第十話
事件後、レニーはすぐに学校に運び込まれ後遺症もなく綺麗に治してもらっていた。怪我を負い魔物と魔物使いを倒した生徒達を先生は激しく叱り、そして友人を守るために立ち向かったその勇気を称え褒めてやった。叱られ褒められた経験は五人にとって成長する機会となり、今後敵に立ち向かうための勇気と自信につながるだろう。
地下の魔物の話は学校中で噂になっており、あの五人は時の人となった。レニーはまだ入院中だが四人は普通に登校している、その四人は今や人気者だが勿論気に入らないと考える人間だっている。四人のことを知らない人間や捻くれた考えを持つもの、そんな人間にとっては四人はただの目立ちたがり屋で入学して間もない学校で先生たちの評価を得たおもしろくない人間と考えるのだ。
同じクラスにも勿論そういった考えを持つ人間はいる。
今日はついにあるクラスメイトが我慢しきれなかったようで、話声が騒がしい教室で音を立てて一人が立ち上がった。騒がしい教室でも突然の行動は目立ち、視線が立ち上がったクラスメイトに集中する。立ち上がった人間はみなの視線を気にしないようにチヤホヤされている四人を見て、ハッと鼻で笑い眼鏡をクイッと上げた。
「よくみんなそいつらのことチヤホヤできるね。勝手に夜、抜け出して魔物を殺してヒーロー?馬鹿みたいだな。勝手にヒーローぶって先生に相談せずに抜け出して倒しましたってか、」
馬鹿にした笑みを浮かべるのは、アラリル・ユーテリア。前も苦手だった嫌味な奴。なにかといちゃもんをつけ、敵対してくるのだ。よっぽどオルカ達のことが嫌いらしい。
「もし殺せなかったら攻撃されたとし反撃のために魔物が街を攻撃したかもしれないし、その魔物を誘い込んだとしてこの学校が非難されるところだった。殺したという話も怪しいね、どっかのだれかの手柄でも奪ったんじゃないの、それかこいつらみたいなのでも殺せるような雑魚」
よく信じられるよね、とアラリルは周りを見渡しながら笑う。馬鹿にされたクラスメイト達はウッと黙ってアラリルを見つめた。クラスが嫌な流れになってきた。オルカは当アラリルの言葉を訂正すべく、困った表情をしながら口を開く
「そんなんじゃ」
「学校でのチヤホヤじゃ足りなかったんだな、ヒーロー気取りもほどほどにな」
オルカの言葉を遮り冷たい目線と馬鹿にした態度で言ったアラリルの言葉に、クラスメイト達が確かにと小声で言い始めた。
アラリルの言葉は確かに、一部分は同意できる。先生に相談しなかったオルカの行動は、正しいといえない行動だ。下手を打った場合アラリルの言葉の通りになっていても可笑しくなかった。だが考えがあってのことだし、そのことについてはしっかりと学校側から説教を受け、反省もした。なにも知らない他人に言われるのは大変不愉快極まりない。オルカ自身の性格を非難されるのも腹が立つ、ヒーロー気取り、ヒーローでなくちゃいけない存在それがオルカなのだ。なぜ人格否定までされなくちゃいけないのだ。ヒーロー、主人公ならアラリルに立ち向かうだろうが僕は言い返さない、僕はもうオルカじゃないから、僕は拳を握り最悪の空気が流れている教室を無視するように、窓を見つめた。前回はどうだっただろうか、我慢したんだっけな、ならこの雰囲気は我慢するしかないのだろうか、あぁだれかどうにかこの状況を打開してくれないか、僕がそう強く思っているときだった。
「うっせぇな。嫉妬すんなよ、醜いから」
冷え切った教室に苛立ったメイトの言葉が響いた。
「は?」
思ってもいなかった方向からの言葉にアラリルは腑抜けた声を出す。
「嫉妬なんて」
アラリルはイライラしながら机を蹴った。ドンッと大きな音が鳴り、アラリルがその音に怯える。
「嫉妬だろ、うっせぇんだよ。わざわざみんなの前で言いやがって、言い分は分からなくもねぇが、対し
て自分は努力もしねぇのに努力してる相手を自分の価値観で批難すんなや、少なくても休日遊んでるてめぇと違ってあいつらは練習してるから、てめぇの実力とはもう雲泥の差があるぞ」
メイトも努力する側の人間だ、だからこそ苛立っているのだろう。努力をしない人間の嫉妬を
「あいつらのことをヒーロー気取りっていうなら、お前主人公気取りやめろよ。うぜぇから。な、ルーア」
