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第十九話 見つめる貴方の瞳の私

 俺のカタナとゴルグの剣がぶつかり、火花を散らす。

 やはり、一撃が重くまともに受け止めたら、腕が使い物にならなくなりそうだ。


 今も、ぶつかり合ったばっかりに腕が、ぴりぴりする。

 ゼンが作っただけ合ってカタナは刃こぼれしていないが、だからといって酷使するのもあれだ。できるだけ受け流さなくては。


「痛いな!こんな重い攻撃してくんじゃねよ」


「まだまだ序の口だぞ!お前はそんなに弱いのか!?」


 ゴルグは、そんな俺に挑発をする。

 こんな安い挑発に乗る気はないが、これは危険だ。


 当初に予定では、奇襲を仕掛けて戦闘に持ち込むはずだった。

 それは、いくら俺に愛刀があっても、ゴルグとの力量差は残っているからだ。力量差を考えてないほど、俺は熱血系の少年漫画系主人公じゃない。


 ゴルグから放たれる一撃一撃を、俺は受け流して対処していく。

 攻撃に出たいが、俺は防具を着ていないので一撃でも致命傷になる可能性がある。なので、捨て身の攻撃なんて簡単にできない。


 やろうと思ったらおそらく腕の一本ぐらいもらえるが、そのためには俺は腕の二本ほど奴に与えなくてはならない。

 しかも、戦っていて思ったがアイツはどうやら雑に剣術の知識を持っているらしく、動きがよく分からない。体勢も重心もよく分からないが、それを自己流として使い慣れているのだから厄介だ。


 ダルクが時間を稼いでいる間になんとかしたいが、状況が悪い。

 どうしてだが(なんとなく理由はわかる)ゼンが戦闘に参加しないので、戦況もあまり芳しくない。


 しかし、一撃ぐらい入れておかないと俺の気が済まない。

 そしたら、撤退して形勢を立て直そう。


「この程度で、俺が負けるか!!」


 姿勢を低くして、ゴルグの一撃を躱す。

 そして、左足を大きく前へだし、カタナを横にして構える。


 目標はゴルグの脇。

 いくらアイツが防具を着ていようと、脇や肘などの部分は鎧を着ることはできない。なので、一点を確実に狙うなら効果的かつ今後に影響を及ぼせるそういったところが最適だ。


 俺は、全力でゴルグの脇目掛けてカタナを突き立てる。

 カタナはゴルグの脇に命中する。カタナにゴルグの血がしたたっている。


「ッ!!!!」


 口には出していないが、ゴルグもかなり痛がっているようだ。

 撤退のチャンスだ。俺は、ポケットから煙り玉(ゼンお手製だ)を取り出す。


 それを全力で地面たたきつける。

 すると、名前の通り煙が上がり俺の姿をかき消す。


「なっ!どこに行く気だ!」


「じゃあな!すぐに戻ってくるから待ってろ」


 俺は、そう言ってゼンの手を掴みその場から離れる。

 少しゼンが嫌がったような気がしたが、気のせいだろうか。


 拠点のこのまま居るのは危険と判断して、俺たちは一時的に森まで戻ってくる。 

 ゴルグも追ってきていないようで、足音も特に聞こえない。


「おい、ゼン。どうしたんだよ」


 コイツは、先ほどの戦闘中ずっと傍観していた。

 指示を出すわけでもなく、周囲の警戒をするわけでもなくただそこに立っていた。


「ねえ、やっぱり答えて」


 ゼンは、俺の目を見てグイッと近づいてくる。

 その瞳には、決意の念が籠もっているように見た。


「アンタは私のことどう思ってるの?気になるわ」


 どう思ってるって言ったって、えらく抽象的すぎないか。

 なんて答えるのが正解なんだよ。


 俺は思案を巡らせる。

 正答を探して、必死に頭を回転させる。


 正解を探す、質問の正解をいくつも思いつき却下する。


 信頼している?認めている?大事に思っている?

