第1話 出会い
私の名は赤羽静葉、鮮色区に住むいたって普通の15歳の少女である。
つい数日前までは騒がしいことを好まないまじめな勉強をする側のグループに属している少し押しに弱く口数の少ない女子普通の中学生として日常を過ごしていた。
そう、過ごしていた。過去形だ。
2017年7月10日に15歳の誕生日を迎えた私は、5月6日に誕生日を迎え速攻でダンジョン突入許可証明書の取得を申請し次の日から
冒険者としての活動を始めたすでに冒険者歴2か月の私の幼馴染(親友ではない。断じて)である橙木アゲハに押され、親が「アゲハちゃんがいるなら大丈夫よね」と許可を出したがために誕生日の翌日である7月11日からダンジョンに行くこととなった。
とんだ誕生日プレゼントである。だが、ここまではいい。
このご時世、1度もダンジョンに入ったことのない高校生のほうが少ないと聞くし、少し他人よりそれが早かっただけの話である。問題はこの後である。
7月11日の昼休み、あのアゲハとかいうKY女は、わざわざ私のクラスまで来て、堂々と、「静葉!今日はどのダンジョンに行く?」と尋ねやがったのだ。
いくらダンジョンが浸透してきたこのご時世であろうと、中学生で日常的にダンジョンに行く者など、ぎゃーぎゃー騒がしい馬鹿な男たちとギャルだけである。(偏見)
「なぁなぁ、今ダンジョンって言ったよな?」
馬鹿な男たちのリーダーである斎藤がアゲハに話しかけた。KYゆえに、相手の欲望にすら気付いていないようだ。
「うん、言ったよ?それがどうかした?」
「俺らもダンジョンよく行くんだぜ。今日行くなら一緒に行かね?鮮色駅の近くにG級あるしちょうどいいっしょ。」
関わらないでほしい
「うーん・・・G級かぁ。静葉は初めてのダンジョンなんだよねぇ」
その通りである。セオリー通りで行くのであればI級がふさわしい。
「俺らが守るからだいじょうぶだぜ。G級くらいよゆーだからな!」
冗談じゃない。命の危機がある行動なんかしたくない。
「んー、じゃぁ、いこっか!」
・・・まじで?
簡単に言えば、その面倒で馬鹿な男たちに誘われ、頭空っぽKY女が許可を出したため、一緒にダンジョンに行くことになってしまったのである。
アホ女は顔と体つきだけはいい(頭に行く分の栄養も体に行っているに違いない)ため、馬鹿な男どもは無駄に張り切り、いいところを見せようとしたのか、私がダンジョン未経験ということを考慮もせず、G級ダンジョンを踏破しに行くことになったのである。冗談じゃない。
ダンジョンの性質で一番下の級のダンジョンをクリアしなければそれ以降に挑めないという風になっていれば、と管理者を恨んだ。
本来、I級である程度レベルを上げ、H級で戦闘経験を積みG級に挑むのがセオリーである。
あれよあれよという間に、もう3層に入ってしまった
そもそも、私はすぐにダンジョンに行くことになるとは予想しておらず、いまだルーレットを回せていない。
当然レベルも1である。我ながら、押しに弱いとはいえ、どうにかならなかったものかと頭を抱えている。
ゴブリンがアゲハの手から出た炎により燃え尽きる
「アゲハちゃんつえー!かわいいのに強いとか最強じゃん!」
「えへへ。そぉ?もっと頑張っちゃうぞ!」
おだてられて調子に乗ったアゲハは後ろを振り返ることなく進んでいく。
「ちょっと・・・進むの早すぎる・・・」
静葉の呼吸が荒くなっている
ぜぇ、はぁ
・・・アゲハは2か月も冒険者をやっているから一緒にいれば大丈夫だろうと思っていた私が馬鹿だった。
馬鹿な男たちにおだてられて私の体力も考えず突き進んでいってしまった。
ステータスによる移動速度の差を考えていない。
私の声は聞こえなかったようだ。
うん。どうやら私は自分で思っていたより慌てていたようだ。
誰もいないのに経緯説明をするという現実逃避をしてしまう程度には。
身の安全のためルーレットを回したいところであるが、いつどこの壁からモンスターが出てくるかわからない以上、さすがにこの通路で回すという行為は危険すぎる。
せめて、もう少し広い場所があればモンスターの発生がわかり、逃走できるのだが・・・
おや?先に扉がある。
もしかしたらアゲハが私がいないことに気付いて待っていてくれるかもしれないし、いなかったとしてもルーレットを回す機会がありそ・・・!
しまった!ここはBOSS部屋じゃないか!入ったら倒すか外部から開けてもらわない限り出ることができない以上、一度出たアゲハが気付いてもどってくるかほかの人が入ってくるまで逃げ続けるしかない。
ここのBOSSであれば、ゴブリン数匹が基本、体育館ほどあるこの広場であれば・・・
体育館ほどある広場?BOSS部屋はBOSSによって固定では?ゴブリン数匹であれば教室の広さ程度しかないはずでは?では、なぜここはこんなに広い。
なんだ?急に痺れて
「あぐっ」
ドサッ
足がしびれて動かせない。倒れてしまった。
上にいるあれは蝶?