一瞬でもいいやつだと思った僕がバカだった、なぜ僕に振ったこの男。メイトの振りのせいでみんながこちらを見ている。さすがにこの状況で何も言わないわけにもいかない。気づかれない程度にため息をつく
「まぁ、皆の前で晒上げはよくないんじゃないかな」
目立たない様中立を保つためあまり角が立たない言い方で言うが、それでもアラリルには効いたようで顔を紅潮させ拳を強く握り怒りを噛みしめている。強く言い返したいところだっただろうが、ヤンキーで一見素行が悪そうに見えるメイトには強く言い返せないらしい。それにしても僕も確かに強く腹立ったが、巻き込むなメイト。自分一人で反発しろ、悪戯っ子のように僕を巻きむな。
絶妙な空気の中、教室のドアが開いた。
「お前ら、学生らしく喧嘩するのはいいが、席つけー」
入ってきたどこまで聞いていたか分からないユーゴラス先生により、この騒動は一時幕を閉じた。
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あれから訪れた次の休日。メイトと一緒に僕は修練所に来ていた。もう二人での修行も慣れたものだ。とは言えメイトの前で本気を出す訳にはいかないので、ほとんどメイトの修行を見ている感じだが、メイトもそれを薄々感じているが特に追及してこない。僕もこの時間は嫌いじゃない、基本魔法は極められるし、人を指導するのも面白い。
「お、二人とも!」
いつも通り修行をしていると、聞きなれてしまった声が聞こえた。僕らは声が聞こえた方向を見る。
「マヌ・・・」
「よォ」
「それにオルカも」
「おはよう」
そこにいたのはマヌとオルカ。二人とも明るい表情で友好的に近づいてきた。なんだかんだオルカとはこうして対面することが中々なかったので無駄に緊張する。緊張する必要はないが自分と対面するのはなんだか変な感じだ。一方のメイトは話しかけはしないが地面に胡坐をかいて、あくびをしている。自由過ぎる、まだ朝が早いから眠いのだろう。
「どうしたんだい、こんな朝早くから」
僕が平然を装い、二人へ問えばマヌはへへっと、オルカは困り気味にほほ笑んだ。
「二人がよくここに修行しにきてたって聞いてよ!オルカが話したいことがあるっていうから」
マヌに背中を押されたオルカはちょっと、とマヌに言いながら僕の前に立った。なんだ女子の告白か、女子と取り巻きAか?僕とメイト二人の前に立ったオルカは気恥ずかしそうに、それでいて真剣な瞳で見つめてきた。
「この前は言い返してくれてありがとう、正論でもあったから自分で言い返せなかったけど、やるせなかったから助かったよ、ありがとう」
オルカはそういうと優しく笑った。メイトは自分が腹が立ったから言い返したに違いなく、オルカのことなど気にしていなかっただろうに、律儀に感謝を述べるオルカは本当にいい子ちゃんだ。
「僕はたいして言ってないから、メイトに」
事実、僕は何も言ってないのでメイトにいうようにメイトの方を見ると、メイトは興味なさそうに肘をついていた。いい子ちゃんに感謝を言われたメイトは少し居心地が悪そうだ。
「俺は自分の言いたいこと言っただけだ、感謝されるようなマネしてねぇよ」
オルカの時は、メイト君かっこいいと思ったかもしれないが、今の僕視点はかっこつけてるなとしか感じない。
「それでもだよ、ありがとうメイト君、ルーア君」
「そうそう!めっちゃスカッとした、サンキューな」
もう一度感謝を述べたオルカとマヌに対し、メイトはフンっとそっぽを向き、僕は微笑み感謝を受け入れた。それ以上感謝を受け入れないのも失礼だろう。ツンを発揮しているメイトには後でしっかり言っておこう、そんなんだからクラスメイトに勘違いされ友達もできないのだ。僕も無駄な友人関係を気づくつもりはないがメイトとつるむせいで、一緒に遠回しにされている。オルカはそのまま少し照れたような表情を浮かべる。
「それであまり二人と話してことがないなって思って、話したいなって思ったんだ。」
ダメかな、と上目遣いしてくるオルカはあざとい、なんか恥ずかしい。僕はこんな感じだっただろうか
「俺ら、修行してる最中なんだけど」
メイトはなんだかんだ修行が好きなので、邪魔されたことに対し少々腹を立てている。
「それなら俺らも参加していいか?!」
マヌは名案とばかりにそう言ってくる。名案でもなんでもないのだが、メイトは少し考えた後、いいぜと頷いた。
