VS希望龍(前編)①②
俺たちがリスポンされてから数十秒間は、何も言うことが出来なかった。やっとのことで口をひらいたのは、ケイトだった。
「おい……俺たちやられたのか……?」
俺はその一言で全てを理解した。そう俺の初クエストは最悪の結末で終わったことを……。
「……あぁ……お前がいちゃもんつけるからあああああ!!!俺の初クエスト台無しじゃねぇか!!!」
「おいおいおいおい!俺のせいか?てか、お前初クエストにこだわり過ぎなんだよ!」
「うるせぇよ!俺はなんでも初めては大事にしたいタイプなんだ!」
「うわ、お前絶対だろ」
「う、うる、うるせいよ!」
「図星か。とにかくお前のせいで折角の時間限定クエスト台無だよ」
「こっちも、お前のせいで初クエストと時間限定クエスト台無しですよー」
「「てっめぇ!」」
俺たちは子供みたいな喧嘩をしていたら、師匠がやってきた。
「おいおい、なに喧嘩してるんじゃ」
「「あ、これには色々わけがありまして」」
「「おい!かぶってんだよ言葉が!」」
「真似してんじゃねぇよ!」
「ケイトこそ!」
「まぁまぁ落ち着け。何があったんじゃ」
俺とケイトはそれぞれ理由を話した……結果、どっちも悪いということになった。よくあるパターンだ。でも、師匠が言うんだから仕方ない……。
「まぁいいライバルができて良かったのぉ~」
「「良くないです!!」」
くっそ、ケイトのやつ俺のセリフ真似しやがって……。俺とケイトの間でバチバチっと電流が流れたような気がした。
「ところでだが、近々緊急大型アップデートがあるらしいぞい。詳細はよく分かっておらんがのぉ。言えることは一つ。新しいクエストが出るということじゃ」
「新しいクエストですか?それは、新しいフィールドでも出るんでしょうか」
「いや、違うんじゃ。時間限定クエスト系の新クエストじゃ」
「……というと?」
「名前は確か【特殊クエスト】と言ったかの。レアドロップ率、経験値、共に時間限定クエストの2倍とか……。そして、クエスト内容が鬼畜でのぉ……。ボスレイドらしい。しかも、そのボスレイドに新モンスターの追加。そして、SS級の上をいくクエスト難易度Z級……」
「な……なんだそれ……そんな上級ギルドでもキツいでしょ……」
「あの~ちょっといいですか?」
「なんじゃね。魚くん」
「(師匠にまで魚くんって呼ばれた……)ボスレイドってなんですか?」
「ボスレイドっていうのな。ボスを一体ずつ倒していくクエストのことじゃ。ボスを倒していけばいくほど難易度が上がっていく。とても難しいクエストなんじゃよ」
「じゃあ、Z級っていうのは……?」
「Z級は、地獄のZととも呼ばれる最凶最悪のクエストのことだ。Z級はイベントなんかでやってたんだが、誰もクリアしたことはない。だが、今回はイベントに関係のない形でのZ級なんだ。時間限定クエストみたいにいつ起こるか分からない」
「じゃあ、イベントの時はZ級に自分の意思でいけたってことですよね?」
「そういうことじゃな。でもな……逆にこの【特殊クエスト】をもしクリアしたならかなりの財宝と名誉を受けることになるじゃろうな。まぁ発生確率はかなり低いようじゃがな。はっはっは」
なんか嫌な予感がしてきた……。時間限定クエストといい特殊クエストといい……俺の運というのは、攻撃などで役立つ運ではないのではないだろうかと思えてきた。
「じゃあ俺は落ちますね」
「おう。お疲れじゃ~」
「お疲れ様です~」
そして、ケイトと目があった途端、
「「ふんっ!」」
と言ってお互いそっぽを向いて、俺はログアウトボタンを押した。
「はっはっは、青春じゃのぉ~」
◆
ログアウトした俺は昼飯を作っていた。もちろんリンの分も。というか俺の夏休み、ゲームする以外にすることといったら、朝昼晩の飯を作る以外にすることがない。なんか寂しい気もするがどうしようもない。
作り終わった俺は、リンにできたことを知らせた後、そそくさと食べてすぐにPCを起動させた。何をするかはもうお分かりだろう。ウィキペディウスを開く。師匠が言った情報以外に新しい情報が入っているかもしれないと思ったからだ。
「新しいアップデート状況はっと......」
しかし、師匠が言っていた情報とまるっきり同じだった。でも、一つ分かったことはアップデートは夜中にあるということだ。俺......てっきり午後からあると思って、ログアウトしてた......。
そうと分かった俺はすぐにログインをした。
なんか一人でもできるクエストでもしようと思ったのだ。また、時間限定クエストとか出たら困るけど......。
俺はそのままクエスト受注所に向かった。
「「なんのクエストにしよー......」」
ん?誰かと声がかぶった......?俺は声が聞こえた方に目をやると、声がかぶったであろうその人と目があった。どこかで見た顔だな.....どこで見たんだっけ......。
「あ......初心者狩りの時の!」
「あ、あの、えと、そそ、そのその件ではお世話になりまして!!お礼も言わず逃げてしまって、その......ごめんなさい!」
身長は150センチほどの小柄で、肩より少し長い黒髪は後ろで一括りにされている。その少女は、深々と頭を下げた。
「いや、そんな、頭を上げて上げて」
いきなりの行動に俺は焦りを隠せなかった。
「でも......」
「レムさんに【乙女戦神】に所属したって聞いたから、俺も安心してたんだ。あそこは強い人も多いし俺の妹もいるからね」
「はい、レムさんが紹介してくださって。本当に感謝しています!あなたに会っていなかったら私もうこのゲームやってなかったと思うし......。あ、私ユイリって言います。お名前はうおおおおお!!さんですか」
「あの〜名前......ハジメって呼んでくれないかな?」
「ハジメさんですか。分かりました!よろしくお願いします!」
そう言うとニコッと笑みを浮かべた。 ちょ、ちょっと何この子......。めっちゃいい子じゃん!!!なんか凄く守りたくなるような気持ちさせられる......。しかも、めちゃくちゃ礼儀正しい。暴君リンとは大違いだ。
「俺今一人なんだけど、ユイリちゃんも一人?」
「は、はい。そうなんです。少しでもクエストをしておこうと思って。じゃないとギルドの皆さんに迷惑かけちゃうし......」
「そっか!俺もなんだ!よかったらパーティーを組まない?一人じゃ心細くて......」
すると、なぜかユイリちゃんの顔が真っ赤になって、慌てふためていた。
「ほほほえええ!!!ほんとですかかかか?」
「あ、嫌だった?ごめん!無理にとは言わないよ!俺かなり弱いし!」
「いやいや!そんなことないですよ!是非ともお供させてください!!!」
真っ赤になった顔をブンブン振って否定してくれた。なんて優しいんだろうか。感動です。
「やった!じゃあ、フレンド登録しとく?何かと便利だしね」
「は、はい!」
そうして俺たちは一緒にクエストに行くことにした。なんで急にユイリちゃんの顔が赤くなったかは分からないがいい子なのは確かだ。
「どのクエスト行く?迷っちゃうなー」
「そうですね〜......」
クエストを決めるのに10分ぐらいかかったのだった。
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