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第十四話 カタナは暗し月は明るし

「ねえ、ダルクをなんで連れて行くの?」


 ゼンは、門から離れて早々に俺に質問する。

 少し前から、話す機会を探していたようでチラチラとこちらを見ていた。さっき大きく息を吐いたので、そこで決意が固まったのだろう。


「気になるのか?」


「ええ、決して彼を連れて行くな、とは言わないけど、なんでなのかな~って」


 ゼンにしては、少し優しいな。

 いつもなら、あんな弱いのいらなくない?ぐらい言いそうなのに。


 コイツも薄々感づいているのだろうか?

 だとしたら、いっその事言ってほしいのだが。


「言って良いの?」


 おっと、まだゼンの心情把握は有効化されていたらしい。

 いい加減に気をつけなくては。


「ああ、はっきりと言ってくれてかまわないよ」


「そう……なら、言わせてもらうわ」


 少しの間を挟み、ゼンの気配がいつも通りに戻る。

 いつもと違う気配に少し緊張していた。


 やはり、コイツに嘘をつき続け─────


「彼、強いでしょ」


「え?」


「え?」


 何の話──って、いけない。


「そうだ、その通りだ。よく分かったな」


「やっぱり!以前は少ししか会えなかったけど、さっき姿勢とかを見ているときに思ったのよ!隙が無い立ち方だって!」


 ゼンは、うれしそうにダルクについて語る。

 本人が居たら、恥ずかしくて穴に入ってしまいそうだ。


「そ、それよりお前……」


「ん?なに」


「俺とダルクの話って聞いてたか?かなりいい話をしていた気がするんだが……」


 結構大切な話をダルクとしていたのだが。

 まさかコイツ、嘘だよな。


「ああ、なんか話してたわね。聞いてなかったわ」


「う、うそ~」


 コイツが薄情な奴だという事は知っていたが、ここまでとは。

 興味がないと、まったく話さえ聞かない奴だっただろうか。


 以前から、薄情なというより冷酷な性格は露呈していたが、こんなにひどいとは俺も思っていなかった。

 もう少し、興味を持つということを知っておいて欲しいものだ。


 ゼンに要望するなんて無駄だろうが、いつか心優しい奴になれると信じてあげようじゃないか。

 俺ぐらい、彼女を信じてあげるべきだろう。


「何が、信じてあげるべきだろう、よ。何様だっつうの。それに、私は元から心優しいわ」


 ああ、やはり、頭の方もか。

 一体、俺はこの願いを誰にお願いすれば良いのだろうか。


「うるさいわ!アンタにお節介焼いてもらう必要なんかないわ!」


 なんてことを言ってゼンをからかっていると、家が見えてきた。


 ゼンが来てから、かなり楽しい日常を過ごさせてもらっている。

 今もこうして、文句を言いながら俺の手伝いをしてくれている。


 彼女のせいで招いた危険も、彼女のおかげで解決できているし、今回も彼女に頼る事になりそうだ。


 俺は、ゼンの方を向く。


「何?」


「ゼン、今から俺は頭の中で前世の愛刀を想像する」


「そ、そう。それがどうしたの?」


 ゼンは、何がしたいのかよく分からないというような表情をする。

 さすがのゼンでも、そこまで勘は良くないだった。


「お前の剣の錬成能力で俺のカタナを出してくれ」


「えっ!な、なんでアンタがそれの事を!?」


 なんでって……。

 あんなにわかりやすく、何もないところからナイフとか出されたら分かるだろ。


 というか、アーミングソードとか日常的に持ってるわけ無いだろ。


「私の完璧な偽装がばれていたというの!?」


 なぜ、あれでばれないと思ったのだろうか。

 なんだ、コイツはドジっ子キャラで売っていく気なのか?


