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腐令嬢が往く!  作者: 空廼紡
番外編
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現実は無情

「とっつあんよ、それは確かな情報なのかい?」


「ああ、確かにこの目で見た。間違いない」



 さらがら、渋い系統の刑事ドラマっぽく、わたしとメルは真剣な面持ちで会話をしている。


 場所は、校舎裏のベンチ。周りに人の気配はなし。だからこそ、こんな話をしているんだけど。周りに人がいたら、こんな危ない話をするわけがない。


 してしまったら最後、社会的に死ぬ。


 まあ、そんな話は置いといて。今は、メルから貰った情報を整理することが先決だ。



「わたしの都合の良い幻聴だったかもしれんから、もう一度プリーズ」


「アヒムがライリッヒの背中に、『好き』って書いてた」

 



「k t k r――――!!」




 思わず、声を張り上げてしまった。


 我々が影ながら見守ってきた、体格差・関係性・性格、どれにおいてもツボであるリアル推しカプが、一方通行とはいえ矢印確定したのだぞ? 歓喜でなく狂喜して、心の叫びが漏れるのは致し方ないことだと思うんだ。



「神様、マジ感謝……この目で推しカプの恋愛が見れるだなんて……まじ拝む」


「まて、ヴィー。安心するのはまだ早い」



 神妙な面持ちをするメルを睨む。



「何故だ、メル。少なくても片想いは確実。もう片方も気にしている。よって、ライアヒは正義ということに」


「気持ちは超絶分かる。だが、思い出してくれ。俺たちは何度、公式との解釈違いと公式の展開で地獄を見てきたのかを!!」


「たしかに何度も推しカプがイチャついているところを見せつけられて、公式が病気レベルまでイチャついて、最終的には前提であるノマカプ展開を迎え、立ち直れないほどのショックを受け、葬式を繰り返した。だが、これはワンチャンあるやろ? せやろ??」


 人気ゲームシリーズで、あるカップリング(親友×主人公)にハマっていたわたしたちは、シリーズ終盤で思い知ったのだ。


 そうだ、これは最初から、主人公×ヒロインが前提だった、と。


 前作だと、親友と主人公のイチャつきがすごくて(親友が危険顧みず主人公を救おうとしたり、主人公大好き発言をしたり、主人公もめっちゃ親友に抱きついてずっと親友親友って言っていた)、もう公式が病気? お前らそれ親友ですること? シナリオ書いた人腐っていない? よく審査通ったな本当にありがとうございます状態でうひょおおおおおお! って上がっていたテンションが急落下してしばらく放心したわ。


 だが、今回は矢印確定やん? 杞憂することなどないはずなのでは??



「そうだ、俺たちはその度に二次創作で、時よ止まれ、もしくは女キャラをワンランク下げることによって、心の平穏を保ってきた。だが、これは現実だ。問題はそれではないんだ……!」


「な、なにを言って……」



 メルがわたしの肩を掴む。



「よく考えるんだ……俺たちが真に恐れていたことを……それは解釈違いでも、ノマカプ成立でもない。それはまだ受け入れていたんだ……受け入れることが出来ていたんだ。だが、俺たち固定カプ厨が何を恐れていたのか、そこを思い出すんだ……!」


「ま、まさか……!」



 よろめきそうになるが、メルが肩を掴まえているから、倒れるのは阻止された。


 メルが言いたいことが分かってきて、震えてきだした。


 そんな、まさか。そんなの、認めたくない。だって、それではわたしたちは今まで何に萌えていたの?


 続きを聞きたくない。けど、無情にもメルが続きを口にした。



「そう、他の男キャラ×受け、そして……逆 カ プ だ」



 頭を鈍器で殴られたような、衝撃が走る。震えながら、わたしは理性を振り絞って、それに反論した。



「そ、そんなこと……ありえないわ……だって!」


「たしかに、現時点では二人の上下は特定できない。だが、二人にはバベルの塔が備わっている……どっちも穴に突っ込むことができるんだ……」



 悲痛な面持ちで、メルが訴える。

 たしかに、バベルの塔はあるだろう。宦官でもないし。

 けど、けど!!



「う、嘘だあああぁぁぁぁ!! 公式との壮大な解釈違いだなんて!!」



 頭を抱える。肩にあるメルの手の力が、少し強くなった。



「これが現実なんだ! 二次創作なら、俺たちが狂気染みているのだと、創作だからと受け入れることができた。でも、あの二人は現実なんだ……ライリッヒが受けになる可能性だってある」



 無情な現実を突きつけるメルに、縋り付くようにメルの胸を掴む。



「そ、そんな……それなら、わたしはどうしたらいいの……」



 いずれは近付いて、二人の恋路を間近で見守ろうと思っていた。あわよくば、二人の萌えな話を聞ければな、と思っていた。


 けど、ライリッヒが受けになってしまったら……だめ、考えただけでも恐ろしいわ。



「現状維持……つまり、遠くで見守るしかない。親しくならなかったら、上下だなんて分からない」


「そ、そうね……たとえアヒムがライリッヒを押し倒していてもも、襲い受けだって思えるわ」



 襲い受けは好きです。それなら許せます。



「そうだ、その意気だ、ヴィー」


「すまねぇ……オラ、取り乱していただ……」


「気にすんな……オラもひでぇこと言ってすまねぇ」


「いいべ、お互い様だぁ。そうだな、オラたちが二人に出来ることは、ゴムを開発することだべ」


「そうだべな」

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