第8話 グミ量産化
「よし。じゃあ、解析を始めるぞ」
「うん! お願い!」
ルークによって恵のスキルの解析が始まった。
解析された内容が、ルークの解析魔法とリンクされたペンによって紙に記載されていく。
動けない恵とルークに代わって、フィンが記載内容を読み上げる。すると、恵のスキルはいくつかの段階に分かれていることが分かった。
《材料生成》、または《材料吸収》
《材料加工》
《材料グミ化》
「さすがは女神様が授けられたスキルだな……これは凄いぞ。本当に『ありとあらゆる種類のグミを生成できる』スキルだ」
無から有を生成し、その材料をグミに変えていくことができるスキルなのだそうだ。
材料の加工とグミ化の部分を詳細に解析していくと、衝撃的なことが判明した。
材料をジュース状にし、グミの弾力に必要なゼラチンを加え、成分の調整をした後、冷やして固める。その過程がスキルに集約されていたのだ。
「なるほど」
フィンが紙を見ながら言う。
「つまりスキルの中で工場が動いているようなものですね」
「そっか……」
「どうした?」
「わたしのスキル、ただグミを生み出してるんじゃない」
「?」
「ちゃんとグミを作ってるんだ」
思わず感動する。
「次は一つひとつの加工過程を魔法化しよう。まずは材料のジュース化だな。材料を潰せばいいか?」
「待って。材料を潰して終わりじゃないよ。果汁の濃度が高すぎると固まりにくくなるの」
「そうか。じゃあ水を加える過程も必要だな」
「うん。その次はゼラチンを加える過程だけど、ゼラチンの濃度と種類によって弾力が変わってくるの。リトラグミとポーショングミでも配合が違うから――」
ルークにより、魔法陣が組み立てられていく。その間レティシアとフィンに頼んで、ブルボーの骨や、シゼリの皮を調達してきてもらった。どちらもゼラチンの材料になりそうなものだ。
「よし。とりあえず一通りできたな。試作しよう」
「うん!」
だけど、わたしたちはまだ知らなかった。
グミ作りはそんなに簡単ではないことを。
「起動するぞ」
ルークが魔力を流し込む。
魔法陣が光り、材料が浮かび上がる。
「おおっ!」
レティシアが目を輝かせた、次の瞬間。
――ボンッ!!
「うおっ!? なんか爆発したぞ!?」
「魔力回路がショートしたのか!! くそっ、必要魔力の導線を強くしないとダメか……!」
「つまり壊れたってことか?」
レティシアが首を傾げる。
「簡単に言えばそうだ。発動部分に流れ込む魔力が多すぎて――」
「ちょ、二人とも!! それどころじゃないよ!! 消火しないと!!」
四人で協力して消火をし、魔法陣の改良をして。
やっとの思いでできた試作品は、確かにそれっぽい見た目をしていた。
ところが。
手に取った試作品を指で押してみる。
……固い。
引っ張ってみる。
……伸びない。
噛んでみる。
ぼりっ。
「……カチカチしてるな」
「固くて弾力がないですね……」
「こんなのグミじゃない!」
「どこかに問題点があるな。どこだ?」
一つひとつ、魔法陣の過程を確認し直す。
「あった! ゼラチンの量だ!」
「量?」
「魔法陣が全部同じ割合で混ぜちゃってる! これじゃ弾力が出なくなっちゃう!」
「分かった。修正しよう」
「冷やし方も、ここの部分にさらに冷却を挟んだ方がいいかも。その方が弾力が出やすいから。それから――」
試作をして、修正をして。それを繰り返していく。
柔らかすぎるもの。
逆に固すぎるもの。
味が薄くなってしまったもの。
様々な失敗を重ねた末に――スキルの解析を始めてから数日後。ついに。
「……これだ!!」
「おお!! ちゃんと弾力があるな!」
「ちゃんとグミになってます!」
「スキルを使ってないのに、本当にグミだ……!」
完成品をもう一つ口に放り込む。
ぷにっと弾む、独特な食感。
間違いない。グミだ。
「できた……!」
とうとうグミ製造ラインが完成した。
思わず拳を握る。
これで大量生産できる。
お店に並ぶグミが一種類じゃなくなるかもしれない。
「稼働するための人員を集めないとな。魔法ギルドで人を集ってみよう」
「製造ラインを設置する場所も必要ですね。商業ギルドを当たってみます」
「材料の調達も必要だよな? 冒険者ギルドで依頼を出すのが良いかもな! あたしも集めてくる!」
三人の会話を聞きながら、わたしは完成した魔法陣を見つめた。
数日前までは存在しなかったもの。
わたしのスキルを解析して。
失敗して。
改良して。
何度もやり直して。
そして完成した。
(これなら、もっとたくさんの人にグミを届けられる。リトラグミも、ポーショングミも、まだ見ぬ新しいグミも!)
そう思った時だった。
ふと、新しいアイデアが浮かぶ。
(待って。製造ラインができたなら、中にゼリーが入ってるとか、もっと複雑なグミだって作れるんじゃ……?)
「メグミ?」
「……ううん。ちょっと新しいグミを思いついただけ」
三人が呆れたように笑う。
グミ製造ラインは完成した。
だけど――わたしのグミ作りは、まだ始まったばかりだった。




