39 砂漠にて
「最近ウルフを見ないし、暴れたとも聞かないね」なんて、ギルドや街中で噂されている。
それもそのはず、シャーがいつの間にか アジョン周辺のウルフを掌握していたのだ。
ある日ボクが「シャー達と同じ種族の魔物討伐が嫌だな…」と 呟いたら、それを聞いていたシャー達が気を利かせ 力で捻じ込んだらしい(アッパレ!)
シャーの命令で動くので、わざわざ使役する事も無いかと思い放棄した。
ウルフの群れの面倒まで見きれないよ。
ボク達が討伐する魔物も小動物から始めて中型になり 魔物のレベルは、徐々に上がっている(順調で嬉しい)
今日は、セルジュのパーティーと合同で砂漠に向かう予定だ。
一緒に狩りに行ける嬉しい!足手纏いにならないよう頑張ろう。
セルジュ達のパーティー名は、激昂。
奮い立つ気持ちを表しているんだと、リーが力説していた。
1年前ボク達が、ひと纏めにして傭兵組と声高に話していたら、それを耳にしたリーに「俺達は、激昂だ!」と珍しくキレられ名前の由来を熱心に語った。
その場は、謝ったけど(激昂だけにねと 心の中で舌を出したのは内緒だ)
激昂組は、専用の荷馬車に乗ってギルドの前で待っていた。
ボク達は、勿論シャー達に乗って行くが、小さい荷車を借りてレッドに引いてもらう事にした。
ディメーションを使えないから、それに野営の準備を乗せて出発だ。
ボクは、この2年 時間を作って改良に改良を重ねサンドを変形させ、形を固定する努力を費やした。
今では、自由自在に操作できるようになっている(本当に苦労したよ)
形は、盲導犬スタイルで両足の付け根と胸で支えるようにしている。
手綱と鞍の問題が解決し、走り回れるようになって労力が報われたよ。
戦闘になったらワン達は、地中に姿を隠すので安心だ。
12歳になって少し経ってから、父さんにサンドスライム達を紹介した。
ディメーションと何処でティムしたかは、伝えていない。
庭の土の中が住処だと説明したんだけど…嘘を付くので心が痛むが、他にいい案が思い浮かばないし 仕方ないかな。
ミアは、サンドに全く興味を示さない。
まぁ 示さなかった事は、良かったが どういう事だ?こう見えても可愛い奴なのに(納得いかないぞ)
2年前 セルジュから暫く商人は、お休み 冒険者だけ頑張ると聞いた時驚いた。
理由は、ボクだと聞いて更に驚いたよ(ミアの視線が痛い)
それからは、他の激昂メンバーとの遅れを取り戻す為 頑張っていた。
今は、全員揃ってCランクになっている(良かったね、兄さん)
激昂は、ラグ達3人が魔物の卵を孵化させ 従魔のステータスを習得したのを見ていたので、あれから真似していたそうだ。
それぞれ 何個か魔物の卵を孵化させたらしい。
今も激昂の周りには、異質な小鳥や小動物がやたらと纏わり付いている。
「たくさん孵化させたのに、従魔術を何で習得できないんだ」と 訝しがっているのを道中ずっと見ているのは、せつない。
なのでボク達は、種明かしをする事にした。
ボクは、もともと持っていたので習得したラグ達3人に任せる。
「あの サザンさん達…俺達の卵 小鳥じゃ無いんだよ」
ラグ達3人は、凄く申し訳なさそうだが、その話を聞いた激昂は、ポカンとしていた。
「えっ、何言っているんだか理解できないんだけど?」
「ノア、どういう事?」「どう見たって小鳥だよな!」
口々に疑問を言い合う中 セルジュがボクに質問したんだが、兄さん そこでボクを名指しして欲しくなかったよ。
結局 話す羽目になるのか、今更言いにくいよな…ハァ~。
「孵化させた人にだけ妖精に見えるんだよ。この小鳥達は、ただの魔物じゃなくてピクシーなんだ」