 ゼンは、訳が分からないと言うような事をつぶやいているが、急ぎたいので話を進める。

 こんなところで時間を使う余裕はない。


「今から考えるから、よろしくな」


「えっ、ちょっと待ってよ」


 俺は、ゼンの静止を無視して目を閉じ、想像し始める。


 俺の剣は、異世界人が運んだ武器「カタナ」(皇国にもあるらしいが、目撃例は少ない)だ。

 漆黒より黒く、太陽よりも明るく輝く。そして、この世界の剣とは違い長い。


 まあ、グレートソードと比べるとあれだけど、刀身が長いのが特徴だ。

 それ以外にも、両刃ではなく片刃である。そのおかげで、斬撃を重視されており、俺には使いやすかった。


 そういった特徴がある武器だ。


 これだけの情報があれば、問題ないだろう。

 それにこのカタナは、俺の最後にも腰に差してあった。記憶をたどれば、すぐに見つかるだろう。ん?というか俺の記憶を読めば良いので、俺がカタナ想像する意味……。


 ゼンは、俺がカタナの情報を出した後も唸りながら、カタナを作ってくれた。

 なかなか満足のいく物ができなかったらしく、それは約10分にも及んだ。


 やはり、記憶からの創造というのは、難しいのだろうか。

 俺にはできないので、その難しさを理解する事はできない。


 ゼンならおそらく、作り上げられるだろう。


 そんことを考えていたら、俺の目の前が神々しく光る。

 俺は、まぶしさに耐えきれず目を閉じてしまう。


 そして、俺は目の前の光景に目を見開く。

 さっき閉じたはずのまぶたが、大きく開かれていった。


 そこには、しっかりと俺のカタナがあった。

 しっかりと鞘に収められており、刀身は見れないがそれは間違いなく、俺のカタナであった。


「ふ~、疲れたわ。感謝してよね」


「もちろんだ!ありがとう!」


 俺は、頭を下げる。

 これは、どれだけ感謝しても仕切れないだろう。ゼンが居たからそこできたことであり、ゼンなしでは入手は、ほとんど無理に近かっただろう。


 いくら、ゼンの事が大嫌いな俺でもここまでしてもらってお礼を言わないほど、畜生ではない。

 補足だが、俺のゼンは互いに嫌い同士だったりする。


「全くよ。どうして嫌いな相手にここまでしなくちゃいけないの」


「それは、お前が我が家の食事を気に入ったからだろう。お前はもう、外の食事じゃ満足できない体なんだよ」


「クッ、こんな奴に捕まるなんてほんと最悪だわ」


 どれだけ言ったところで、彼女はもう我が家の束縛(食事によるものだ)からは、逃げられないのだよ。

 だから、串焼きに俺の小遣いを使っている事は、目をつぶってやろう。最近の財布の軽さは、異常な気がするほどだ。


「それにしても」


 俺は、そう言ってゼンからカタナを貰う。


「ほんとそっくりだな」


 鞘からカタナを抜いてみても、全く一緒と言っても過言ではないだろう。

 見た目だけでも価値があるが、機能美ある造形と言えるだろう。


 どこからどう見ても俺のカタナである。

 さすがは、ゼン製造のカタナだ。


「ん?」


 ここで俺は、ある違和感を覚える。

 この子供の体に対して、カタナが軽く、かつ振りやすくなっていた。


「なんか、細工したのか?」


 言い方は悪いが、俺はゼンに率直に聞く。

 コイツに、変な気遣いなんていらないしな。


「ええ、重心をアナタ仕様にいじったのと、カタナの長さを少し……ね」


「それは、短くなったのか?それとも……」


 はあ、とゼンは一度ため息をつく。

 結構大事だと思うんだが。武器の感覚が変わるのは、かなり困る。


「今のアナタの腕だと前世より短いでしょ。だから、刀身とか全体的に長くしたわ。そのカタナなら、前世と同じ感覚で振っても問題ないはずよ」


 かなり至れり尽くせりだった。

 その辺の、改良も完璧か。さすが、安心と信頼のゼンだな。


