160 憧れダーク
誤字報告ありがとうございます!
「はわわわわわわわ」
「はわあ~」
「あわわわわ」
「あわあわ」
「はわわっはわわ」
南大陸を目の前にのぞむ甲板で、自称海エルフ達が口元に手をあて、熱い眼差しをもってはわはわあわあわしている。ラブコメ系少女漫画のようなリアクション。
彼らは数日のダンジョン攻略の影響で白く美しい肌に変貌を遂げている。というか、元のエルフらしいエルフに戻った。筋肉も、ダンジョンから戻って急いでジムに通い直したようだけど、まだ細い。でも細マッチョしてんだから俺からいわせたら充分だろ。
日サロのマシーンにも何度か入ってるみたいだけど、ダンジョン戻りの数日でダンジョン攻略期間の数日分の取り返しはつかないらしい。難しいな、エルフって。
そんなエルフ達は、南大陸の陸地でこちらを警戒している、地黒かつめっちゃ日焼けしてムッキムキの筋肉してるエルフ達にドギマギと羨望の眼差しを送っている。
あちらのマジモンのガチムチ色黒ダークエルフっぽい彼らは、こちらのバカでかい船に警戒している。まあ、当然ですよね。下手したら魔物として討伐されかねない。
でも一応その上に人らしき俺らがいるからまだ攻撃されていない。
交渉は可能のようだ。分別あるエルフっぽくてよかった。まだエルフかどうかわかんないけど、見た目はファンタジーでよく見るダークエルフだね。筋肉ムキムキの。厳つい感じの。知的な感じもする。
……海エルフが日常になり過ぎて、あのダークエルフっぽい人たちが配慮あるまともなエルフに見える。
まだ話してないけどなぜか既に好印象を持っている俺がいる。
こちらから見える範囲で、南大陸の陸地にはダークエルフっぽい人たちしか見当たらない。どーすんだろ? とメンバーを見ると、カジュが前に出た。
そして風魔法か音魔法か、何らかの魔法で自分たちの声をあちらにお届けし始めた。
交渉が始まり、数分も経たずにけりがついた。
すげえな、文官エルフとあちら側のダークエルフ。
彼らはちゃんとダークエルフだった。
受け答えもきちんとしていた。話せばわかる系だった。すばらしい。
「我々は友となり得るあなた方を歓迎する」
「ありがとう存じます。我々もあなた方の友となり得るよう尽力いたします」
ダークエルフの人とカジュが話をまとめた。
上手くまとまったようだ。
種族の問題もないようで、全員船から下りることができた。
「うわっ、なに?」
俺が陸地に降りると、どこからともなく妖精さんたちがやってきた。
当然普通にビビる俺。
妖精さんたちは俺の周りをフワフワ飛んで、めっちゃ見てくる。
それをマモルが口に手を当てて声を出さないようにしているのか、静かに興奮してキラキラした目で見てくる。
向こうではダークエルフ達が海エルフたちに同じような感じでめっちゃ見られている。
俺は改めてダークエルフに好感を抱く。同士かな。なんか怖いしうざったいしで心がソワソワするよね。わかるわかる。
「あなた不思議」
「あなたニンゲン、ね?」
「ちがうわ、妖精よ」
「妖精なのにニンゲンなのよ」
ニンゲンが正解ですね。
でもニンゲンのニュアンスが人間と違うのがちょっと引っかかる。
小さな妖精族の間で流行っている発音だと思っておこう。
そしてあちらでは海エルフ達が騒いでる。面倒くさい感じに。
こじらせてるといった方がいいか。なんか言葉だけはツンツンしてるが、表情がたまに我慢できなくて一瞬デレッとしてなんか……、うん。なんかだ。
「ふん、なんで我々が黒いのと友とならねばならんのだ。文官殿らがどう話をつけたかは知らんが我々は貴様らを友とは思わん」
推しに友だなんておこがましいです。崇拝させてください。
って聞こえる。
お前ら黒い肌、憧れてるもんな。
「貧相な衣をまとってわざわざその丸太のような腕を見せつけているのか? 野蛮人どもめ」
憧れのワイルドな服装かっこいいです! その上腕二頭筋タダで見せてもらってもいいんすか!? マジかっこいいっす!
