第四十六話 約束と別れと永遠を
家に帰った俺たちは、美味しい夕食をいただいて一日を終えた……。
なんてうまくいくことはなく、最初の鬼門。母親の承諾をいただくべく悪戦苦闘していた。
今回は、ゼンも連れていくのでいつもの私関係ないわ、は使えない。
ので、ゼンも渋々交渉の席に俺側として座ってくれている。彼女も騎士団に入れないと色々と問題がでてくるので援護をしてくれるだろう。
「母さん。俺騎士団に入る」
「そんな危ないところに子供を行かせたい親がいると思う?それに……」
「これはもう騎士団の人と決めたんだ。だから、母さんには黙って頷いてほしい」
外堀は埋めてあるので、もしここで母さんが頷いてくれないのなら俺は、勝手に家を出ることになる。
家に帰りにくくなるのは嫌だ。平和的解決で、この家を出て行きたい。
「うーむ……」
母さんは、そう言って黙ってしまう。
かなり悩んでいるようだ。我が子を戦地に送るようなものだ、親なら悩むだろう。
いつまでも悩んで、結論をしっかりと結論を出せずにあくまで君が言ったからという理由で送り出すのが最後だろう。
こういった場合、己を納得させるのではなく。納得させる理由を人は探すものだ。
俺が母さんを納得させる術は持ち合わせていない。
死なないようにするなんて子供の妄言のようなものは言えないし、母さんの気持ちが分かったよなんて言って今頃諦めることもできない。
俺は、ここから後退する事はできないのだ。
認めてもらって、初めて俺は前進できるようになっただけだ。
「分かったわ、その代わり─────」
☆☆☆
次の日、俺はナールの所に向かった。
ゼンは、面倒くさいとの事で家に置いてきた。別にわざわざ連れてくるほど仲が良かったわけではないの家にいることを許可した。
俺の決断を祝福しているのか、はたまた考え直せと訴えているのか分からないが。
燦々と輝く太陽が、俺を照らす。
じりじりとした暑さは体力を奪い、俺に動く気力という物を奪い去っていく。
ナールの家が視界の端に現れ始める。
ここから見ると空と地面の境界線にそびえ立つ一軒の家が少し非現実さを醸し出す。まるで、それに浮かんでいるようだ。
「おーーーい」
そんな家の前で、いつもと変わらずナールが手を振っていた。
さすがだよな。いつどんなときに来てもナールは家の前で立ってるんだから。
野生の勘のようなものが働いているのだろう。
俺にはできない芸当だな。ナールしか持っていない才能のようなものだ。
俺は、小走り程度の力加減でナールの所まで走る。
それでも少し離れている。疲労を少しでも感じている方が普通なのだが、俺の体は全くの疲れも感じていない。改めてこういった日常で俺の体の違いを感じる。
「今日は何の用できたんだい?」
ナールは純粋無垢な、汚れを知らぬ瞳で聞いてくる。
今後ずっと、ナールがこんな子で暮らしてくれると良いのだが。
と、感傷的になっているとナールが不思議そうな顔で俺の顔をじっと見てきた。
俺の顔の何か付いているのだろうか?
「なんか変わったね」
「え?変わった?」
「うん、なんだか今までとは違って……うーん、なんて言うのか……強くなった?うーん」
どうやら俺の事をうまく表せないらしい。
しかし、ナールに俺が変わったことが感覚的でも感じられるのか。
きっとこれもナールの気配察知の効果の一つだろう。
その人物がまとっている気配の違いの感じ取ったのだろう。しかし、ナールはその力を全て把握して使えているわけではないのでそこが少し残念だところだな。もし、全てを己の力として使えたら、とてもすごい力なんだが。
「ナール、今日は話があってきたんだ」
「え?なんで?何で急に?」
「たまには帰ってこようと思うが…………ここを離れるよ。少しの間だったけどありがとう」
「…………? え? あ、アインがいなくなったら誰が俺と一緒にいてくれるんだよ」
ナールは悲しそうな顔をして、俺にそう訴えかけてくる。
どうして自分から離れていくんだ、と。どうしてなの?と。
「すまない、ダルクとかはいるからアイツでも呼んで……すまない」
「ううん、俺も悪かったよ。変な事言って悪かったな。また会える日を楽しみにしてるよ!」
ナールは笑顔でそう言ってくれた。
今にも泣きそうな顔をして、頑張って笑顔を作ってそう言ってくれた。
涙をこらえるなんて、成長したな。
前まで、泣きたいときはすぐに泣いてしまう性格だったのに。
「ああ、また会える日を俺も楽しみにしてるよ」
俺たちは、力強く握手を交わす。
じりじりと照る太陽の下で、お互いの体温をしっかりと感じる程の堅く、あつい握手を。
これが、決別の前の別れの握手なのか、はたまたいつか会うことを約束した事を意味する握手なのか。
それは、次の俺とナールが会ったときに分かるだろう。そのときに、もう一度こんな握手が交わせたら良いな。
深い深い、深海よりも深い握手を交わして、俺はナールからすっと離れる。
そして、深々と頭を下げて何も言わすにきびすを返す。
静かに、静寂を保って、呼吸すら止めて。
俺はまっすぐ家に帰った。寄り道なんてできやしない。できるわけがない。
その日の月は、こちらを見ているように感じられた。
太陽ではなく、月は俺の事を真正面から堂々と俺を照らしているように感じてしまった。
「サクラダのつぶやき」
『今日はよく晴れてました』
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次話の投稿は10/16午前7時を予定しています。
それではまた次のお話で会いましょう。




