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第四話 食い違い



「さすが王都ね。王がいるだけあってたくさんの人、そして物が集まっているわ」


 ゼンは、早々に何かを食べながらそう言う。

 少し目を離したらどこから買ってきたのか分からない食べ物を右手に持っていた。 別に俺のお金じゃないしいいか、という結論に至り特に何も言っていない。


 確かに、何も言ってはいない。

 王都だし、たくさんの食べ物があるし羽目を外したくもなるだろうと思い、敢えて優しさで何も言わないでおいたのだが。


「だからからと言って、お前はどれだけ買って来てんだよ!!!それ何個目だよ!」


「まだ十五個目よ」


 あーそうか、まだ十五個目だったのか。

 俺てっきりもう十数個は買って来てるのでは───


「へっ!?」


 失敬。

 驚きのあまり変な声が出てしまった。


「おい、俺が目にしたのはまだ八個ぐらいだぞ」


「誰がいつ、ここに戻ってくるまでに完食してないって言ったのよ」


 誰がいつ、そんなに買って良いって言ったんだよ。

 買いすぎだわ。


 何だよ、十五個って!

 確かに簡単に買えはする。観光的名所でもあるため多くの露店が建ち並び、たくさんのアクセサリーや食料は売っている。


しかし、簡単に買えはしても十五個も食べられるほど全て軽い食事というわけではない。

 意図的に軽いパンなどを選んでいたら別だが、今のところそんなにこだわって買って来ているようには見えなかった。


「はあ……。まあ、そのもらったお金で使える範囲なら好きなだけ買っておけ」


 母さんがこれだけ使えと言って渡したのだろう。

 だったら上限がその金額と言うことなので、俺も余計な口出しはしないでおこう。


 じゃあ何か俺も買おうかな。

 夕飯まではまだあるので、少し腹に入れておきたい。


 俺は、そう思いゼンに右手を出す。

 手のひらを上向きにして、要求するように右手をゼンに差し出した。


 その様子を見て、ゼンは首をかしげる。

 さすがに言葉が足りなかっただろうか。


「俺の分のお金頂戴」


 俺は、そう言って右手をグイッとゼンに近づける。

 朝起きておはようと言うように、当たり前に右手をゼンに近づける。


 しかしゼンは、それでも首をかしげたままだ。いささか察しが悪過ぎやしないか。

 わざわざ口にまで出して俺は要求したのだが。


「早くお金!銀貨ぐらいならくれただろ」


「はあ?何を言ってるの?もうほとんど残ってないわよ」


「残ってないのはお前のお金だろ、俺の分のお金を寄越せって言ってるんだよ」


 さっきから会話が進まない。

 まるでお金をもう持ってないようだ。


 ん?

 まるで持っていない、残ってない。誰の分が?


