チャプター1 監禁船の四月は君の虜 クロ探し裁判編(8)
クラナカ・リボン「おらおらおらおらおらおらっ!」
クノ・タマキ「……イラストレーターさんが、イッシンフランに描き始めてるデス?!」
倉中さんはいつの間にか両手で色鉛筆を持って、一心不乱に物凄い勢いで描き始めていた。そして、数秒で1枚、また1枚と描きあげると倉中さんの横に何十枚もの紙が彼女の両脇に溜まっていく。
ショコラティッシュ「く、倉中さん? だ、大丈夫? お菓子いる?」
クラナカ・リボン「要らない! むしろべた付くからノーサンキュー!」
ショコラティッシュ「うぇっ?! い、いらないのぉ!」
倉中さんは物凄い勢いで描きあげていくと、両脇の絵の束は彼女を取り囲むようにしてどんどん広がっていく。そして彼女が描いた紙の束によって、彼女の身体が完全に見えなくなったと思うと、
クラナカ・リボン「入・稿!」
彼女のそんな必死な声が響くと共に、そして最終的に紙で隠れてしまった倉中さんの目の前に置かれたのは――――
ミツルギ・ヒイロ「なっ……!?」
ヤマト・アユム「なぬっ……!」
カスガ・ハルヒ「……そう来ましたか」
と、みんなが驚く中で、ぼくもまた驚いていた。
ユキワリ・キョウヘイ「あ、相川さん?」
そう、倉中さんの前に最終的に置かれたその絵……それはリアルに、絵だと思えないほどに実写的な相川さんの絵だった。
アイカワ?「そう! わたしこそが【超逸材のカウンセラー】の相川祐樹である!」
ミツルギ・ヒイロ「く、倉中さん!? いきなりどうしたんだ?」
アイカワ?「倉中りぼんさん? いやいや、わたしは倉中りぼんさんじゃないですよ。わたしの名前は相川祐樹、この姿を見ても信じられないですか?」
ナカヨシダ・サユリ「姿と言うより、絵にゃんよね? どう見ても絵にゃんよね?」
アイカワ?「ふっ、なにを言ってるんですか。この姿こそが、【超逸材のカウンセラー】の相川祐樹という事の証明じゃないですか」
倉中さん……リアルな相川祐樹の絵に隠れたまま、倉中さんはそのまま話を続ける。
アイカワ?「それよりも、雪割杏平!」
ユキワリ・キョウヘイ「は、はいっ?!」
アイカワ?「お前は今、わたしを殺した犯人を捜しているんだろう? 凶器の話とか、証言が少々気になったりとか、そんな事はもうどうでも良いじゃないですか。今、探しているのは犯人である決定的な証拠なんでしょ?
さっき、雪割杏平はカウンセリングルームの話で倉中りぼんを犯人だと言っていたが、なにが決定的な証拠なんだ?! さぁ、言って見ろ!」
ユキワリ・キョウヘイ「それは……」
言い淀んでいると、倉中さんはぺらりと紙をめくる。その紙には相川さんがこちらを強く睨み付ける表情で、まるで今目の前に居るかの表情のリアリティで描かれていた。
アイカワ?「さぁ、答えて見ろ! もしそれが答えられなかった場合! 倉中りぼんは犯人じゃないという事ですかね。さぁ、もう1度わたしを殺した犯人をイチから考え直すぞ!」
倉中さんが無言でぺらぺらと紙をめくると、堂々とした相川さんがパラパラ漫画のように笑っていた。
アイカワ?「さぁ、証明して見せるが良い! 雪割杏平!」
ミツルギ・ヒイロ「うわっ、パラパラ漫画のようにめくっていく事で、本当に相川さんが動いているように見えるぞ!? も、もしかして、今俺が見ているのは絵じゃなくて、本物の相川さん?!」
カスガ・ハルヒ「……どうしてその理論に行きつくんだ、このヒーローバカは」
ナカヨシダ・サユリ「で、でもそれくらいのリアリティはあるにゃんよ?」
トキワギ・トオカ「り、リボンッチ? それともユウキッチ?」
ショコラティッシュ「あ、相川さん? い、生きてたの?」
ヘイワジマ・ノゾミ「しょ、ショコラ? ユウキは死んだはずなのネー?」
みんなが混乱するほどの【超逸材のイラストレーター】の倉中りぼんさんの、倉中さんが描いた相川さんの絵は物凄いクオリティで描かれており、それは本当に本人じゃないかと思うくらいの質感であった。
アイカワ?「さぁさぁ! 答えてくださいよ! さぁさぁさぁ!」
タカナシ・アカリ「……雪割さん、そろそろ終わらせるべきでしょう。これ以上やったとしても倉中さんは罪を認めません。ですので、ここで終わりにすべきです。
