「鳴海美佑への依頼」
翌日、江戸川と工藤は、鳴海美佑の自宅兼スタジオを訪ねた。
「探偵さんたちが、私に会いに来るなんて……何かあったんですか」美佑は興味津々の様子だった。
工藤が事情を説明する。もちろん、一石や樋口家の詳細な事情までは明かせないが、「誤解に基づく噂が広がっており、事実と異なる情報が拡散されている」という点は正直に伝えた。
「村田さんの動画、私も見ました。ちょっとやりすぎだなとは思ってたんです」美佑が苦笑する。
「そこで、ご相談なんですが」江戸川が切り出す。
「もし可能であれば、美佑さんの方から、『冷静に事実を確認した結果、危険な組織ではなく、文化交流目的の訪問者だった』という趣旨の動画を上げていただけないでしょうか」
美佑はしばらく考え込んだ後、にやりと笑った。
「面白い話ですね。ただ、条件があります」
「条件、ですか」
「今度、この話の『本当のところ』を、いつか私だけに教えてください。今すぐじゃなくていい。落ち着いたら、で」
江戸川と工藤は顔を見合わせ、苦笑した。
「……それは、一石さんに相談してみます」
数日後、美佑は「多治見の外国人目撃情報について、現地取材してみた結果」という動画を公開した。
冷静な語り口と、地元密着ならではの説得力ある内容は、瞬く間に村田の陰謀論動画の再生数を上回り、騒動は次第に沈静化していった。
「らくか」では、太田が安堵の表情で茶を淹れていた。
「いやぁ、参ったね、今回は。斎藤さんも、少しは懲りたかね」
斎藤は小さくなって、隅の席で頭を掻いていた。
「面目ない……今度からは、本当に気をつけます」
根古が店の隅で、ヤマトを撫でながら、静かに笑った。
「今どきは、噂も嘘も、あっという間に広まる時代だ。だが、それを打ち消す力も、案外身近にあるもんだな」
一石が静かに頭を下げた。
「皆さんのおかげで、大事にならずに済みました。改めて、感謝申し上げます」
窓の外、多治見の空はいつも通り穏やかに晴れていた。
しかし四人の探偵たちは、この一件を通じて、自分たちが関わっている話の大きさを、改めて実感していた。