 ん~……。


 もういっその事大好きだよとかか?

 いや、冗談だが……。


「…………き───だ……」


「え?なんて言ったの?ちゃんと言って」


 少し小声で言いすぎたようだ。

 やっぱり、大きな声で言うのは申し訳ない……。


「もう一回だけ、大きな声で答えてやる。その代わり文句言うなよ」


「……ええ、分かったわ」


 ゼンは、冷たい声でそう答えた。

 強く、はっきりと俺にそう言った。


 一瞬の油断の許さないかのように。

 俺の僅かな行動全てに反応できるかのように。


「俺は───お前が大っ嫌いだ!!!」


 俺は、声高らかにそう言い放った。

 ゼンの耳に、もしかしたらダルクにすら聞こえるかもしれない声で、俺はそう答える。


「は、はあ?」


 ゼンは、まるで鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。

 分かりやすく言うなら、驚愕だ。


 正答、真剣な答え。

 俺は、そんな答えにこだわりすぎていたのだ。


 俺とゼンだぞ。何を深く考え込んでいるんだ。

 真面目に答えた俺が馬鹿馬鹿しい。このぐらい敵対した方が俺たちらしいだろう。


 長年の相棒でもなければ、勝手に組まされた同じ部隊の奴でも、幼なじみでもない。

 つい最近知り合った、異質な少年と不気味な少女。


 大好きなわけもなければ、仲がいいわけもなく。

 ただ、不仲。異質と不気味が仲良くなれるわけないだろう。


「俺としては完璧な答えだと思っている。どうだ?」


 俺は、胸を張ってそう言った。

 あってるとも思わないが、間違っているとも思わない。


 正解でもなければ、不正解でもない。

 それが、俺の答えだ。


「最悪よ、真面目に質問した私がバカみたいだわ。まったく……そんなアンタが私も大っ嫌いよ」


 それは光栄だ。

 お互い大っ嫌いで何より、下手に情があるよりましだろう。


「あ~あ、大事なシーンのはずなのにアンタのせいでまたギャグパートに戻ったわ。本当に最悪なんですけど」


「で、まだ聞きたいことはあるか?今なら何でも答えられる気がするぞ」


 俺は、ゼンのそんな心からの叫びにヘラヘラと笑いながらまだ質問があるか聞く。

 もうここまで来たら、誰も真面目に話す気は無い。


 雰囲気からもうダメだ。

 ここから真面目な方向に切り返し方が分からない。


「いえ、今聞いたらろくな答えが返ってこなさそうだから嫌よ。またの機会にさせてもらうわ」


 と言って、ゼンは離れていった。

 今の俺でも信用できないらしい。


「そうか……なら、行くか?」


 大事な場面なのは分かっていたが、あまり時間をかけるわけにもいかない。

 ダルクの時間稼ぎにも限界はあるだろうし、何より先ほどの大声で場所がばれたと思う。


「え!?そうじゃない!急いで行くわよ!!!」


 ゼンは、そう言って走り出してしまう。

 俺もゼンに置いて行かれないように急いで走り出す。


 森林を走るのはやはり辛いぞ。

 それにゼンの方が先に走り出したので、なかなか追いつけなかった。


「アイン。これで仲直りよ。だから、もう撤退は許さないわ。絶対に」


 どうやら、自分のせいでけんかしていることは理解していたようだ。

 それに、気にもしていたらしい。可愛らしいところもあるもんだな。


「今回は撤退なんかしないよ。お前がいるからな」


「そうね。私がいるなら大丈夫よね」


 それをお前が言わなければ安心できるんだが。

 どうして自分で言ってしまうのか。


「行くぞ」


「ええ!」


 俺たちは、もう一度盗賊団の拠点のへと侵入する。

 今回は、奇襲なんて考えるだけ無駄なので、ただゴルグの所へと急ぐ。


「お、来たな少年。ん?なんか変わったか?」


「いいや、俺は変わってないよ。変わったのは俺たちだ」


 俺は、抜刀し剣先をゴルグに向ける。