「色んなやつらとやれるのはいいしな、ルーアもそれでいいよな」
こういうのはNOと言えない日本人だ。
「うん、いいんじゃないかな」
一ミリも思ってないけど、なぜオルカを徹底的に避けてきたのにこんなにも急接近しなくてはいけないのだ。メイトめ、あとで説教だ。
「よし、頼むぜ!」
とは言え、修行とはいってもまだ先生がいない状態での対人は許されていないため、的に当てて言えるアドバイスがあるなら言うくらいだ。個人でやればいいのにと僕は思ってしまうが、そういう問題じゃないのだろう。それにしても、オルカの魔法は綺麗だ。元は自分の魔法であるから自画自賛のようだが、それでも紅い炎は人を燃やしきるように紅くとてもきれいと思えてしまう。昔もこの魔法が好きで自分を温めてくれた魔法であった。
マヌの土魔法も応用が利きそうで成長の見込みがあるし、どこか安心感を覚える。マヌも才能がない訳でなく、土魔法はマヌにピッタリで、今後無事に卒業することができたのならその頃には土魔法を自由自在に操っていることだろう。
メイトの魔法はこれまでも見てきたが、闇なのだが澄んだ闇というのかメイトの纏う闇はベールのようで好きである。人を守るような隠すような闇はメイトの性格とは真反対であるが、攻撃力も強くメイト自身を強化しているようであった。問題を起こさなければメイトも卒業するころには、学年でトップを誇れる実力を持っていることだろう。
魔法は性格が出る、同じ魔法でも使う人によって様々だ。人を守るような温かさ、自分を強くする意志、相手を攻撃する冷たさ、相手に対する敬意、自分を守るための強さ。魔法は奥が深いから面白い。
僕は三人の魔法をみながらほほ笑んだ。
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お昼頃になったころ、メイトが疲れた表情を出しながら大きく地面に伸びた。
「腹減ったぁ!」
もう動けねぇ、とお腹を押さえる。マヌもそれに同意し、腰下ろし空を見上げお腹の音を響かせた。
おかしな二人を見てオルカと僕は顔を見合わせて軽く笑った。僕とオルカ二人の笑う顔はそっくりであった。当たり前だ、魂が同じなのだから、変えようとしても変えられないものがあるものなのだなと僕は心の中で思った。
「そろそろご飯時だもんね。なにか食べようか」
オルカが僕の心情に気が付かないまま、皆に優しく言うと、マヌが先ほどまで伸びていたとは思えない程元気よく手を挙げる。
「俺、街の商店街希望!食べ歩きしたい!肉串食べたい!」
マヌは元気よくそういうといいよな、と僕たちの顔を見渡した。マヌは断られることを想定していないかのように、眼をキラキラと輝かせていた。
「まぁ、いいんじゃね」
「僕もそれでいいよ」
二人が賛同したのを見てマヌは最後に、ルーアは?と聞いてくる。
「いいよ」
「よっしゃ、じゃ行こうぜ」
一緒に行く前提なんだな。まぁいいけど
もう行く気の三人を止めるすべは僕にはなかった。
街は人で賑わっている。街には多くの屋台が出ていて、それらからいい匂いが漂ってくる。この街の賑やかさは何かイベントがあるわけではなく、魔法使いの街で観光地だからだ。そのせいか街にいる人も異国人が多く、いろんな言語が飛び交っている。
「全部美味しそ~!」
マヌは色んな屋台を見て今にもよだれを垂らしそうだ。もう何回も訪れているだろうに、オルカもマヌも街を観る目がキラキラしている。メイトはどうだ?と後ろにいるはずのメイトを見ると、もう食べ物をたくさん手に持っていた。
「なにしてるんだい」
「たへつふ」
「食べてるのは見たら分かるよ。全く君、最近買い食いしすぎだよ。」
お金を使い過ぎたと最近いってたのに、また沢山食べ物を口に頬張らせて。これだから後先考えない人間は、どうせ今度お金が足りないなどと言って僕にお金をせびってくることだろう、そう考えていたら目の前にいきなり串焼きが現れた。
「うめぇぞ」
串焼きを持っている先を見れば予想通りメイト。メイトはほら喰え、と串焼きを差し出し口に容赦なく口に近づけてくるので、仕方なく一口食べる。
「だろ」
僕は何も言ってないのにメイトがにかッと笑ってくるので、まぁねと返しておいた。食べた串焼きはとても美味しかった。




