さんつぶの涙
エステリア地方につたわる、三人の賢者とドラゴンのおとぎばなし
むかしむかし、あるところに、三つの国がありました。
それぞれの国には、たいそう賢い賢者がひとりずつ住んでいました。
あるとき、国々に恐ろしい病がはやり、たくさんの人々が苦しみました。
「万病を治すという、龍の涙を探しに行こう」
三人の賢者は、それぞれの国を代表して、旅に出ることにしました。
長い長い道のりの果てに、三人は、高い山の上で眠る一匹のドラゴンに出会いました。
「どうか、涙をひとしずく、わけてはくれませんか」
一人目の賢者が言いました。
「わたしは、あなたのために、とびきりのごちそうを用意しました」
ドラゴンは、大喜びでごちそうをたいらげました。
けれど、おなかがいっぱいになったドラゴンは、そのまま、ぐうぐうと眠ってしまいました。
涙は、もらえませんでした。
二人目の賢者が言いました。
「わたしは、あなたのために、きらめく宝物をお持ちしました」
賢者の剣には、美しい宝石と金がちりばめられていました。
けれど、あまりのまぶしさに、ドラゴンは目を閉じてしまいました。
涙は、もらえませんでした。
三人目の賢者は、ごちそうも、宝物も持っていませんでした。
かわりに、ドラゴンのために、祝福の歌をうたいました。
けれど、賢者の声はあまりに小さく、ドラゴンは耳をすまさなければ聞こえません。
疲れたドラゴンは、そっぽを向いてしまいました。
涙は、もらえませんでした。
三人の賢者は、肩を落として、山を下りることにしました。
ところが、そのときです。
ゴゴゴゴ、と大きな音がして、山が崩れはじめました。
三人は、山の中に閉じ込められてしまいました。
「たいへんだ、たすけなければ」
ドラゴンは、なんども、なんども、山の内側から体当たりをしました。
やがて、大きな穴があき、三人は、外の光を見ることができました。
けれど、ドラゴンのからだは、傷だらけになっていました。
三人の賢者は、山を下りるのをやめ、ドラゴンのそばに残りました。
そして、傷の手当てをしながら、何日も何日も看病をしました。
その優しさが、うれしかったのでしょう。
ドラゴンの大きな瞳から、ぽろ、ぽろ、ぽろと、三粒の涙がこぼれ落ちました。
三人の賢者は、その涙を、大切に手にとりました。
そして、それぞれの国へ持ち帰り、病に苦しむ人々を救ったということです。
めでたし、めでたし。




