38話:騎士団団長と賊の戦いですわよ!
爆ぜるデブリの閃光が、漆黒の宙域を断続的に照らし出す。
分断された戦場の一方、そこには二機のマキナが対峙していた。
セルディア自警団隊長、グレインが駆る『シュエル』と、ブラングの機体である。
『よお、隊長さんよぉ! 随分と余裕じゃねえか。横から湧いてきた連中に構ってなくていいのかよ!』
ブラングの嘲笑が通信回線を叩く。
彼の背後では、レタリアたちが謎の中型機二機と激しい砲火を交わしていたが、ブラングはそれらに目もくれなかった。彼自身、突如出現した二機の正体を知っているわけではない。だが、それらが自分を襲わず、目障りな自警団やレタリアに牙を剥いている以上、彼にとっては「都合の良い乱入者」に過ぎなかった。
(『ヤツ』の言葉通り、コイツの性能は良い、頭が痛えが思い通りに動く)
ブラングは頭痛を覚えながらも、この機体に確かな手ごたえを感じていた。
「そうだな、だから早々にケリをつけさせてもらう」
グレインの言葉と同時にシュエルが右腕に構えた試作型フォトンライフルを突き出した。
瞬間、ライフルの銃口から三連射の白い閃光が放たれた。正確無比な射撃。
それはブラングの機体を捉える。
しかし、その重厚な装甲を撃ち抜くには至らなかった。
「頑丈だな……、ヤツの機体はディエンには違いないが……堅すぎる」
先日レタリアが交戦した時と『同じ機種』であるエスカド社旧型軍用機『ディエン』、だがシルエットが異なっている。
修理強化が施されたか。
『効かねえなあ、隊長さんよ!』
ブラングはハンドキャノンとマシンガンを乱射しながら肉薄する。鉛の雨がシュエルを襲うが、グレインにその程度の攻撃は通じない。スラスターを繊細に吹かし、最小限の被弾で弾幕を潜り抜ける。
(反応速度が、レタリアのログにあった時よりもさらに増している……。これは奴の実力じゃない)
グレインは背筋を走る嫌な予感を振り払うように、フォトンライフルを連射した。何発かはブラング機の肩口や脚部に吸い込まれるが、ブラング機に単発の射撃では致命傷にならない。
「ならば、これでどうだ……!」
グレインは一瞬の隙を突き、あえてブラングのハンドキャノンの射線に飛び込んだ。
ブラングが勝ち誇ったように引き金を引くが、シュエルはシールドを僅かに傾け、弾丸を「受け流す」ことで衝撃を殺す。そのままの勢いで踏み込み、ライフルの照準をディエンの左胸、ジェネレーター付近の一点に固定した。
バーストモードによる三連続の点射。一発目が装甲を削り、二発目が亀裂を広げ、三発目が内部構造を焼き切る。
一点集中による貫通攻撃。
『何!?てめぇっ……!』
バランスを崩したブラング機に、グレインは追い打ちをかける。右手のライフルをマウントし、左腰のフォトンセイバーを抜剣した。
抜剣と同時に放たれた光の刃が、ブラング機の武装を次々と斬り飛ばしていく。マシンガンを構えた右腕が宙を舞い、ハンドキャノンが爆散した。グレインの一閃は振るわれる度にブラング機の戦闘力を奪っていった。
たったの数拍、その間にブラング機は完全に無力化された。
「終わりだ、投降するなら命までは奪わん」
グレインの勝利を確信した言葉。
『……ちくしょう!なんで勝てねぇ!』
その言葉とほぼ同時に、ブラング機の背部装甲が爆発的に分離した。
グレインが反応する間もなく、超小型の推進機を備えた脱出ポッドが、デブリの密集地帯へと弾丸のような速度で射出される。
『覚えてやがれ!俺はこんなところで終わりはしねえんだよ!』
デブリの隙間に消えていくブラングの捨て台詞が響いた。
「……逃げられたか」
グレインは追いかけようとしたが、部下やレタリア達の状況の方が優先される。彼は脱出ポッドの追跡を断念した。
「せめて機体だけでも回収できたのは収穫か……。あちらはどうなっている」
グレインはレタリア達のいる地点へと向かった。