何故、彼女が犯人なのか。それを的確に示してください」
静かにそう告げる小鳥遊さんに、ぼくは気持ちを切り替えて一旦深呼吸する。そして相川さんを……いや、違った。倉中さんを見ていた。
ユキワリ・キョウヘイ「……カウンセリングルームで見た相川さんの死体ですよ、倉中さんが犯人だと決定的な事態だったのは」
アイカワ?「わたしの死体、が決定的な証拠? それは一体、どう言う意味だ?」
ぽかん、と首をかしげる相川さん(の絵)。
ぼくはそのまま、相川さん(?)に話しかける。
ユキワリ・キョウヘイ「カウンセリングルームでぼくは小窓越しに相川さんの死体を目撃した。しかし、橋渡さんの時は見なかったという」
ハシワタリ・レンカ「うん☆ 私はちゃんとカウンセリングルームを覗いたけど♪ 残念♡ 相川さんの死体は見つかりませんでした☆」
アイカワ?「それの何が可笑しい? 単なる見間違えか、なにかでしょう」
そう、普通ならそうである。
ただし、今回の犯人の場合は、彼女が犯人だった場合はそれが違ってくる。
ユキワリ・キョウヘイ「ぼくはカウンセリングルームを小窓越しに、橋渡さんはカウンセリングルームを扉を開けて確認していた。そして死体を確認できたのは、ぼくの方だけ。
……初めはぼくの勘違いか、橋渡さんの見間違いかと悩んでいたが、今確認できた。ぼくが見た相川さんは、ただの絵だ」
ミツルギ・ヒイロ「絵っ?! だと?」
ユキワリ・キョウヘイ「そう、絵。ぼくが見たのは相川さんの死体の、絵。
多分、小窓かなにかに直接描いたものなんでしょう。普通だったらそんな事はあり得ませんけど、今のような絵で描いた人であろうとも、本当の人間のように。そう見えるような絵を描く、【超逸材のイラストレーター】の倉中りぼんさんのイラストなら可能じゃないんでしょうか?」
アイカワ?「うっ……!」
ユキワリ・キョウヘイ「むしろ、倉中さんくらいなんですよね。今の推理が成り立つとするならば……ですが」
タカナシ・アカリ「……本来ならば、倉中さんの犯行では相川さんの死体を見せるだけだったんでしょうね。
小窓越しに相川さんの死体を確認させた後、その確認した者が皆を呼んでいる間に窓を破壊。カウンセリングルームには誰も居なくて、体育館で見つかれば、明らかにその第一発見者が疑われるという筋書きだったんでしょうね」
アイカワ?「くっ……はっ、この絵では臨場感が出ないです! 描き直さなければ」
笑っていた相川さん(?)だったが、その後ろで倉中さんがカキカキとまたしても絵を物凄い勢いで描き始めていた。数秒で描いて、相川さんのちょっとドッキリした顔をした絵がパラパラ漫画で生み出されていく。
ユキワリ・キョウヘイ「もう無理ですよ、相川……いえ、倉中さん。もしカメラがあればとでも言うべきなんでしょうが、あんな血だまりを用意して、相川さんの死体に見えるような写真を撮る方が難しいでしょう。それにさっきの発言も合わせて考えれば、倉中さん……あなたの犯行である事は確定です!」
アイカワ?「くっ……いや、この絵は違うくて……もっとこう、良い絵を……」
タカナシ・アカリ「橋渡さん、そろそろどうですか? この状況で庇うと、さらに恋人感が増すと思いますけど?」
ハシワタリ・レンカ「恋人感が増す!? それは是非試したいわね☆」
クラナカ・リボン「や、やめっ! それだと私が犯人だとバレ……あっ!」
と、倉中さんがそう自白とも取れるような発言をしたかと思うと、彼女は慌てだす。慌てた物だから両脇に置いてあった紙の束が、描きあげていた紙の束が彼女へと押し潰されて、そのまま彼女は小さく悲鳴をあげる。
クノ・タマキ「アレは、痛いデス」
ショコラティッシュ「経験済み!?」
ジリリリリと、ゲシュタルトから時計が鳴り出す音が聞こえると、ゲシュタルトは不敵に笑いだす。
ゲシュタルト《ぐふふぅ! さて、そろそろ議論も終わったみたいですねぇ。いやぁ、まさかこんな自白にも近い事を言うだなんて、テンション下がるなぁ。はぁ~。
まぁ、良いか。お楽しみはこれからだしねぇ~。さぁて、投票タイムと参りましょうかぁ~。
果たして投票の結果、犯人となるのは誰なのか? ワックワクで、ドッキドキの投票タ~イム!》




