17・不可解な縮小
「ふんふ~ん」
サルルバーンは鼻歌を奏でながら、ずいずい奥に進んで行く。
呑気に見えるが、出現した魔物を簡単に片づけて進んでいる。
【規格外神童】の二つ名は伊達ではない。
彼の持つ神器【花蟷螂】は折り畳んだ状態だと、桜色の花びらに見えるが展開すると華美な鎌となる。
中級の【身体強化】系スキルを発動させてそれを振るうと、魔物たちはあっという間に切株のようになっていく。
「僕が手伝わんかった理由わかったやろ?」とは彼の弁だが、それも大言壮語ではないだろう。
あの華麗な鎌さばきは、ドラゴンゾンビにも通用したであろうことが見て取れる。
その意味では、在学中の騎士団内定は頷けるし、並みの騎士団員を超え、入団してすぐエースになれる存在だろう。
「なんやその視線。僕に憧れんほうがええで。下手に憧れると、同期みたいに潰れてまうからな」
実際、彼の同期はかなりの人数が自主退学している。
あまりの実力差を見せつけられて。
サッカーでもよくあるし、その気持ちは理解できるが、俺は大丈夫だ。
メッシ級とまでは言わないが、若き才能を目にした経験は何度もある。
それで飯を食うと決めたなら、いちいち折れていてもしょうがない。
天才たちはずっと前を走るし、後ろから追い抜いて行くものだ。
「いえ、自分と違いすぎると憧れもしませんよ」
「ええ心がけやな」
上機嫌で城内を進んで行くサルルバーン。
廃棄城は巨大だが、前線の城なので作り自体はシンプルだ。
廊下で各部屋が繋げられており、ほとんどが兵隊の詰め所のようになっている。
それを一つずつ確認しながら、奥へ奥へ進むのだ。
たまにゴブリンやスライムなどの魔物がいるが、サルルバーンがさっくり片づけていた。
「もー、いいんですかぁ? ボクたちの出番がなくなっちゃいますよ」
ただ、エルピたちは不満げだ。
「楽出来ていいんじゃないか?」
「そりゃ平時は楽したいですけど、本番じゃ目立ってなんぼでしょう!」
こういうところはラテンのノリに近いな……。
「拙者も同感だねぇ。こういう時に活躍していないと、冷や飯食わされちゃうもんさぁ」
「っていうかお前らってメシ食うの?」
よくよく考えてみれば何もあげた記憶がないが。
「別に無くてもマスターから【術力】を補給してるんで大丈夫ですけど、美味しいものなら食べたいですよ」
【術力】は、スキルの源。
いわゆるマジックポイントのようなもので、この世界の人間の体内で生成され、使いすぎると酸欠のような症状が出るのだが――
「ちょっと待て。お前ら、俺からエネルギー吸ってるのかよ」
「……マスターは、どうせ【スキル】を使えない……だから、【スキル】で消費するぶんを私たちがもらっても問題ない……」
「なんだかなあ……」
なんというか、外貨準備金が、どんなに不況でも国内で使えない的な……?
理解は出来るがなんとなく腑に落ちないあの感じだ。
「お前らが吸ってるから俺に【スキル】が発現しないわけじゃないだろうな?」
「あっはっは。ナイナイ。【スキル】適正があったら、他の箱が反応してますよぅ」
「そ、そうか……」
才能が無いというのがシステムから証明されると、それはショックだな……。
「無駄話していると、まぁたアイツに先をこされちゃうよぉ?」
「あ、ああ、そうだな」
サルルバーンはどんどん先に進んでいる。
その姿はどんどん小さくなり――
「ほら、あんなに遠くに行っちゃってますよぅ!」
「いや、待て! 遠くに行ってるんじゃない! 小さくなってる!?」
サルルバーンが、明らかに縮小していた。
「っていうか、それで言ったらボクらもじゃないですか!?」
「何っ!?」
いつの間にか、俺たちの身長も縮んでいる。
そして、黒い影が俺たちの上を覆った――




