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101話:うふふ……こうしてお友達を自分の部屋に招くというのも、なかなか良いものですわね

「「えええええええーーーーーー!?」」


 ステシアとヘルタのひっくり返った驚きの声がきれいに重なり、真新しいリビングに木霊した。

 二人のあまりの音量に、ミレアはあーもう……と頭を抱えて深いため息をつく。


「お、驚きました……! まさかそんなご関係だったなんて!」


 目を丸くしてその感情を隠そうともしないステシアに対し、ヘルタは驚きで呆れかえったようにも見える表情で言った。


「ちょっと、まず最初にこの部屋の綺麗さと広さに驚こうと思ってたのに、全部吹っ飛んだわ……」


 二人の動揺ぶりを目の当たりにして、レタリアは気分を良くしたようにおーっほっほ、と高らかに笑う。


「ふふふ、驚くのは無理もありませんわ! ですが事実ですのよ。今のわたくしはレタリア・アーデニアムでもあり、レタリア・イチノセでもあり、レタリア・アーデニアム・イチノセでもありますわよ!」


 得意げに胸を張る彼女の横で、ミレアはもはや呆れて声も出せないといった様子で頭を振るばかりだ。


「イチノセ博士の本当の妹さんだったなんて、今まで全然知りませんでした……!」


 ステシアが素直すぎるリアクションで感嘆の声を上げると、すかさずヘルタがその隣からツッコミを入れた。


「バカ、違うわよステシア。そういう意味の姉妹じゃないでしょ」


「……え? どういうこと?」


 ステシアは本当に分かっていないようで、不思議そうに首をかしげてヘルタの顔を見る。見かねたミレアが、紅茶のカップを置いてそっと補足を加えた。


「えーとね、私が彼女を『戸籍上』の妹として管理局に登録したのよ。この子は……まあ、色々と複雑な事情があったからね」


「へぇー! そんな手続きが出来るんですね……。大企業の技術職ってすごいです」


 ステシアは感心したように何度も頷き、それから何かを思いついたように目を輝かせた。


「じゃあ、私もイチノセ博士の妹になれば、こういう良いお部屋に住めたり――」


「いたたたた! 冗談、冗談だってばヘルタ!」


 調子の良いことを言いかけたステシアの頬を、ヘルタが容赦なくぎゅっとつねり上げる。


「全く、ステシアは……。おめでたい頭をしてるわね」


 呆れ果てた様子のヘルタと、頬をさすって涙目になっているステシア。そんな二人の遠慮のない掛け合いを見て、レタリアは自然と笑みをこぼした。


「ふふ、あなた達も本当に仲が良いですわね。見ていてまるで、本当の姉妹みたいですわよ」


「えー、そうですかー?」

「そんな事無い!」


 レタリアの言葉に対し、嬉しそうに首をかしげるステシアと、即座にうへぇと言いそうな顔で否定するヘルタ。ここでも見事なまでに息の合った真逆のリアクションを取った。


「でも、本当にいいお部屋ですよねー。私の住んでる狭い安アパートより全然広いし綺麗だし……」


 ステシアは改めて部屋のあちこちをキョロキョロと見渡す。


「家賃も相当高そう。私の部屋が月900クレジットだから……ここは立地と設備を考えても、安くて2000クレジットくらいはしそうじゃない?」


 新居祝いの席でいきなり無粋なお金の話を始めたステシアに、ヘルタが「ちょっと!」と肘で小突いて窘める。


「あー……それなんだけどね」


 ミレアが少し決まずそうに髪をかき上げながら、口を開いた。


「ここは管理局が彼女の安全と身分を考慮して特別に用意した公務住居だから……レタリア個人が支払う家賃は無いのよ」


「えっ」


 ステシアが完全に動きを止めて固まった。


「う、羨ましすぎる~!! ずるいです博士、職権乱用です!」


 ソファの上で抗議するステシアに、ミレアは苦笑しながらも言葉を濁す。


「まあ……自警団でも、隊長職くらいにまで出世すれば、このレベルの居住区への入居資格が降りるはずだから……」


「ほら、聞いた? もっと頑張って出世しなさいよ、一応は副隊長候補のステシアさん?」


 ヘルタにここぞとばかりに嫌味を言われ、ステシアはぐぬぬぬ……と声を詰まらせて悔しがる。


「うう、実家暮らしで余裕のあるヘルタも卑怯だぞー!」


 賑やかに騒ぐ二人を見つめながら、レタリアは声を立てて笑った。


「うふふ……こうしてお友達を自分の部屋に招くというのも、なかなか良いものですわね」


 ふと、レタリアは手元の温かいハーブティーを見つめながら、かつての故郷のことを思い出す。

 あの大規模な公爵邸にいた頃の自分は、ずっと部屋に閉じこもっていた。同年代の友人を自室に招いて、こんな風に他愛のないお喋りで笑い合う未来なんて、想像すらできなかった。

 この遠い星の海に流されて、今の自分は決して独りじゃない。


 胸の中にじんわりと広がる温かさを噛みしめながら、レタリアは大切な仲間たちと共に、贅沢なフェターナのベリーケーキを美味しそうに口へと運ぶのだった。

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