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Das Heldenlied Neu ヘルデンリート・ノイ  作者: Siberius
Neu Artemidora
34/196

ドレイク

司令官といえども人である。

司令官も人であることから逃れられるわけではない。

司令官にも人間心理は適応される。

マイヤー、ヴァインベルクと立て続けにテンペル攻撃司令官が処刑されていた。

第三の司令官であるパウルス(Paulus)は前任者たちの哀れな末路をよく知っていた。

つまり、任務失敗……撤退でさえもそれは「死」を招くということを……

パウルスはまだ死にたくなかった。

そこでパウルスは考える。

自分が死なない方策はないであろうか?

つまり、決して負けないこと。

そして勝たないことである。

そのせいか、ツヴェーデン軍歩兵部隊は消極的な戦いに終始した。

前線の兵士たちはどこか及び腰なのだ。

それはパウルス司令官の心理状態をそのまま反映していた。

初めスルトはこれを一種の罠と思った。

しかし、アンシャルと話をしてみると、違うことがわかった。

「私は敵の状態が明らかにおかしいと考える。アンシャル、おまえはどうだ?」

「そうだな。前回と前々回の司令官は撤退の罪で処刑されたらしい。つまり、そういうことか?」

「ふむ……敵の司令官とて人だ。前任者たちがたどった哀れな末路を思えば非難できまい。それよりも非難されるべきは魔女だ。どうやら魔女の軍隊では、任務失敗は即「死」というわけか。これでは司令官が保身に走るのもうなずける」

「どうする? こちらから攻めるか?」

「敵は大軍を投入している。広い場所での戦いは避けたい。包囲されるからな。だが、このままでは戦況は変わらんだろう。あえて不利なところに移動して、ツヴェーデン兵を誘い込む!」

スルトは全軍に指令を発した。

各大隊長に指令を託す。

パウルスは聖堂騎士団が有利な場所から動いたと報告を受けた。

これを聞いたパウルスは飛びついた。

「よし、歩兵部隊と騎兵部隊を前進させろ! 聖堂騎士団を包囲、殲滅するのだ!」

パウルスは会心の笑みを浮かべた。

騎兵部隊はパウルスの命令もあって功を焦った。

そこに槍騎士が現れて、槍で騎兵を攻撃してきた。

この槍騎士は対ツヴェーデン軍向けの部隊だった。

中央の歩兵部隊も精彩を欠いた。

「えーい! いったい何をやっているのだ! 数ではこちらが有利なのだ! 数ではこちらが!」

「パウルス司令……」

「何だ!」

「あの者たちを呼んではどうでしょうか?」

「何い? バカな! あんな不正規兵など信用できるか! ここは我々が死力を尽くすべきだ!」

「不正規兵とは言ってくれるな、パウルス司令官?」

「ドレイク(Dreyk)!? きさま、何のつもりだ!?」

「何、苦戦しているようだったから我々が手助けをしようと思ってな」

「きさまら!」

「我々の戦闘準備はできている。カーダシュ(Kaadasch)! ジュナイド(Jchuneid)! ガウルス(Gaurus)! セリオン・シベルスク、アンシャル・シベルスク、アラゴン・ダンスクの三人を討ち取れ! それでこの戦いの結末が決まる」