「人を店の名前みたいに言わないでくれる!そんな事言うと、改良とかしてあげないわよ!」


 それは、困る。

 今後成長したときに、カタナを短くしてくれなくては感覚が変わってしまう。


 まあ、ゼンもきっと冗談で言っていると思うが、ここは一緒になってやるべきだろう。

 俺は、心の広い紳士だからな。


「そんな悲しい事言わないでくれよ。悪かったって」


「そ、そう!そう思うなら、私に今後とも感謝して美味しいご飯を寄越す事ね!」


 ゼンは、水を得た魚の如く要求する。

 かなりしょうも無いような気もするが、ゼンは都合の良い心情把握を持っているので、この辺の言葉は、自動ではじいているだろう。


 しかし、要求がご飯って……。

 まさか、俺がこの流れに乗ってくるとは思っておらず、戸惑った感じか。


 ゼンは、アドリブが聞かない奴のようだ。


「ねえ、反撃っていつ今日に決めたの?」


 ゼンは、唐突に話を変える。

 今度は、真面目は話のようだ。話の急転換に振り回されそうだ。


「ダルクと話しているときだよ。時間をかけるわけにはいかないし、襲撃の日に合わせるわけにはいかないからな。」


 襲撃の日に合わせていたら準備万端の盗賊と正面切って戦うことになってしまう。

 それはいくら何でも厳しいからな。前日に潰しておく。


「あっそ、まあ、目的が似てるのならかまわないけど。その約束のせいで、失敗とかしないでよ」


 さすがに、俺もそこまでお人好しではない。

 少し酷なことを言うが、あの子との約束を守るかは俺の裁量だ。場合のよっては、破る事もやぶさかでは無い。というか──。


「あら、可哀想な男の子」


 ゼンは、ニヤニヤを笑いながら俺に向かってそう言う。

 分かって言ってやがる。


「まあ、俺なら完璧にこなせるがな!そんな事考える必要なんて無い!」


「そうそう、それでこそアナタよ」


 今度は、やさしく微笑む。

 その笑顔には、まさしく全てを包み込むような聖母のような優しさがあった。


 急に俺が、ゼンにデレたように見えるが、別にそういった訳ではない。

 断じて、ゼンの笑顔に対してかわいいという感情を抱いたわけではない。


 と、言うわけ(どう言った訳かは、分からない)で。

 俺たちは、日がほとんど沈んでいたので急いで家に戻る。


 家に帰るのが遅れるという話をしていなかったので、母さんからお叱り──ではなく、心配された。

 予定より、五時間近く帰ってこなかったのでかなり心配させていたようだった。


 申し訳ない事をしたと、俺自身も反省している。

 ゼンは、ケロッとしていた。まあ、コイツだしな。


 そんな事がありながら、俺たちはいつも通り夕食を食べた。

 いつも通りの美味しい食事に、ゼンもとても幸せそうな顔をしていた。


 そうして、俺たちは部屋に戻り就寝する。

 夜に少しでも万全の状態で活動するためだ。


 俺もゼンも、夜の活動には制限はほとんど無いと思うのだが。

 俺は、体が子供のため念のために。ゼンは、寝たい気分だったから寝た。


 ゼンだけ、今後に関係ない気がするが、機嫌を損ねたら嫌なので寝かせている。

 機嫌を損ねたゼンと、一緒に戦うなんて自殺行為だ。気分で斬り殺されてしまう。


 そのぐらい、機嫌が本気で悪いゼンは危険だ。

 わかりやすく言うと……冬眠していない熊ぐらいだろうか?あいつらは、基本腹が減っているので、会ったら危険だ。


 そうして、俺たちが目覚めたとき。

 外は真っ暗で、空に丸い月が輝いていた。


 ここまで見ていただきありがとうございました。

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 それではまた次のお話で会いましょう。

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