスガ・ハルヒ「えぇ、友達ですよ。もっともそんな喋り方をする人なんて、私の知り合いには居ませんが」
スズキ・シーサー「そ、そんなぁ……」
がくっと、感情豊かにうな垂れる鈴木シーサー(?)さん、本人は自分が鈴木シーサーだと言っているが、どうしても本人だとは思えない。だって、あまりにも、前の鈴木シーサーとは違い過ぎるからだ。
ヘイワジマ・ノゾミ「オー、トテモびっくりネー。シーサー、急にカワリスギだよネー」
ショコラティッシュ「えっと……本当に鈴木、さん?」
ヤマト・アユム「あまりの違いに……オレ、びっくりだよ、と思うよ」
みんなもどうすれば良いのか決め兼ねているみたいであり、おろおろとしている中で御剣さんは中吉田さんに詰め寄っていた。
ミツルギ・ヒイロ「おいぃぃぃぃぃぃ、さゆりぃぃぃぃぃぃ! なんでシーサーがこんな事になってんだよぉぉぉ! 俺が頼んだのはシーサーが"ごく普通に"喋るように、だろう!? それがなんで、こんなおもしろおかしな性格になってんだぁ?」
クノ・タマキ「……アッ、面白いとは認めてるデスね」
ミツルギ・ヒイロ「……っ! と、とにかく、これはどういう事なんだ! 答えて貰うぞ、さゆり!」
キッと、御剣さんが中吉田さんを睨み付ける。それに対して、予想外とばかりに「ちっ、違いますにゃん!」と否定する。
ナカヨシダ・サユリ「わたくし様は緋色ちゃんの言われた通り、シーサーちゃんをごく普通に、ウサトピア海上帝国でも普通に喋れるようにしただけにゃんよ?!」
ミツルギ・ヒイロ「何だよっ、ウサトピア海上帝国ってなんだよぉ?! 俺が頼んだのは、普通の場所で普通に話すようにして欲しいだけだったはずだ! あんなの、洗脳だろうがぁ! あれのどこがぁ、鈴木シーサーなんだよ?!」
ぴょんぴょんと、言っている鈴木シーサーらしき人は、「わがはいは鈴木シーサーぴょんよ!」と言っているが、確かに鈴木シーサー本人かどうか分からないよな。
ナカヨシダ・サユリ「大丈夫にゃん! ウサトピア帝国で話せるなら、ここでも普通に話せるにゃん!」
ミツルギ・ヒイロ「どういう理屈だよぉ!? ……まぁ、洗脳じゃないなら良いか。拳で語って、洗脳じゃないと分かったし」
いつの間にそんな確認をしてたんだろう、と言うか本当なんだろうか?
タカナシ・アカリ「……まぁ、仕方がないですよね。どんなに姿形が変わろうとも【超逸材の漁師】である鈴木シーサーである、それを受け入れない事には話が進みそうにないですね」
シラカミヤマ・タケル「あ、あぅぅ……そ、そうですね」
まぁ、鈴木シーサーさんはこれで良いのだろうかと思っていると、《ぐふふぅ……!》とゲシュタルトは笑いながら現れていた。
ゲシュタルト《まぁ、一悶着あったみたいだけど、昨日言ったよね? 今日、ボクからオマエラに対して重要発表があるってさ!》
ユキワリ・キョウヘイ「あぁ……そう言えば、言っていたな。昨日言われて気になってました」
そのゲシュタルトの重要発表が気になって、昨日はあまり眠れなかったし。
ゲシュタルト《ぐふふぅ! そうだろ、そうだろう? オマエラ、気になって仕方がなかっただろう?》
どやぁ、という声が聞こえるくらいの勢いで胸を張るゲシュタルト。悔しいがその通りだったので何も言い返せずに……
カスガ・ハルヒ「いえ、特には。だってどうせなにかあるんだろうなぁ、と思ってましたし」
と、春日さんがあっけらかんと答える。
ゲシュタルト《……っ!? 強がりを! オマエラはボクにその命を握られてるんだぞ? 怖くないのかぁ?》
カスガ・ハルヒ「いえいえ、ちっとも。そもそも私に関しては死んでも良いと思っていますので。そもそも【超逸材の死神】ってどんな才能なんでしょうかね? 【超逸材】って言うくらいならばそれはもう凄い魂を取る死神姿が見られると思っていますが、それに答えられますか? 今からあなたが見せる驚きに満ちたものに関しても私、ほんとーーーーーーーーーーーーーーーーうに期待してますから。もし、期待以下だったらがっかりですね」
はぁ~と言いつつ、じろっとゲシュタルトを睨み付ける春日さん。その瞳にはワクワクやドキドキと行った期待と言うよりも、普通だったらどうなるか分かってんだろうなぁという脅しが込められていた。
カスガ・ハルヒ「もし、もし仮に新しい場所解放とか言いつつ船の2階とか、地下とかが行けるようになったくらいじゃあ私は驚きませんよ? それも分かった上で、どんな事をするか楽しみです」
ゲシュタルト《ぐふっ……! だ、だいじょうぶさ! 今からお見せするのは、ネタバレされない限り驚きマックスなやり方だからね! このボクが持つ全権限を使って、今のボクが出来るサイコーのエンターテイメントをお見せしようじゃないか! ぐふふふっ!》
と、不気味にゲシュタルトが笑うと、ゲシュタルトの後ろの壁に真っ白なスクリーンが出て来る。そしてどこからか現れた映写機がさらさらーっと動きだし、この監禁船の外の様子を映し出していた。




