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158/160

158 いるだけでいいんだ

誤字報告ありがとうございます!

 


 学校の日直の帰りの挨拶みたいなお祭り開始の挨拶をして、お祭りが始まった。

 地響きのような歓声が上がる。

 こういうときいつものようにビクッとしてめっちゃ引く俺。

 みんなとテンションが違った。テンション間違えたかも。

 日直風じゃなくて壮行会風の挨拶にしとけばよかった。したことないけど。


 俺の可哀想な感じの挨拶の終わりとともに、さっきまで普通にしていたベテランケットシー達がずっとソワソワしていた若いケットシー達を押しのけ、スティックの液状おやつのプールに我先に飛び込んで腕に抱えられるだけ抱えてフッと【アイテムボックス】っぽいスキルにないないしている。

 若いケットシーはまだ【アイテムボックス】を使えないのか、必死にバッグやリュックに詰め込んでいる。そして液状おやつがなくなるそばから配下久遠の騎士達が魔法鞄から補充しているという……現象? 俺はいったい何を見させられているんだ。見なきゃいいのはわかっているけど、ついつい見ちゃってる自分が憎い。


 奴隷の人たちは喜々として酒を飲み、肉にかじりつき、パンをむさぼっている。その中でも子供たちはお菓子エリアに行ってるかな? 駄菓子から老舗の高級和菓子まで、ラインナップは揃えてある。おすすめはコンビニのもちもち食感系スイーツだが、遠慮せず好きなものを好きなだけどうぞ。


「祭りらしい祭りッスね」


 俺と同じ、高見から祭りの見物をしていたシロネがつぶやく。

 お立ち台にはシロネさんもいてくれている。シロネさんにはゆっくり安全に俺をお立ち台から降ろしてくれる役回りをお頼み申したので。

 久遠の騎士さんたちね、ふつーにあの高さから颯爽と飛び降りるんだぜ。俺を横抱きにしてそれをやろうとするんだ。こええよ。トラウマ確定だよ。

 その点シロネさんはちゃんと俺をおんぶして、ハーネスみたいなのつけて、階段梯子を一段一段丁寧に降りてくれている。ありがたい。

 あれだな。城の片隅にでもシロネ神社とか作ろうかな。


「そうか? 建国祭ってくらいだから来賓いたり、出し物あったりすんじゃないっけ?」


 高いところから降りて、ハーネスみたいなのを外してもらいながら俺の勝手なイメージをお返事する。


「っ!!!?」


 シェヘルレーゼがめっちゃ衝撃を受けている。

 どした。


「わたくしとしたことがっ!」


 なんだよ、すげーくやしそう。


「町や村の単一規模の豊穣祭のデータしかなかったですからね。誕生祭は帝国のデータはありますが、それだけですし。そもそもこの農地は特殊な環境下にあります。お客様をお呼びするという考えに思い至りませんでした」


 アーシュレシカもしょんぼりしている。


「でもほらアレだ、リアルな大型ショッピングモールやコンビニ、その他商業施設なんて他には見せられないもんなーーー……ぁぁあっ! ハルトたち呼べばいいのか。俺の心に余裕があれば女子たちも。端末内での買い物には慣れただろうけど、実際手に取って買い物もたまにはいいんじゃね? それに俺の【異世界ショップ】、他の人のヤツのより生活に特化したやつなんだろ? それこそ衣料品とか魔道具化された便利家電とか品揃えが豊富っぽいし」


「ハルト様方はマチチューカに大変感動してたッスよね。たしかにあれはおいしかったッス。ショーユラーメンとタマゴチャーハンは無限食べてたかったっス」


 あのときシロネはチャーシュー麺20杯以上、各種チャーハン計30皿以上食べていたと思う。他にも餃子や焼売、エビチリとかも何皿も食べていたから無限とか大げさなことを言っているわけではなさそうなのがなんとも言えない。思い出したら急に胃もたれしてきた。聞き流そう。


「なるほど。そういえば飲食店系もうらやましがられたな。【異世界ショップ】も職業に関係してるっぽいからなー。ってわけで、これはこれでいいんじゃないか? 異世界の祭りって感じで。酒ドーン! 肉ドーン! とろ……いや、ちゅ……じゃなくて、液状おやつどー……ん? みたいなさ。そのうち慣れてきたら屋台とか出したらいいんだよ」


 たぶん。


「ではハルト様方をご招待いたしましょうか」


「う、うん……」


 言っといてなんだけど、祭りよりダンジョンとか言われる確率98パーセント、という数字が頭をよぎる。

 でもあとから「祭りとか普通誘うじゃん!」とかも言われそう。どっちでもなにかしら言われそう。とりあえず社交辞令的にお祭り誘っとけばいい気がしてきた。



 結果、俺の予想は当たった。

 ハルトには「あ、大丈夫です、今いいとこなんで。ボスなんで」と。

 マモルには「えー、さすがセージ絶妙すぎるタイミングだよねー。誘ってくれてありがとう。でも僕も今ちょうど手が離せなくてさー。残念だけど今は、ってか今日明日は無理かなー。なんか今戦ってるボスめっちゃ再生するんだよねー。長丁場になりそーかな。え、こっち手伝う? あ、ううん、いいからいいから全然いいよ、大丈夫だから。セージはほら、お祭りの主催してる側なんでしょ? 抜けたらだめだよ? ちゃんと最後までやりきるのが王様なんだからね? いーい? わかった?」とのお返事が。