 その行動には、自信が現れている。カタナを握る手に力が入る。


「ほお~。面白い。じゃあ、行こうかッ!!」


 ゴルグが、距離を詰めてくる。

 自身抜刀する前に、間合いを詰めてくる。前回と同じように近距離で鍔迫り合いに発展させる気だろう。


─────しかし、今回はそうはいかない。


「遅いわね。これならハエの方が速いんじゃい?」


 間合いを詰めるために直進してくるゴルグの前に、ゼンが突如として出現する。

 ゴルグは、そんな突然の出来事にも対応する。とっさに抜刀し、ゼンを斬ろうとする。


 その刃をゼンは、なんと片手で止める。手が斬れないように丁寧に、刃に触れないように止めてみせる。

 ゼンだからこそ可能な芸当だろうな。いくら剣が目で捉えれたとしてもあんなことはできないし、したいとも思わない。爽快感がほしいのだろう。


「……マジ……かよ」


 その光景に、ゴルグも口から思った事が溢れてしまう。

 さすがはゼンだな。


 その隙をつき、俺はゴルグに接近する。

 それに気づいたゴルグが、剣を俺の方へと向けようとするが、ゼンがそれを許さない。


「オラッ!!」


 俺は、カタナを振り上げ一気に振り下ろす。

 しかし、ゴルグはそれを左腕の籠手で受け止める。左腕は俺が脇を刺した方だ。

 なので、かなり無理をしているのだろう。それに、籠手も守り切れずかなり刃が腕に入り込んでいる。


「グッ───痛いな」


 この場で。静かにボソリとだけそう言ったのは、ボスとしての威厳のためだろう。

 ゴルグは、その後即座に剣から手を離し、後ろに下がる。


 左腕からは、血が滴っていて力も入っていなさそうだ。


「クソッ、こんなガキどもに後れをとるとはな」


「まだまだ行くぞ!」


 コイツに優しさなんかいらない。

 そんなものコイツにやる価値すらない。


 後ろに下がったゴルグに、俺は追い打ちをかける。

 そこで、俺はあることに気づく。ここまで戦闘しているのに見張りが来ない。


「今だ!矢を放て!!」


「チッ!」


 小屋の屋根に隠れていた見張りたちが、一斉に俺に向かって矢を放つ。

 完全に油断していった。だが、このぐらい平気だ。


 俺は、向かってきた矢を斬り伏せる。

 こんなものジュウの弾丸に比べれば遅すぎる。


「お前ら!抜刀して、接近戦に移れ」


 そんな見張りたちに、ゴルグはすぐさま次の指示を飛ばす。

 彼らは、かなりの訓練を受けているようで(実践での経験かもしれないが、別にどちらでもいい)即座にその指示に対応する。


「優秀な部下だな!」


 面倒くさい相手だ。

 しかし、有象無象が集まったところで俺たちの前には無駄だ。


「ゼン任せたぞ!」


 俺は、そう叫びゴルグに向かって走り始める。

 ゼンを信頼しての行動だ。


 ゴルグに向かって走る俺に、見張りの一人が刃を振るおうとする。

 しかし、その瞬間拠点を照らすかがり火が揺れ、次にはその男の頭と胴体は、別々になっていた。


「私の仕事を増やすんじゃないわよ!」


 ゼンは、文句を言いながら俺に近づく見張りたちを次々と斬り伏せる。

 その行動に、もう前のような迷いはなく確実に、そして可憐に斬り伏せていく。


 かなりの人数がいるが、ゼンの前では全てが一振りで終わる。

 あっという間に、見張りの数が減っていき、ゴルグの前に来る頃には一桁ほどの人数しかいなかった。


「おいおい、何だよお前ら。子供の強さじゃねえよ」


 ゴルグは、弱々しくそうつぶやく。

 その声には、生気のようなものがまったくと言っていいほど、存在していなかった。


 だが、意志は折れていなかった。


 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう。

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