「お……おい。お前の持ってるお金、一体誰の分って言われて渡されたんだ?」


 自分で言いながら、俺の目の前の景色が白黒になっているのを感じる。世界から色という概念が消されていくのを感じる。意識すら消されそうだ。

 ゼンがゆっくりと口を開く。否、実際はそんなことないのだが、そう感じてしまう。


「え、アンタと私のぶ───」


 ゼンが言い終わるより先に、俺はゼンをぶん殴っていた。

 人間を軽く越えた身体能力をたたき出せる体で、俺はゼンの顔を拳で殴っていた。


 俺が自我を取り戻した頃には、もう俺はゼンを殴り終わっていた。

 一体俺がどういった意味でゼンを殴ったのか俺には思い出せない。が、きっとこの不抜けたコイツを許せないと思い殴ったのだろうと、今考えてみると思う。


 もしかしたら、ゼンを殴るのに理由なんてなかったのかもしれない。

 景色が白黒になった時点でその結果はもう決まっていて、奇跡と同じぐらいありえないが、その結果に則った結果だったのかもしれない。


 決まっていて、知り得ていて、理解できない物だったのかもしれない。

 と、今の俺はゼンを殴って思った。


 ああ、良い奴だったよ。

 ここまでともに暮らしてきて、とても楽しかった。毎日がバラ色で、常に美しかった。


 ありがとう。

 そして、さような───


「勝手に殺さないでくれるかしら?」


「なんだ、生きてたのか」


「なんで死んでる前提で話が進んでるのよ!!!」


「いや、感動の場面にしようと俺結構頑張ったんだけど」


 それっぽい言葉を並べて、長々と思い浮かべたんだが。

 努力の結晶だと思う。


「アンタの努力なんて聞いてないわよ」


「しかし、俺の分の金まで使って買ってたのか……」


 かなり買ってくるなとは思っていたが、まさか二人分の食費を消費していたとは思わなかった。

 ゼンもその辺の常識はあると思っていた。


「というか、二人分だと言って渡されたのに何で俺の分まで使ってるんだよ」


 誰がいつ俺の分まで使っていい言っていったんだよ。

 無許可で人の金を使うなんて。


 ゼンに常識を求めて俺が間違っていたのだろうか。

 所詮、ゼンは異世界転生した転生者のように常識がないのだろうか。


「だから、そう言った発言は、設定は壊すわ」


「それぐらい常識がないんだよ、読者にはかなり流行り物だし伝わりやすいんじゃないか?」


「読者への配慮でこの世界を破壊しないでもらえるかしら?」


 読者にとって難解な言葉使うよりも、今時の方が分かりやすいだろ。

 古文なんかで会話してみろ、誰も見なくなる。


「はいはい、そうね、その通りでござんした」


「適当だなぁ。まあ、それよりもお前のお金についての方が大切だよな」


「やっぱり話戻しましょうか」


「戻さねえよッ!!!」


 都合の良い奴だ。

 自分が危険な目に遭うと察知した瞬間、手の平を回すとは。


 でも、ここからゼンの消費したお金の話をしたところで、その金が返ってくるわけもなく、増えるわけでもないので終わりにしても良いかもな。

 ゼンにとやかく言ったって、どうせこれからもこんな奴だろうし。


「そうよ、だから諦めなさい」


「お前はそこでしゃべっちゃダメなんだよ。オチが見つからないだろ」


 本当にバカみたいにかたい誇りを持ち合わせた奴だ。

 どれだけ言われようとひびすら入らない。なんなら、反撃が来る場合だってある。


 どこまでかたいんだか。


「残りの金はもうお前の好きに使って良いよ。俺は夕食までがまんするからな」


 ここまで減ったお金を俺がもらっても困るので、結局全部ゼンにあげる事にした。

 ゼンなら、銅貨の一枚の残さずに使い切るだろう。


「分かった!!!じゃあね!!!」


 ゼンはそう言って、右手の物を平らげて疾風の如く走り去っていった。

 行動が早すぎる。もう反射と同じような神経の判断の仕方をしているのではないだろうか。


 あっという間に人混みで見えなくなったゼンを尻目に、俺はぶらぶらと店を見ながら市場を歩く。

 ご飯や雑貨、時には剣も見つけることができた。もちろん、質はゼンの作ったカタナよりも劣っているが。


 そんな事を考えながら、市場を歩く。

 特に意味もなく、まるで何かを探しているかのように。


「───ばれてないな?」


「はい、これでも日々鍛錬はしていますので」


 日が沈むとまた昇るように、さも当たり前のように俺の後ろに付いたその人物と俺は会話を始めるのだった。


 ここでお金の解説をします。王国を含め周辺国では貨幣が使われています


 銅貨・銀貨・金貨の三種類に大きく分けられていて、鉄は希少であるので使われていなかったりします

 価値の方ですが、銅貨百枚で銀貨一枚。銀貨十枚で金貨一枚になります


 銅貨五枚あればパンが三個ほど買えます。そして、クリークの街の税が銅貨二枚なのは街で商売をする人(店舗ごとに)に税をかけるのでそちらにある程度賄えるからだったりします


 以上、超絶簡単なお金の紹介でした~





 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう。

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