「「「は!」」」

「うおおお!?」

「がはっ!?」

「だああああ!?」

セリオンはツヴェーデン兵を斬り刻んだ。

セリオンの戦いぶりは英雄の名に恥じぬ戦いぶりだった。

セリオンの前に敵はない。

彼が道を作るのだ。

それは誉れへの道であった。

その時、聖堂騎士たちはツヴェーデン兵相手に攻勢を開始した。

主戦力である敵の騎兵部隊はすでに槍騎士たちによって撃退していた。

前に出すぎた歩兵たちは次々と討ち取られた。

ツヴェーデン軍が突然左右に割れた。

そこに黒いボディースーツを着た男たちが現れた。

「ぼくはカーダシュ。セリオン・シベルスク! ぼくと戦え!」

「私はジュナイド。アンシャル・シベルスクよ、いざ尋常に勝負せよ!」

「へへっ! 俺はガウルス! アラゴン・ダンスク! この俺と戦え!」

「おまえたちは何者だ!? 人ならざる力を感じる!」

「フフフ……ぼくたちはケルベリアン(Kerberianer)。アルテミドラ様と血の契約をかわし、闇の力を得た者たちだ」

「……つまり、魔女の狂犬というわけか」

「さあ、戦おうじゃないか!」

「いざ参る!」

「行くぜえ!」

アラゴン対ガウルス。

ガウルスは左手のクローでアラゴンを斬りつける。

アラゴンは長剣でそれらをさばく。

「ハッハッハッハ! 俺たちをザコ兵といっしょにするなよ! この闇の力、体がはちきれそうだぜ!」

「闇の力に囚われるとは哀れな……私がその闇を払いのけて見せよう!」

「ククク、できるかねえ! そら!」

ガウルスはアラゴンに蹴りを出してきた。

「ぐおあ!?」

アラゴンは蹴りで吹き飛ばされた。

「アラゴン・ダンスクの首、この俺がもらったー!」

光炎剣こうえんけん!」

「何!?」

アラゴンは光の炎を出した。

明るい炎がガウルスをとどまらせる。

「そんな攻撃にビビるかよ! 闇力爪あんりょくそう!」

ガウルスが闇の力をまとった爪で突き付けてきた。

アラゴンは光炎剣でそれを迎え撃つ。

二人の技がぶつかり合った。

「くおおおおおお!?」

「ぐあああああああ!?」

二人とも叫び声を上げる。

「ちいっ! 魔昇爪ましょうそう!」

ガウルスが強力なアッパーを出した。

「うおああああ!?」

アラゴンはまたしても飛ばされた。

「しゃあああ! くらいやがれ!」

ガウルスが爪で突きを繰り出す。

アラゴンは長剣による突きを出した。

長剣はガウルスを貫いた。

「がっ!? ウソだろ!? この、俺が……」

一方アンシャルとジュナイドは……

アンシャルは風切刃を巧みに放ってジュナイドを防戦一方に追い込んだ。

ジュナイドは「土」を扱う。

ジュナイドがハルバードで防戦一方なのはアンシャルがそう誘導しているからだ。

ジュナイドはハルバードを持っていた。

「くっ!? これがアンシャル・シベルスク!? まさかこれほどとは……だが、アルテミドラ様の名において、負けるわけにはいかぬ! はっ! 地爆槍ちばくそう!」

地面が爆ぜる土の攻撃だった。

「何!?」

ジュナイドは呆然とした。

アンシャルは全周囲に風の渦を作り、それで地爆槍を無力化したのだ。

「見えるか、この渦巻く風が? 確か、ジュナイドとか言ったな? この風を受けてみよ! はあああああ! 風王衝破ふうおうしょうは!」

アンシャルは風の打撃をジュナイドに叩き込んだ。

「ぐっはああああああ!?」

ジュナイドは空高く上がり、落下した。

ジュナイドは戦闘不能になった。

セリオン対カーダシュは……

カーダシュは刀でセリオンを斬りつけてきた。

セリオンはそれを的確に受け止める。

カーダシュはジャンプして、軽く一回転し、斬りつけてきた。

「くうう!?」

「フハハハハハ! どうしたんだい? これが青き狼の、英雄の実力なのかい? ぼくの力の前には手も足も出ないかな?」

カーダシュは接近して風の刃で攻撃してきた。

カーダシュの「疾風刀しっぷうとう」である。

セリオンは蒼気でこれをガードする。

「なっ!? その闘気は!?」

「これからが俺の反撃だ。俺はおまえの力を測っていた。では、行くぞ?」

セリオンが大剣でカーダシュに斬りつける。

カーダシュは両手を使ってセリオンの大剣を防ぐ。

「ぐううううう!? まさか……このぼくが押されている!? そんなバカな!?」

カーダシュは疾風の刃を飛ばしてきた。

セリオンは蒼気の刃でこの攻撃を斬り裂いた。

