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第七話 僕の属性魔法

次の日、席に座ると机に一人一つずつ、紙と水が溜まっている桶のようなものがあった。僕はこれが何か知っているが、知らない皆はなんだなんだと興味深そうに触ったりしている。皆の初々しい反応を伺っていると隣に誰かが座った。誰が座ったのか確認するべく、顔を向けるとそこにいたのはふてぶてしい顔をしているメイト。昨日と同じ男の姿に思わずため息をついてしまう。


「はァ・・・」


「てめぇ人の顔みてため息とはいい度胸してんな」


僕がため息をついたのに対し、昨日と同じ言葉を言ってくるメイトに僕はあきれ顔を向ける。


「君、なんでわざわざ隣に座ってくるの。」


「たまたまだ!わざとてめぇの隣になんか座ってねぇよ!」


僕は自分の杖をメイトの首に向ける。メイトは首に向けられた杖に思わずビクッと肩を上げる。


「な、なにすんだ」


「ルーア・アステリ、僕の名前、てめぇじゃないのだけど」


メイトは僕の言葉にウッと固まる。別にどちらでもいいが、ずっとてめぇ呼びなのは少々気に入らない。メイトも僕の名前を知らないわけではないはずだ、知っていても尚名前を呼ばないだけ。黙ったままのメイトに僕は圧をかけるようにニッコリと微笑み首を傾げる。


「・・・ルーア」


「よろしい」


ようやく名前を呼んだメイトに向けていた杖を下ろし、子供を褒めるように褒めてやる。実際、僕はメイト達より精神年齢はずっと上だ。僕からしたらメイトもやんちゃなただの子供だ、何も怖くはない。満足げにほほ笑んだ僕にメイトは少し調子悪げにじっと見つめてくる。


「それなら俺も君じゃねぇし」


想定していなかった言葉を拗ねるように言うメイトに一瞬、きょとんとしてしまった。メイトも”君”と呼ばれることを好いてなかったようだ。可愛げがあるじゃないかと少し笑みを浮かべ、望みを聞いてやる。


「メイト」


名前を呼べばメイトは恥ずかしそうにフンっとそっぽを向いた。メイトは友達が欲しいただの寂しがり屋なのかもしれない。しばらく恥ずかしそうにそっぽを向いていたメイトは、あることに気が付きこちらを睨んできた。


「てめぇ、杖向けても魔法使えねーだろ」


今更気が付いたメイトを揶揄うように笑う。


「向けただけで、勝手に勘違いしたのはメイトでしょ」


僕の煽るような言葉にメイトは分かりやすくイライラし始めた。


「ほんといい度胸してるよな、てめぇ」


「ありがとう」


素直に感謝を述べてやれば、メイトはイラつきをものに当たるように机をバンっと叩く。


「褒めてねぇよ!」


机を叩き大きな音を出したせいで、周りがこちらに注目してしまった。喧嘩か?と周りがざわざわし始めた。


「騒がない、周りの迷惑になる」


机を叩いたメイトの手をバシッと叩く、子供を躾けるような感覚だ。

叱れば睨みながらも素直に座り直すので、本当は根から悪い奴ではないのだろうが面倒くさい性格ではある。まるで反抗期の子供のようだ。


メイトと喋っていると大分時間が経ってしまった。時計を見るとそろそろ始まる時間であり、もう来る頃かとドアに視線を向けると、ちょうどドアが開きユーゴラス先生が入ってきた。眠たそうな顔、寝癖が付いてる髪、おおかた夜遅くまでギャンブルにでも行っていたのだろう、教師としてはあるまじき行動だがそれでこそユーゴラス先生だ。


「はいはい、おはようね。」


欠伸を隠すことなく、大きな欠伸をする先生に数人が引いている。誰がどう見てもだらしない先生だ。


「なんだ、文句あんのか」


ユーゴラス先生、メイトと言っていることが変わりません。ヤンキーのような先生の言葉に皆、ブンブンと首を振る。


「そうか」


先生はならよろしいというように頭を掻くと、教卓に立ち辺りを見渡した。


「遅刻してるやつはいないな」


教室にいる生徒は先生と比べ、眠たそうな生徒はいなくどちらかというと、ワクワクを隠しきれない生徒が多数。雰囲気がずっとそわそわしている。先生がそんな様子の教室の状態に気が付かないはずがなく、皆の様子にフッと笑う。


「まァ、当たり前か、今日は属性テストがあるからな」


昨日いった通り今日は自分の魔法属性が分かるのだから、とは言え僕は自分の魔法がなにか分かっているためワクワクも何もない。オルカの時は興奮しかしていなかったが、誰だって自分の魔法は気になるものだ。現に横にいるメイトですらワクワクを抑えきれていない。


「そんなに楽しみなら、もう始めるか」


先生の言葉に教室がワッと沸く、ワクワクした教室は絶頂となり好き勝手自分の魔法について予想し始めた。先生は自分の声が通らなくなった教室に、腹を立て顔を不機嫌にさせる。


