1章 4
結局あたしたちは完全下校の鐘が鳴るまで残って作業をしていた。
これもいつもと同じだった。キャンバスを専用の棚に納め、イーゼルを部屋の隅に片付けた。
美術室にロックをし、そのカードキーを職員室に戻した。
美術室に先生達は顔を出さない。それがあたし達にとっては逆に居心地が良かった。
下手に顔を出されていたら、あの空間が遮られてしまう。それはあたしも零も望んでいなかった。
職員室にカードキーを戻すと、そのまま昇降口へと向かった。
外はもう夕暮れを通り越し夜の街になっていた。キラキラと街灯や、電気の灯りが灯っていた。
この高校は少し高台にあるため、学校から出たところで街を眺望出来る。
眠らない街。
その言葉がぴったりと当てはまるような、そんな街だった。電車は二十四時間運行しているし、コンビニはもちろんスーパーも機械が導入されて、二十四時間休業はなかった。
そんな機械に溢れている街に住んでいると、生きているってなんだろう、と思う。
呼吸をしていることが生きていることなのか、そういったことを考えることが生きていることなのか、よくわからなかった。
よくわからないことが多すぎて、時々電波に頭がやられてしまったんじゃないかと思う。
そんな時、零の声を聞くと心に凪いだ風が吹き抜ける。
「もう学校に入ってから半年も経つんだね」
「早いなー。じゃあ、あたしと零が出会ってからも半年なんだね」
零は黙って微笑んだ。秋の乾燥した冷たい空気が頬を撫でていった。