「蒼波刃!」

セリオンは蒼気の刃を飛ばした。

カーダシュはこの攻撃を疾風刀で防ぐ。

セリオンが一気に間合いをつめた。

そして、強烈な一閃を放った。

カーダシュはセリオンの斬撃によって斬られた。

「ウ、ウソだ……このぼくが……」

カーダシュは倒れた。


三人のケルベリアンたちはセリオンらに倒された。

「う、うそだろ……」

「ううう……まさか……」

「ケルベリアンがやられた……」

「うわあああああ!?」

兵士たちは敵の前から逃亡した。

「逃亡するなどと、兵士としての覚悟が足らん! その命を使い果たせ!」

パウルス司令官が怒号を放った。

爆炎がツヴェーデン軍で起きた。

「俺はドレイク。ケルベリアンのリーダーだ。どうやら、カーダシュもジュナイドもガウルスもやられたようだな。ならばこの俺自ら相手になろう」

「アンシャル、アラゴン、手を出すな。こいつとは俺が戦う」

「ああ、わかった。気をつけてな」

「セリオン、おまえが勝つと私は信じている!」

「お初にお目にかかる。セリオン・シベルスク、それでは一騎討と行こうではないか! はあ!」

ドレイクが大きな曲刀で攻撃してくる。

セリオンはドレイクの武器に違和感を感じた。

この曲刀は斬り捨てる武器だ。

ドレイクの曲刀は湾曲していた。

セリオンはドレイクの曲刀と斬り結ぶ。

「シャアアアアアアア!」

ドレイクが大曲刀でセリオンに斬りつけてくる。

セリオンも大剣で斬りつける。

二人の武器はいずれも大型であることで共通していた。

セリオンは直線的、ドレイクは曲線的。

二人の剣撃が激しさを増していく。

「ぐっ!?」

先に音を上げたのはドレイクだった。

「武器を使っての戦いではおまえが有利か。だが俺には技がある! くらえい! 爆炎斬ばくえんざん!」

爆炎の刃がセリオンを襲う。

セリオンは蒼気を展開した。

セリオンはこの攻撃を蒼気の刃で無効化した。

「ほう、よく防いだ。だが、これはどうだ? 爆炎破ばくえんは!」

ドレイクは爆炎の斬撃をセリオンに向けて放った。

爆炎がセリオンを包み込む。

ドレイクは次の技を出した。

爆炎一刀斬(ばくえんいっとうざん!」

強力な爆炎による一刀。

セリオンは蒼気でこの攻撃を受け止めた。

爆炎波動斬ばくえんはどうざん!」

ドレイクが最強の技を出した。

爆炎が進んでセリオンに迫る。

セリオンは蒼気を集めると、翔破斬を出した。

セリオンの技とドレイクの技が正面衝突する。

セリオンはそれから銀光の波をドレイクに向かって放った。

「なっ、何!?」

ドレイクが「銀光波ぎんこうは」に呑みこまれる。

「くっ、くそ! この俺としたことが……」

「まだやるか?」

「……フン! せいぜい首を洗って待っているがいい! さらばだ!」

ドレイクは一人逃亡した。

パウルス率いるツヴェーデン軍は総崩れを引き起こした。

パウルス司令官は叫んだ。

「撤退だ! 撤退する!」

パウルスを乗せた装甲車は逃亡した。

一般のツヴェーデン兵も逃げ始めた。

完全に総崩れだった。


「敵に負けてむざむざと帰ってくなど……闇の理を理解していないようだな」

アルテミドラは竪琴を奏でていた。

きれいな音色が奏でられていたが、その場にはドレイクの叫び声がこだましていた。

アルテミドラはドレイクに「罰」を与えた。

ドレイクは竪琴が奏でられるたびに、床をのたうち回り、苦しみにさいなまれた。

これは魔女と血の契約を交わした代償だった。

アルテミドラは冷酷に竪琴を奏でていく。

とても美しい音色が、ドレイクの叫び声と調和していなかった。

そしてそこにはパウルス司令官もいた。

ただし、氷漬けにされて。

「パウルス司令官、許しとやらは聞き入れた」

パウルス司令官の最後の言葉は「お許しを! 慈悲を! アルテミドラ様!」だったが、パウルス司令官の失態は「死によって」許された。

「それにしても、テンペル! テンペル! あくまで闇にあがらうか! 忌々しい奴らだ! それにしても、ツヴェーデン軍は思ったほど使えんな。これほど役に立たないとは思わなんだぞ。フフフ……結局は我が宿敵と直接戦いを交えるしかないか……」

アルテミドラは竪琴の演奏をやめた。

ドレイクが荒い息をしていた。

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