「妖精を孵化させたので、従魔のステータスが付いたんだと思います」スミスが補う。
「何だってーじゃ今までの努力は、無駄だったのか」リーが反応し「もっと早く言ってくれよ。どっと疲れた気がする」と サザンが項垂れた。
唯一 従魔のステータスを持っていたオルムだけ、納得した顔をしていた。
「何で教えてくれなかったの?ノア」兄さんが、珍しく不機嫌な調子で聞いてきた。
「えーだって、ミアが食い付いてくるでしょ?だから言いたくなかったんだよ。妖精だと知ったら どうなると思う?」
言い訳を聞いた兄さんは、納得した。
「それと、これ以上女の子に騒がれたくないから この事は、絶対内緒にしてね!」最後に釘をさす事も忘れない。
リーが「え~どうしよっかな~」と 嘯いていたが、ラグ達3人がステータスを取った経緯の噂も流れていない。
だから言いふらす事は、無いだろうと信じている。
孵化させた魔物達の使役をしていないが、親鳥効果で付いて来る(恐るべし刷り込み)
もしかしたら、世話をするうちにステータスを習得できるかもしれない。
可能性の問題だね。
ラグ達は、他の魔物もテイマーしようと何度かトライしたが、全く通用しなくてガッカリしていた。
ピクシーの時は、孵化に関わったおかげで容易く出来ただけらしい。
アジョンの中央を流れる川下からずっと川沿いに南下して、砂漠との境界線が見えて来たので、砂漠に入る前に遅い昼食をとる事にした。
噴水広場で買った ボク達の分の串焼きやスープを鞄から取り出す。
王都の食料は、今出すと不味いからね。
今は、セルジュもアイテムバックを持っている。
父さんが、成人のお祝いに贈ったからだ(兄さん とても喜んでいたな)
その時「あると便利だし必要になるだろう。成人のお祝いの前倒し」と 言って、ボクとミアにも同じ物が贈られた。
なので今は、ボクも堂々と使う事が出来る。
ボクは、2個持っているので 左右の肩からたすき掛けだ。
1つは、普通の鞄だと思っているんだろうな 兄さん。
多分贈り物をこれにしたのは、内緒で持っているボクの為なんだろう。
高価な品なのに無理させてしまったなと、申し訳なく思った。
食事をしながら、依頼の内容を確かめた。
目的地は、砂漠に少し入った所にある、ハサラ村。川沿いなので迷わない。
最近そこに、大きいメミズが数匹出没する。
村特産のジャボデンの根を食い荒らし、困って依頼を出したようだ。
メミズの体長は、大きいもので1m、蛇みたいに、ウネウネしている。
目が無いのも特徴で、どっちが前だか後ろだか分からない上に、
進行方向も前後に進むので、動きが予測しづらい。
しかも、ホールラットのように、地中に通路が無いので、
燻り出す事も出来ない。なので、爆弾を使って驚いた隙をつく作戦だ。
罠を使うのなら、俺の出番だとラグが張り切っていた。
川沿いを南下すると、やがて砂漠に入り、流れる水の量が減ってきた。
そのまま砂上を1時間ほど進むと、
寄り添うように集まった、小さな集落が見えて来る。ハサラ村だ。
村に着くと、サザンとラグが村長に詳しい話を聞きに行った。
ボクはサンド達に、危ないから村に残るように指示する。
地中に、おちおち隠れていられないよ。爆弾を使うからね。
サザンとラグが戻り、二人で爆弾の配置を相談している。
激昂組とボク達も周りで真剣に聞いていた。
一つ間違えれば自滅してしまう、危険な作戦だ。気を引き締めねば。
二人の話が纏まり、ラグは罠の配置に向かう、ボクは見張りを買って出た。
最初の爆弾は、街の近くから外に追いやる為に仕掛ける。
次の爆弾で一か所に誘導する為、囲い込むような配置だ。腕の見せ所だね。
囲い込むまでが広範囲なので、沢山仕掛ける。見ているだけで疲れるよ。