って聞こえる。
海エルフが言葉遣いから恰好まで野蛮スタイルに見える努力してるの知ってる。
「エルフなど名乗っておきながら槍など持つとは、嘆かわしい。弓を扱ってこそエルフだ。今後エルフなど気安く名乗るな」
エルフなのに槍持ってても違和感ないとかマジ熱い! ダークエルフが俺らと同じエルフだなんて。ありがとう、ダークエルフ。俺たちと同じ種族と言ってくれてありがとう!
って聞こえる。
海エルフなんて北大陸いたとき港で銛持って魚突いてもんな。遠くから見たら槍と変わらんもん。本物の槍持ったダークエルフ見れて嬉しいんだろうな。
対する言われた方のダークエルフは、
「お互いまだ出会ったばかり。大陸が違えば何かと慣れぬことも多かろう。この地にいる間、あなた方とも少しでも友誼を得られればと思っている」
大人な対応。あたたかな眼差し。まるで孫の反抗期を見守っているかのよう。祖父みがすごい。
「ここは温かいからなあ。肌を守るためには袖のある服を着た方がよいのだろうが、これがなかなか。一応薄手のマントもあるにはあるのだが、夜や森の中に入るとき以外は纏わんなあ」
穏やかな対応。しかも至極もっともな理由だな。
熱そうだよな、ここ。俺たちは一応【堅牢なる聖女の聖域】の結界オプションで快適な環境を保たれているから涼しい顔してられるけど。
「ははは。我々も弓は多少の嗜みはあるが、剣や槍で狩りをするのが性に合っているようでな。このあたりでは魚をよく食すゆえ、槍ではなく銛を扱うことも多くてな。なかなか一つの武器を使い続けるのが難しいのだ」
海エルフにとっての神対応か。「え、銛ももってるの!? 槍持つ機会なくて銛持ってたのに推しも同じく銛使ってたー! ヒャッホーマジか!」みたいに思ってるんだろうなー、とわかるくらい海エルフのこと知っちゃった自分が嫌だ。
それにしてもダークエルフ。なんて嫌みのないやつらなんだ。爽やかでいいやつらすぎる。
ダークエルフはみんなこうなのか?
それともここにいるダークエルフがいいやつ系なだけなのか?
あまりにも興味がなさすぎてカジュにダークエルフについてあまり深く聞いてなかった。たまに見かけることはあっても知り合いとかには……いたようないなかったような? 正直異世界に来ていろんな種族みたらあまり印象がないんだよな。
「あら、この子わたしたちがみえないのかしら?」
「わたしたちより興味が行くものってこの場にある?」
「ニンゲンは妖精が好きなのよ?」
「妖精も妖精が好きよ?」
妖精たちが俺の周りをぐるぐるふわふわして目が回りそうで直視できない。したくない。
目を合わせたら終わりだと思えるくらいには関わりたくない何かを感じる。
なんかこう、かまってかまってアピールがすごいっていうか。しかも俺が返事をためらっている間に妖精たちの俺への興味がもう一段階上がったようにキラキラした眼差しまで向け始めてる。
それをまたマモルがうらやましそうにくるくる目で追っててあの勇者ハルトがドン引きしている。
勇者がドン引きしてるんだもの、そりゃ俺も引くよね。
俺は気を紛らわせるためにある意味現実と向き合う。
「さてカジュ、これからどうするんだ?」
南大陸に上陸したのはいいけど、ここからのプランはよくわかってない。
「あなたこの状況でよくそんなこと言えるわね」
本日3月5日『追放された職業【男子高校生】ですが、聖女スキルを隠して友だちと旅します。』3巻の予約開始です。よろしくお願いします!
(たくさんのひとに読んでもらえた奇跡が発動して3巻が…!ありがとうございます!嬉しいです!)




