第二十三話 釈明
「それで、あれはどういった経緯だったんだ?」
「俺がアーテーの実力を確かめようと思って……」
模擬戦をして盛大に盛り上げまくった俺たちは、何をやっているんだと言う事でニーカさんからお呼び出しを食らった。
それで、俺が代表としてニーカさんに説明をしている。
別にスリやら殺人やらを犯したわけではないので、特に包み隠すことなく全てを話す。
どうやら賭け事も起きてはなかった(起きる前に終わった)ようだし。
「ふーむ。まあ、本部の設備を壊して訳でもないし、特に何かあるわけではないがあまり派手に模擬戦は行うべきではなかったし、力加減を少し考えるべきだったね」
冷ややかなお叱りだ。
最初からゼンに治してもらう予定だったので少し強めにやったのだが、運悪くニーカさんに止められてしまい俺は手加減のできない奴という不名誉をいただいてしまった。
ゼンを勝手に予定に組み込んでいたばっかりにこんなことになるとは。
策士策に溺れると言う奴だろう。
ゼンという策を講じたばかりに、こんな状況になってしまったのだから。
しかし、俺だってゼンにいるからと言って危険な程強くは叩いていない。
「大丈夫です!ほら、僕だってこうやって元気ですから。あまり隊長を悪く言わないでください」
こうして、新人はもう元気そうだ。
一時的な痛みで終わってくれたらしいが、少し不安なので後でゼンに細工をしておいてもらおう。
そんな思惑を浮かべていると、俺の隣に立っていた男が前に動く。
力強く、不満そうな顔をしている。まるで怒られている子供のような。
「それで!どうして俺が一緒に呼び出されているんですか、団長!!!」
その男とはガフィールである。
悲しいかな、模擬戦を一番楽しそうに見ていたのだが一番隊の隊長ともあろうものが危険な戦闘をなぜ止めないと怒られている。
どちらかと言えば、俺よりもガフィールの方が怒られている気すらする。
「さっきから何度も言っているだろう。立場を考えてお前はあそこで止めるべきなのだ」
「止めるべきって、あんなに面白い戦闘を止めるわけないじゃないですか!!!団長も見たら分かりますって、すごい見てて面白かったんですよ!!!」
ガフィールは持論を盛大に披露して、ニーカさんに反抗していた。
その様子からも心底納得できていないことが容易に分かる。
俺は戦闘狂ではないので、ガフィールの意見よりもニーカさんの意見の方が合っていると思うのだが、どうなのだろうか。
実際、俺の主観が混じっているだけでガフィールの方が正しいのではないかと、あまりに屈しない姿勢から俺は思い始めている。
もう洗脳だな。
何回も聞きすぎて、俺の思考が麻痺し始めている。
「はあ、言い合っていたらきりがないな。話を変えさせてもらうぞ」
「そんな、団長!俺はこの熱い気持ちを───」
「それでガフィール話だが」
無視である。
まあ、しょうがないね。だってこれ五回目だもん。
俺とニーカさんが会話をしている間に今までに四回もの割り込みがあった。
ニーカさんも少し苛ついている。机を叩く指の間隔が速くなっている。
「お前には二日後にアーテーと一緒に任務に行ってもらう」
「え!?コイツらと任務ですか!?」
「え!?任務ってなんですか?」
「え?アイン君?」
互いの疑問符が混ざり合ってもうひっちゃかめっちゃかだ。
誰も何も分かっていなければ、俺もよく分からない。
「えーとですね。模擬戦をまずということになりまして……」
「任務の話をせずにあれをやってたのか……」
「……すみません、少し体を動かし足りなくて」
ニーカさんが、はあ、と大きくため息をつく。
おそらく心の中でガフィールが増えた、とでも思っているのだろう。
違いますよ!
僕はあんな戦闘狂と一緒にしないでください!
「それでは俺が君たちに任務について解説しよう!」
「何事もなかったかのように始めますな!!!」
ボルダンうるさいぞ。
「二日後俺はお前たちとガフィールを連れて王都から西にある街に行く。そこでお前たちには情報収集の任務を与えたいと思っている」
「情報収集の任務ですか?それはまたなぜ?」
新人は不思議そうに俺に聞いてくる。
まあ、そうなるよな。突然街で情報収集をするなんて理由が知りたくなって当然だ。
「そこの貴族と打ち合わせがあってだな、そのときに何か良い品を持って行きたいのだが、彼は民に色々と感謝の品をもらっていると聞いたんだ。それで、民なら貴族様の好みが分かるのではないかと思ってな」
「なるほど!!!その貴族様を喜ばせるためですな!!!」
ボルダンが、一歩前に踏み出して大きな声でそう言った。
その顔からは人のために働くのかと、うれしさを感じていると思わせた。
実に良い援護だ。
ボルダンのおかげでみなの俺の行為の動機が相手を喜ばせるためだと思っただろう。
「ふーん、貴族様のためか」
ただ一人、ガフィール以外は。
何かあると思っているのだろう、それだけ言って静かにその場に立っている。
今この場でとやかく言うつもりはないらしいが、そのうち話す必要があるだろう。
黒い部分を感じ取っているのに何も言わないのだ。ある程度の理解があることがうかがえる。
「ああ、そういうわけで協力してもらいたい」
「分かりましたわ、協力してあげましょう」
「は、はい。隊長のためになれるように頑張ります」
姉妹が一人は気高く、もう一人は初めてのおつかいを頼まれた子供のように頷く。
新人も異論はないようで、静かに頷いていた。
というか、なぜリンカは上から目線なのだろうか。
拒否権は存在していなかったはずだが……。
「二日後の早朝にまずみんな俺の部屋に集まってくれ、最悪起きなくても俺が起こしてやるから安心しろ。腕の一本は残してやる」
ということで、俺は無事彼らに任務についての説明を終え、残すはその時が来るのを待つだけになった。
色々と根回しをしておく必要もあるし、貴族が暗殺なのか捕縛なのかはたまた証拠を集めるだけで良いのか分からないので、全てに対応できるように予定を組んでいかなくてはいけない。
時が来るのを待つと言っても事前準備は色々とあるのだ。
そんなこんなで、説明は終えた俺たちはいつの間にか終わっていたお叱りを思い出させないように手短に解散した。
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