罠の設置が終わり、村人やサンド達、馬に荷車、
全て村の真ん中に避難させ、作戦が始まる。
ドゴーン!ドドド!ドーン 空気が振動し、地響きが唸る。
休む間もなく、爆弾が次々と爆ぜて、砂がもうもうと舞い上がる。
堪らなくなったメミズが、地中から這い出て来た。
「よし!次の段階だ、メミズを追い込むぞ。」
サザンの檄に呼応して、ラグが第二陣を容赦なく爆発させる。
メミズは逃げ惑おうとするが、息つく間もない程の爆撃に、なすすべも無く
追い立てられて行く。
逃げ出したメミズを刈り取る為、外堀にいたボク達は驚く。数が多いのだ。
聞いた話と違う、数匹どころじゃない、仕掛けた爆弾の数が足りない。
激昂組とラグは、集結ポイントに集中している。
ボク達は、隙をついて逃げて来るメミズの対処に追われた。
生きているメミズは、両端を潰さないと再生するので、
切り裂くだけじゃ駄目だ。
早くしないと地中にまた隠れてしまう。
どうしよう、そうだ!凍り付かせてしまおう。
「ブリザード」
辺りに冷気が立ち込め、メミズが見る見るうちに凍り付いて、
命を落とした。
急に寒くなり、激昂組とラグ達の集中力が途切れ、振り向く。
「ラグーそこ!集中しないと逃げるよ。そっちまで凍らせていないから」
大声で呼び掛けると、正気に戻り慌てて討伐を再開しだした。
ボク達3人で、逃げたメミズの両端を切り取って回り、一息つく。
改めて数えたら、こっちのメミズだけで18匹いたよ…数匹って…。
ラグ達も、サザンが凍らせて無事終了。
討伐部位の切り取った両端を持ち帰り、依頼完了だ。
全部で43匹いたよ、これって数匹の範疇なのかな?と激昂組に聞いたら、
依頼内容より多かったので、追加報酬が付くぞと、喜んでいた。
そう言う事なら、納得だ。
討伐を終えた時は、既に日暮れだった。
村長さんに、夜間の砂漠は危険だから、村で一晩明かすように勧められる。
それに、メミズの数が多かった事に驚き、食事の提供を申し出た。
ボク達皆、お言葉に甘える事にした。
宿は無かったが、雨も降って無いし野営の準備もして来たので、問題ない。
食事は、豪華でなかったが、心のこもった料理が並んでいた。
特産品のジャボデンのステーキが絶品だった。
味は、淡白だが少し苦みがあり、シャクシャクした歯応えも癖になる。
使われていた香辛料もアジョンには、無い物だった。
この香辛料は、売り物ですかと聞いたら、ここには売って無いと言われた。
砂漠のもっと奥の方にある街まで行けば、買えるそうだ。
母さんのお土産に欲しかったな、残念。
美味しく食事を頂き、お礼をしてから、野営の準備をした。
ボク達が用意したのは、驚くなかれ、組み立て式のハンモック!
こんな事もあろうかと、皆で協力して作りました。
前世で、キャンプのパンフレットを見た時。
部屋でも使えるし、いいなと思っていたので、構造を思い出しながら、
試行錯誤して作ってみた。
「ノア、これ何処で買ったの?お店でもこんな商品見た事無いよ。」
「ボク達が作ったの!いつでもどこでも、サッと開くだけで寝れるよ。」
「おう!俺たち頑張ったぜ。」「殆ど、ノアが考えたんだけど。」
「そうだよな、よく思い付いたよ。」
「ノア設計図とかあるの?」「うん、これだよ。」
「それ大切に仕舞っとくんだよ。帰ったら、父さんに見せよう」
どうやら、このハンモックは、金の成る木だったらしい。
アイテムバックのお返しが出来るかもしれない。良かったよ。
これを応用して、椅子も作れる事も忘れず言わなくっちゃね。
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