「うるせぇ」


昨日とは違い教室は先生の言葉で静かにならない、興奮が勝ってしまっており、先生の声が届いていないのだ。


「属性テスト明日にするぞ」


先生の声が通っていなかった教室はなぜかその言葉だけは皆に聞こえるように響き、スッと教室が静かになった。先生はようやく静かになった教室を満足そうに眺めた。僕らはずっと先生の手の中だ。


「よし、じゃあ説明するぞ」


先生は僕らの席に置いてあるのと同じ紙と自分の杖を取り出す。


「この紙はお前らみたいな、ヒヨコのような力でも反応してくれる紙だ。」


ひどい言い方だがなにも間違っていない、魔法を習っていない人の魔法などあってないようなものだ。先生はそのまま紙に向かい呪文を唱える。


「〝魔法を示せ〟」


しかし紙は変化を表さない、失敗したのかと皆がきょとんとした顔で先生を見つめていると、先生は気にせずその紙を教卓の上にあった水の中に沈めた。すると沈めた紙中心に稲妻が天に上がった。生徒たちが歓声を上げる。


「紙に魔法をかけるだけでは完成しない、この水はこの紙と同じく小さな魔力の魔法でも感じ取ってくれるものだ。」


先生は雷により焦げた紙を皆に見せた。


「お前らはまだ魔法を扱ったことがないから、うまく魔力すら操れない。そんなお前らの魔力は、この二つの魔法道具が助けてくれないと出せないほど弱い。」


魔力は生まれ持っているもの。増えたり減ったりしないが、最初の頃は魔力が少ない多い関係なく魔力を出すのが難しいため、感じ取るのが難しいほどしか魔力が出ない。その魔力でも感じ取ってくれるのがこの二つの魔法道具だ。


「その魔力をどれだけ上手く扱えるかは今後のお前らしだいだ。」


先生の言葉は生徒の興奮をそそるが、僕の心には深くしみた。皆は先生の言葉を強くなるにはという話でしか聞いていないだろうが、僕は別の意味に聞こえた。魔法は簡単に人を傷つける、素手で行う暴力よりも悪質で残酷な暴力だ。素手よりも多くの血が流れ簡単に人が傷つく


「よし、始めるぞ。みんな自分の杖を持て」


先生の声でハッと思考を戻し、皆と同じように自分の杖を持つ。皆の杖は人それぞれで大きい杖のものから、小さい杖のもの杖から個性が強く出ている。


「杖は人に向けるな、まだ魔法を扱えないからとは言え、今からそういうことをすると今後事故を起こす。」


先生の言葉に先ほど僕に杖を向けられた隣のメイトがじろっと睨んでくる。僕は舌をチョロッと出し、気づかない振りをしながらそっぽを向いた。まだ言われていなかったからセーフだ。


「杖を構えろ、紙に向けろ」


先生の言葉に少し緊張感を持ちながら、皆が杖を紙に向ける。


「想像しろ、杖の先に力をこめるんだ。集中しろ」


僕は風の魔法の方は隠密行動する際使う予定のため、炎の魔法が出るよう想像しながら、魔力を杖の先にこめる。炎の魔法は前々世からずっと使ってきた魔法だ、今後堂々と使えることを想像すると少しワクワクした。


「俺の言葉を復唱しろ。〝魔法を示せ〟」


『〝魔法を示せ〟』


全員の小さい魔力がクラス中で放たれた。


「そのまま水に沈めろー」


先生に言われがまま、生徒は自分の紙を水に沈めた。沈めると同時に僕の魔力に反応した紙は、予想通り大きな蒼い炎柱を出した。熱く綺麗な青色の炎は自分を主張しているよう


「わァっ」

「きゃっ」

「おっ」

「っ」

「すっげぇ!」

「オー」


僕と同じく魔法を出せた”奴ら”は驚きの声を上げた。僕も驚きの声を出しておく、さすがに最初の魔法に対して驚かないのは不自然だ。上手くできた奴らは興奮気味の声を、出せなかった奴らは不満げな声を上げた。魔法を出さなかった紙は、そのままただの紙のように水を吸ってふやけ底に沈んでいた。予想通りの反応が出なかった生徒達は口々に文句を言っていく、その生徒を代表するようにマヌが手を挙げた。


「せんせーい。魔法、出なかったんだけど」


そう言われた先生は馬鹿にするようにあからさまにため息をついた。


「馬鹿か、マヌ・ブライアント」


「へっ」


いきなり馬鹿扱いされたマヌは情けない声を出す。


「魔法を使ったことがない人間が、一発で魔法を扱うのは至難の業だ。今出せた奴らは奇跡かそういう才能があるだけだ。」


先生が魔法を出した僕含め六人を見る。目立つつもりはなかったが、これくらいで特別目立つわけでもないし、僕の小さいプライドが我慢できなかった。


「とは言え」


先生は目を少し鋭くさせた。


「さっきも言ったが、一発で成功したからといって奇跡かもしれないし、偶然かもしれん。必ずしも才能があるわけじゃない。調子に乗るなよ」


先生の言葉は最もだが、少しくらい自分の才能に希望を抱いてもよくないか


「逆に言えば、今できなかったとしても才能があるやつはたくさんいる。今から気を落とすな、成功するまで何度も挑戦しろ」


『はいっ!』


一同声を揃え返事をした。この先生、だらけていても実力はあるし統率力はあるんだよな。だから嫌いになれないのだこの先生は


僕は皆が魔法を出そうとしているのを見ながら、隣のメイトを見た。メイトは先ほど僕と同じく、一発で魔法を成功させた一人だ。実力なのか、奇跡なのか僕にもまだ分からない。