だんだん痺れが広がってくる。
この痺れがこのまま心臓まで来たら、私は死んでしまうのだろうか。
15歳で?まだ恋愛もしたことがないし、おいしいものをいっぱい食べたいし、楽しいことをもっとしたい。
ダンジョンだって、こんな形で、最初で最後になるのは嫌だ。
大人になったら一人で育ててくれたおかあさんに恩返しもしたい。
だれか、たすけて。
ガチャ
誰かが入って来た
「おや、先客がいたようですね。倒れている?このダンジョンで?まぁいい。そこのお嬢さん、この虫は仕留めて構いませんか?10秒以内に返答がなければ了承とみなします。」
誰でもいいから、たすけて。
「あ、うぅ」
声が出ない
「10秒経過、了承とみなしBOSSを討伐を開始する」
バサッという羽音が聞こえる。
きれいな、翠色の翼が、入ってきた人から生えている。
痺れが消えている?
シャインッという金属が擦れる音とともに、あの人は消え、ドサッという音とともに、さっきまで空を飛んでいたあの蝶が落ちてきた。
「体調は良くなったみたいですね。とどめ、刺します?先にいたのはあなたですし」
助けてくれた人が手をこちらに差し出しながら私に話しかけてきた。
早く立ち上がって返事とお礼をしなくちゃ。
「い、いえ!私は危うく死にかけたので、もらえません!それより、助けてくださりありがとうございました!」
「そうですか?では」
音すらなく、蝶は緑色の魔石と瓶に変わった。何をしたのか全く見えなかった。
「では、私はこれで。ダンジョンに挑む場合は準備が大切ですよ?B級までのダンジョンはどのBOSSが出る可能性があるのかすでに判明しているのですから」
恩人は立ち去ろうとしている。
「あの!私、赤羽静葉って言います!名前を教えていただけませんか!?」
「私の、ですか?」
静葉は顔を赤らめながら、恩人である美しい翠色の髪の男性に声をかける。
「はい!その、助けてくれた時の姿が、とってもかっこよくて、じゃなくて!そう、家訓で!受けた恩は必ず返さなきゃいけないので!」
当然そんな家訓は存在しない
「なので!恩返しをするために、名前を教えてください!だめなら、どこに行けば会えるのかだけでもいいので教えてください!お願いします!」
翠色の髪の男性は少し困った顔をしながら、
「うーむ・・・そうですね、この鮮色区は来年度からダンジョン特区になり、特殊な高校が設立されます。その高校にくれば、会えるかもしれませんよ?」
と言い、ダンジョンの出口である転移魔方陣に乗った。
静葉はしばらく顔を赤らめたまま「来年できる特殊な高校」とつぶやき続けていたが、BOSSが復活した場合、次助かる保証はないため、慌てて転移魔方陣に乗り、ダンジョンを後にした。
ダンジョンを出てすぐ、「出口にアゲハたちがいたら、からかわれてしまうかも?」と気付いたが、誰もいなかったため、その心配は無用であった。
静葉は誰もいなかったことにほっとしつつ、アゲハにどこにいるのか電話をすることにした。
つながったということは、ダンジョン外にいるようだ。
今どこにいるの?・・・家にいる?
私をダンジョンに置き去りにしたことには?・・・調子に乗っていて気付いてなかった?
静葉は、無言で電話を切り、家に帰り、自室のベッドの上でルーレットを回した。
「えっと、まずは個数だよね。」
「えいっ!」
【8】
「やった!次は各スキルの星数だったっけ?スキルの内容は星数のルーレットを回し終わったら、潜在意識から選ばれるんだったよね・・・あの人みたいに・・・」
【1】
「あっ・・・あとちょっと右だったら5だったのに・・・」
【3】
「んー・・・まぁまぁかな」
【2】
「うーん・・・なかなか狙った通りにならないなぁ・・・」
【5】
「やった!やっと当たった!
【4】
「むぅ・・・早すぎた・・・でも4だしいっか」
【1】
「あー!また1!」
【2】
「もぉ!なんでよ!最後くらい当てたいな・・・」
【5】
「やった!どんなスキルになったかな?ステータス開けばわかるんだったよね・・・」
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Name)Akabane Sizuha
Sex)♀
number)829847612848
Lv)5
Rank)1
Party)empty
Pro)G級3層
HP)15
MP)15
SP)15
Atk)9
Vit)7
Tec)15
M・Atk)27
M・Vit)1
M・Tec)27
Agi)13
Stm)1
ECL)8
Luck)68
Skill) ☆5魔力操作(M・Atk,M・Tec)
☆5飛行(Tec,Agi)
☆4風魔法Lv8(M・Atk,M・Tec)
☆3身体強化Lv6(Atk,Vit)
☆2火魔法Lv4(M・Atk,M・Tec)
☆2魔力視Lv4(M・Atk,M・Tec)
☆1抜刀術Lv2(Atk,Tec)
☆1翼展開Lv2(Tec,Agi)
【ランキング】
【マップ】
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「やった!翼が出た。えへへ・・・これで、あの人みたいに・・・」
翼展開と風魔法により生じた自分の緑色の翼をなでながらそうつぶやく静葉の髪と瞳は赤く染まっていた。
今回出てきたモンスター
ゴブリン
人型のモンスター道具を使う場合もあるが、基本的には弱い。
持っている道具や装備によって強さが変わる。
痺鱗蝶
上空を飛ぶ蝶型のモンスターであり、自己の領域に侵入してきた存在を鱗粉により麻痺させ、
死に至らせる。
麻痺は重なれば心臓すら止まるので、
同じランクのモンスターの中でも特に警戒が必要である。
F級上位
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