~第32章-第1節 見えない距離~ 桐谷side
あれからいつものように夏緒里さんと幾度かメールのやりとりをした。
それで気づいたことがある。
なんとなくだが、何故か、夏緒里さんからのメールがよそよそしい気がするのだ。
僕は、何か嫌われるようなことをしただろうか・・・。
もしかして他に好きな人ができたとか?
いや、夏緒里さんはそんな人ではない。
そんなことを考えつつも、聞くことができずに一週間が過ぎた。
春休みといえども、大学図書館は平日21時まで開いている。
僕は、その日、朝から図書館にこもって次年度の予習をしていた。
来年度から病院実習も徐々に入ってくる。少しでも足手まといにならないようにしておかないと。
そうして、今日も閉館時間まで勉強した僕は、荷物をまとめるとそのまま図書館をあとにした。
「はぁ・・・夏緒里さん、今週末も会ってくれないのかなぁ・・・。朝の返信、まだきてない・・・」
駅に向かいながら、すっかり勉強モードから切り替わった僕は、溜め息混じりにそう呟いた。
夏緒里さんに初めて告白したイタリアンレストラン。
「懐かしい・・・」
その横を通り過ぎながら僕は、またひとり呟いた。
そして、駅前広場から駅に上がろうとした時、広場の隅に僕は、見慣れた人影を見つけた。
声をかけようと、歩み寄る僕。
「・・・え・・・?」
瞬間、僕は、目の前の光景に我が目を疑った。
信じられない光景、信じたくない光景。
僕は、一瞬頭が真っ白になり、動くことすらできなかった。