「メイト、君は何の魔法属性だったんだい」


流石の僕も全員の魔法を覚えているわけじゃない。特にメイトなどすぐに居なくなってしまったため、あまり記憶がない。


「紫色の霧みたいだった」


メイトは細く鋭い目を輝かせながらこっちを見た。メイトも皆と同じように自分の魔法に興奮し、魔法使いとしての道を歩み始めたのを実感し始めたのだろう。紫の霧なら僕も記憶がある。


「それなら闇かな」


前々世を思い出しながらいうと、メイトは闇か!?と興奮した。闇は派手とは言えないが、男子としては興奮する魔法属性の一つだろう。


「ック~、かっけぇ!」


どうやら無事メイトの厨二心に火をつけさせたようだ。


「闇の皇帝か?支配者か?くっそかっけぇ!」


興奮しているところ悪いがそれは闇落ちしている。馬鹿なのか、いや馬鹿だ


「それあまり他では言うなよ」


「なんで」


心底不思議そうに見てくるメイトにため息をつく


「人を傷つける魔法は重罪。メイトのそれはどう考えても、闇落ちしてるでしょ」


「ほんとだ」


なぜ気が付かない、まぁ自分の魔法にテンションが上がってしまうのは分かるが


「とりあえず俺はでかくなるぞ」


大きな夢を持つメイトを微笑ましくみた後、僕はポンっとメイトの頭に手をやった。


「なら問題行動は起こさないことだね。」


「お、おう」


メイトは僕の注意喚起をそこまで気にしていないような返事をする。退学させれたら、もう魔法は使えない、有名になることは絶対できない。まだメイトはそんなこと重く考えていないようだが、メイトはそういやと僕を見る


「お前も一発で成功してたよな、そういうお前はなんだったんだ」


「炎」


僕の言葉にメイトは目を輝かせる。


「かっけぇじゃん!」


メイトは自分の魔法でもないのに楽しそうな顔をする。今のメイトにとってどんな魔法でもかっこいいんだろうが、炎は派手で目立つ魔法だ、そんな魔法はかっこよく感じるのだろう。


キィィィィィィィィィィィィ!!!


突然教室に甲高い不可解で不快な音が響く、音を出したと思われる生徒は目を回し倒れた。大きな音と倒れた生徒に教室が騒ぎ出す。


「騒ぐな」


先生の凛とした声が騒いでいる教室に響いた。静かになった教室に先程と違って、面倒くさそうな先生の声が指示を出した。


「誰か医務室に連れて行ってやれ、って場所が分からんのか」


先生は心底面倒くさそうな態度だ。


「まぁ、放っておいても大丈夫だろ」


諦めた先生はさっさと再開しろと、本を読み始めた。自由で放任すぎる先生に生徒一同心が一致した。


(お前が連れてよ)


しかしそんな倒れた生徒を無視できないのがオルカで、変な空気の中オルカが小さく手を挙げた。


「先生、場所教えていただけるなら僕、医務室連れていきます。」


「お、そうか、二階の東側にあるから」


ざっくりすぎる。オルカはざっくりすぎる説明に困ったような顔をしながらレニーに視線で助けを求め、話しても無駄だと察知したレニーとオルカは保健室を探すべく二人で生徒を支えながら出て行った。


「何だったんだ」


メイトは不思議そうに、連れていかれた生徒の方向を見た。突然生徒が倒れたのだから、この儀式めいた魔法が本当は危険なのではないかと疑われても無理はない。しかし実際は危ない要素などない


「音の魔法だよ」


「音・・・」


「音の魔法は耳がやられるからね」


この出来事を忘れていたせいで僕も軽く耳をやられてしまった。耳がキーンとしていて頭が痛い。

耳を気にするように耳を抑えていると、メイトがこちらをじっと見ていることに気がついた。


「何だい」


「いや、お前魔法について詳しいんだな」


「は?」


いきなりの言葉に呆れ声が出る。


「俺の魔法もすぐに言い当てたし、さっきも分かったしよ」


そういえばそうか、ただの問題児バカだと思っていたがちゃんとそういうとこは鋭いんだな。適当に誤魔化しておかなければ


「僕も楽しみにはしてたから、そういう本を読んでたからね。」


メイトは僕の言葉にきょとんとした。


「お前すかした奴だと思ってけど、ガキなんだな」


腹が立ったので頭を叩いておいた。


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