 二人は俺にすぐ返事できるくらい余裕かましながらボス戦していた。

 一応お伺い立てて「ボス戦手伝おうか?」って言ってみたら丁寧にお断りされた。してくれた。いいやつらかよ。

 そうだよな。勇者と賢者でバトルパートしてくれるんなら、俺は生活パートしよう。内政とか商売とか物作りとかは出来るヤツにお任せしてあれするけど。

 あれだな。俺はそう、そうだ。配下久遠の騎士を世界中に送り込んで日本に帰れる手段探そう。座して待つ的なムーブしよう。たまに寝転がってごろごろしてみるとかそれしよう。

 え、女子? ニコニコ笑顔の絵文字ひとつの返信で感情やどんな意味の返事か全くわからなかったから、とりあえず「OK」って返して終わった。ほんと、あれどーゆー意味なんだろ…。

 もう俺は「俺に何かできることは……」とか悩んだりしない。

 べつに「できないんだからしょうがないじゃないか!」とか開き直っているわけではない。なんかやったりやらなかったりした結果が現在なんだ。なんか、王様しているだ。お祭りなんかもしちゃったりなんかしてる。よくわからないんだ。


 たぶんこの世界からもとの世界に帰るには、どこぞの国やダンジョンの何かしらのなんらかのなにかが鍵となるんだと思うんだ。なんとなく。違うかもだけど。

 物理でも魔法でも頭脳でも戦える能力のない俺には手も足も出ない。盗賊系のスキルもない俺にはどこぞの国の宝物庫的なそこに忍び込めもしない。

 だから、俺に出来ないならできそうなやつらにとりあえずやってもらうしかないんだ。

 そう、そこで暇そうにしている配下久遠の騎士くん! 君いいもん持ってるよね? どこでも行けちゃう扉持ってんよね? え? 俺が行ったとこしか行けない感じ?

 いいよいいよ。世界中ちょろちょろうろちょろするぐらいなら俺にも出来る。

 護衛として久遠の騎士は必要だけど、行動範囲増やしていくくらい戦うことに比べたら全然オッケー。たぶん余裕でオッケーだぜ。

 そして俺がうろちょろしたところを起点にしてさらに足場を広げてくれ。手始め的に単独ダンジョン攻略とか全然してくれてかまわないよ。そのときはきちんと宝箱を拾ってきてね。そういうお土産待ってるから。


「セージ様」


「なにかね、シロネくん」


「えっ? あ、いや、なにというわけじゃないんスけど、あまりに凜々しい表情をしてたッスから。また妙案でも浮かんだんスか?」


 シロネは俺にくん付けされるとちょいビビりする。おもしろいのでついたまにくん付けしてしまう。でもスルーするときもあるんだよな。そのうち完全スルーされないようにあまり多用しないように気をつけねば。

 あと気になったんだけど、俺にいつ妙案浮かんだときがあったよ。んなことあったことなど一度もないと思うぞ。まあ凜々しいってのはいいね。あんま言われたことないから嬉しい。嬉しいけど嬉しがっているそぶりなど1ミリも出さないようにする。ちょっと鼻ひくひくふくらんでないよね? 大丈夫だよね?


「いや、妙案とかじゃ全然ないけど、それぞれの大陸のいろんなところに配下久遠の騎士派遣してときどきよさげなダンジョンとか入ってもらっていい感じの宝箱のお土産拾ってきてくれたらうれしいなー、とか妄想していただけだ」


 うん。ただの妄想だよ。俺だってダンジョン攻略のマナーとかデリカシーとか暗黙の了解的なアレは理解してるよ。なんとなく思っただけなんだ。


「まあ! それは大変よい案ですわね! 我々に独自でダンジョンに入る許可をくださるので?」


 キラキラ……ギラギラした目で懇願するような、希望見いだしたような顔して俺を見てくるシェヘルレーゼとアーシュレシカ。なんだかうれしたのしそうな雰囲気を醸し出している。

 え、別に許可とかなにもなくてもお前らめっちゃ独自的に自由にしてんじゃん。違うの? 俺の目は節穴だったの!?  

 てか俺の妄想的ななんとなくな思いつきを真摯に受け取ってしまっている。

 こりゃまずい。ハルト達に怒られ……いや、きっとたぶん絶対大丈夫だ。有名どころのダンジョンじゃなくて未発見のダンジョンなら問題ないよな!

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